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川を流れる花の名は  作者: 一条悠
22/22

兄上帰宅

徐家の次期当主は長兄ではなく、次男である。

煌煉国は基本的に長兄相続であるが、本人が辞退した場合下の者へと継がれる。

徐家の長兄は辞退した。

跡を継ぐには特に問題はないし本人にも大きな欠点はないが、家に縛られたくないと言って辞退した。

今は十数人の集団を率いて全国を回って地方へ行き、先帝の頃に禁止された身売りの取り締まりをしている。


今日はそんな兄が三年ぶりに帰ってくる。

花琳だけでなく妹や弟たちもここ数日落ち着かない様子で待っている。

兄弟の中で長兄だけは亡くなった前妻の子どもである。

異母兄であるが、そんなことは関係なく幼い頃からみんなの兄である。

花琳の兄弟は全部で五人。

兄上と花琳と妹(陽若)と弟(光宇)と五歳の妹(麗)がいる。

兄上が家を出る頃一番下の妹はまだまだ小さい幼子だったため兄上のことを覚えてないかもしれない。



書物を開くがいまいち気が進まずお茶をすすりながらのんびりしていると外から懐かしい声が聞こえてくる。

「兄上の声だわ!!」

花琳は急いで立ち上がり部屋を出て行く。

賑やかな集団の真ん中に立つ兄上の姿が目に入る。

屋敷を出た三年前とほとんど変わらない姿をしている。

久しぶりの兄上に抱きつこうとして思いとどまる。

兄上の横に見慣れぬ女の人が立っていた。

「おかえりなさいませ、兄上。」

ただいまと兄上が花琳の頭を撫でる。

「可愛さに磨きがかかりすぎてどこの娘かと思ったよ。」

陽若と弟(光宇)も遅れてやってきた。

「みんな元気にしてたかい?」

「兄上もお元気そうでなによりです。」

光宇は遠慮なく兄上に抱きつく。

こんなにも仲がいい異母兄弟は他にはいないと思うくらいに仲がいい。


そんなやりとりをしていると奥から母上と下の妹、麗が出てくる。やはり麗は兄上のことを覚えていないようで母上の後ろに隠れている。

異母であるにも関わらず実子と同じように育てた母上も帰りを喜んでいる。

「麗かい?すごく大きくなったね。」

兄上が母上の後ろに隠れる麗を抱き上げる。

麗はよくわからないまま抱かれて戸惑っている。

戸惑う姿も可愛い。

末っ子は何をしても可愛い。

幼い麗には兄上と言われてもよくわからないだろうが、きっと歳と共にわかるようになるのだろう。


父上も遅れながらもやってきた。

「父上、母上にご挨拶申し上げます。無事こうして屋敷に戻ってくることができました。」

両親が揃ったところで兄上は挨拶をした。

「よく帰った。よく休むといい。」

簡単なことしか言わないが、父上はいつも兄上からの文を待っていた。

今はどこにいるのか、無事なのかと心配していた。

文が届いても翌日には文が来ないのかと言っていた。

一番安堵しているのは父上だろう。


「父上、母上、お願いがございます。私は彼女を妻に迎えたく思います。」

他の者は皆それぞれに去って行ったが兄上の隣にいる女性はずっとそのままだった。

何かあるのだろうとは思っていたがまさかそういう関係だとは思わなかった。

きっと女の人は身なりからして平民だろう。

両親は許すのだろうか。

もし花琳が宣に嫁ぎたいと言っても同じように許可してくれるだろうか。

「話は奥で聞こう。」

そう言って父上、母上、兄上と女の人は奥へ行ってしまった。

父上の驚いていない反応を見る限り事前に文で伝えていたのかもしれない。


兄の付き人に後で部屋へ来るよう伝言を頼み、話が終わるのを部屋で待つことにした。

だが落ち着いて待てず、どんな話がされているのだろうかと気になってしまう。

様子を見に行こうとしては雨桐に止められ、聞き耳を立てに行こうとしても雨桐に止められる。

代わりにお茶出しついでに行ってきてと雨桐に頼んでも断られる。

「後で部屋へ来てくれるのですからそのときに全部聞けば良いんですよ。」

雨桐に言われずともそんなことはわかっているが待てない。

女性との婚約も気になるが、旅先の地方の話も聞きたいし、宣の話も聞いてほしい。


兄上は早くから次期当主を下りて自由にしていた。

幼かった花琳にはよくわからなかったが、貧民街や都の外へよく行っているようだった。

三年前兄上が屋敷を出る時、その理由が花琳には理解できなかった。なぜわざわざ屋敷を出て行かなければならないのか。地方のことはそこの領主に任せておけばいいのにと思っていた。

だが今なら少しわかる気がする。

貴族と平民では生活が全然違う。

貴族は宮廷での立ち位置や一族の繁栄が何よりも大事だ。

どこかの家が没落しようと関係ない。

残念なことに、平民のことをコマにしか思ってない貴族もいる。貴族の娘は政略結婚の道具にしか思ってない人もいる。

平民は日々の生活と家族が大事だ。

戦で家が潰れないか、男が徴兵で集められないか、明日も無事過ごせるか。

そんなことが毎日の悩みの種だ。

身の回りに平民がいるとしても、平民の目線に立たなければ見えないことは多くある。

兄上はきっと早くからそのことに気づいていたのだろう。

早く兄上から平民の暮らしについて聞きたい。

花琳の兄弟構成

兄上 21歳

花琳 16歳

陽若 14歳

光宇 14歳

麗 5歳


陽若と光宇は双子で、兄上だけ母が違います。

徐家の次期当主は光宇。

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