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川を流れる花の名は  作者: 一条悠
2/22

お出かけの前に

よろしくお願いします

花琳は16歳になり、そろそろ婚姻を考える年になった。

文武両道で長女として妹や弟の面倒もよく見ている。



母に話があるといわれ、母の部屋に足を運ぶ。

「花琳、あなたももう15。」

「いずれ皇子に嫁ぐんですよね。」

常日頃から口癖のように言われているので改めて聞くまでもない。

「ええ。そうよ。だけれど、その前に聞いておくわ。好いている殿方や、気になる方はいないの?」


意中の相手がいるならなるべく本人の希望の相手に嫁がせたいと思うのが母の本音である。


「そのような方はいません。今まで皇子妃になるために琴や舞、詩、学問など様々なことを極めて参りました。他の方など考えたこともないですよ。」

皇子に嫁ぐと幼い頃から言われてきて、まだ皇子に会ったこともないのにそれだけを夢見てやってきた。

母が思う以上に真面目でまっすぐな性格に育ち、普通とは違う意味でどこで育て方を間違えたのかと考える。


「わかったわ。なにかあればいつでも言いなさい。

それから、今度宮廷で皇后のお誕生日の祝賀会がありますからあなたも来なさい。」

わかりましたと言って花琳は退出する。



「お嬢様、初めての宮廷ですよ。精一杯おめかししなくてはなりませんね。」

宮廷と聞いて侍女の雨桐は嬉しそうにしている。

主をこれでもかというくらい着飾るのが楽しみなのだろう。

「そうね。皇子にも会えるし縁談の話も出るかもしれないから楽しみだわ!」

と言いつつも、実際は楽しさ半分不安半分といったところだろうか。


正真正銘箱入り娘の花琳は広くて不自由ないお屋敷に住んでいるためあまり外出しない。

遊んだり度々会うような友人もいない。

母上が主催するお茶会で人に会うことはあれど、宮廷での祝賀会とは規模が違う。

宮廷の祝賀会では、屋敷の宴とは比べ物にならないくらい多くの人が集まる。

また陛下と皇后もいらっしゃる。

大勢の前で失態を犯さないか不安である。


「お嬢様、お外へお散歩に行きませんか?」

幼い頃から隣にいれば僅かな表情の変化で心が読めるようになるのだろうか。

花琳の考えを見透かしたように雨桐が提案する。

「外は知らない人でいっぱいです。街でお買い物をしたりして色んな人に出会うことで大人数が集まる環境に少しは慣れるかもしれませんよ。」

ちょっとした買い物の時は雨桐にお使いを頼むし、衣や装飾品を買う時は商人を屋敷に呼ぶため花琳が店に買い物に行くことは滅多にない。

馬車で街中を通ることはあっても、降りて街をぶらぶら歩くことはない。

単純に興味が湧かなかった。

街を散歩するのはそんなに楽しいのだろうか。

誰かと街でお買い物をするのは楽しいと書物で読んだことはあるがよくわからなかった。

出かけない花琳に友達もいないためますます街へ行く機会はない。

だが、雨桐が言うことにも一理あるかもしれない。


書物で聞いたお買い物を体験するついでに街にも行ってみることにした。

「わかったわ。母上に伝えてきてちょうだい。」

「はい。では、奥様に外出する旨を伝えて参りますのでお部屋にてお待ちください。」



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