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川を流れる花の名は  作者: 一条悠
14/22

追憶

1話の凧あげの続き

屋敷に戻った花琳は部屋に飾ってある凧を眺めていた。

雨桐も部屋に来て横で一緒に凧を見る。

「お嬢様はその凧を大事になさってますよね。どなたか大事な方からもらったのですか?」

「わからない。」

凧は大事だが、くれた人が大事かどうかはわからない。



凧は七歳の頃、屋敷に遊びに来ていた青年がくれた。

家族以外から何かをもらったのは初めてで花琳はとても嬉しかった。

再び凧が欲しくて父上に客人が来ていないか様子を見るのが日課になった。


「花琳、今日は大事なお客様が来ているから絶対に父上のところへ行ってはだめよ。いい?前みたいに行ってはだめだからね。」

ある日母上にしっかりクギを刺されたにも関わらず、花琳は父上の部屋へ向かった。

凧をくれた青年にあった日も父上の部屋へ行くなと言われた。ならば、今日は来ているかもしれない。

陽若に呼び止められたが上手いこと交わして父上の部屋へ行く。

茂みに隠れて様子を伺っていると外から話し声が聞こえてきた。

父上と父上と同じ年頃の男性と青年が入ってきた。

(凧くれた人!)

花琳は茂みから出て挨拶に行った。

「父上〜」

「花琳、また何をしておるか!」

(やばい。父上お怒りだわ。)

軽い気持ちで笑ってくれるかと思ったらどうやらそうではないらしい。

「父上、私はお礼を申し上げにきました。凧をいただきありがとうございました。」

花琳は青年にお辞儀をした。

どうやら父上は凧をもらったことを知らなかったようだ。青年が父上に説明してくれた。

「花琳、凧が好きか?」

もう1人の男性が聞いた。

「はい。いただいた凧は素敵な図柄でした。」

「そうか。ならばまた持ってこよう。睿、花琳と遊んでやりなさい。」

「はい、父上。」

青年は睿という名で、一緒にいる男性が父のようだ。

あまり容貌は似ていない。きっと睿という青年は母親似なのだろう。


その日花琳は睿と絵を描いて遊んだ。

睿は絵が上手だ。一方で花琳は絵が苦手だ。

どんなに練習しても一生上手に描ける気がしない。

「睿兄上はなぜそんなに絵が上手なのですか?」

「花琳、絵は見たまま書くのではない。全身で物を感じ取り心で描くんだ。そうすれば描けるよ。」

全身で感じ取るとはなんだろうか。

見た物以外にどう描くというのだろうか。

心で描くと言われても描くのは筆を持つ手だ。

言ってる意味がよくわからない。


別の日徐家に来た時は二人で川に出かけた。

川が流れる様子や風に揺れる周りの木々を空気と共に全身で感じ取ることで絵が上手になるらしい。

こんなことで絵が上手になるのかよくわからないが、馬に乗ったり川で遊んだりして楽しかった。


雨の日は徐家で書物を読んだ。

睿兄上は物知りで書物に載ってないような難しいことも教えてくれる。普段屋敷で先生が勉強を教えてくれるがイマイチ覚えられないし楽しくないしよくわからない。

だが睿兄上が教えてくれると楽しい。本当に同じ内容なのかと思うくらいどんどん覚えられる。

睿兄上は商いに関心があるようだ。難しくて花琳にはよくわからないが、新しい物が溢れる商いが楽しいらしい。

商いに必要な計算や帳簿の見方も教わった。使うことがないだろうが、知っていれば将来得するらしい。


また別の日は外で武術を習った。

屋敷でも剣術や弓術を習っているためある程度はできるが、睿兄上の腕前を見るとまだまだだと痛感する。


祭りの日は父上と叔父上と睿兄上と4人で祭りに行った。

海では初めて花火を見た。夜なのに外が明るくて、空に大きな花が咲いていた。


花琳は睿兄上が大好きだった。海や川へ行ったり、馬に乗ったり、書物を読んだり、絵を描いたり、色んな事をして色んな事を教わった。


父上の部屋にいれば睿兄上が遊びに来るかもしれないと思い部屋に入り浸るようになった。

いつも遊ぶこの部屋なら睿兄上がいつも隣にいる気が来て勉学に励める。そんな気がした。

そんな日々を過ごしているうちに花琳はそろそろ10歳になる頃になった。

10歳が何かよくわからないが少し大人になれる気がした。

「睿兄上、結婚とはなんですか。」

「結婚は死ぬまで一緒にいるという誓いのことだ。」

「そしたら睿兄上は花琳と結婚してくれますか?」

「花琳、結婚は好きな人とするんだ。」

「私は睿兄上とずっと一緒にいたいです。」

「私も花琳が好きだよ。」

そう言って睿兄上は花琳を抱きしめた。


「花琳、10歳の誕生日には素敵な簪を送ろう。」



睿兄上はまた遊びに来ると言ったきり屋敷に来なくなった。

10歳になっても簪は届かず、ある日突然睿兄上は都から姿を消した。

父上に頼んで文を出したが返事は来なかった。

花琳は海や川へ遊び行くこともなくなり、あまり屋敷から出かけなくなった。

睿兄上にとって花琳はなんだったのだろうか。

わからない。



沈む花琳を見るに見兼ねて父上は10歳になったからと花琳に新しい侍女をつけた。

そしてやってきたのが雨桐である。



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