表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマジナリー・ビジネス  作者: 中山恵一
7/16

Vol 7. 歴史上の人物


2018年、公海上に浮かぶ豪華客船の住人となって

どこの国の国民でも無くなっていた元マフィアボス

子供に組織を任せて隠居しているが影響力はある

偉大なる影の黒幕ともいえる億万長者が

医者から余命宣告をされた


財力に任せて延命治療をしても

人生の残り時間が少ない事を知らされた御老人の心に

今まで過ごしてきた人生での出来事が浮かぶ


数年前まで自分が最高責任者だった

マフィア組織が小さかった頃から

変国首都の政治家による裏仕事依頼を請け負ってきた会社で


数年前に部下へと依頼した自分の言葉が浮かぶ



「若くて免疫力が高い若年労働者には影響が無いが


 血管病とか高血圧とか糖尿病とか長年の不規則な生活とか

 過酷な重労働や長時間拘束で血管がボロボロな高齢者とか

 血管年齢が高い働けなくなった高齢労働者が


 このウイルスに感染すると

 死に至るくらいの劇症肺炎となって

 亡くなる可能性は高く


 実験的に反政府運動の盛んな国のためにならない

 非国民が多い地域で実験をしてみた所

 パーセンテージにして70%の死亡率だった


 少子高齢化による老人福祉で国の金が無くなっては困る

 国全体のために働けない労働者を削減する事が必要だ


 君達にはウイルスのワクチンを接種した上で

 非国民労働者削減ウイルスを注入した動物や虫を

 各都市へ解きはなってきてもらう


 そうすれば年金や高齢者医療などのコストがかかるだけで

 働けなくなった高齢労働者


 いや、我が変国に必要無い不要な国民を


 削減しての人口調整を、このウイルスによって実行する

 我等の職務は重要なものなのだ」



「変国首都から産業交流労働者という事で外国に赴き


 我々の職務遂行だけのために変国公務員として生きる

 母国にいる上司の指示だけに従って

 情報操作工作や扇動情報流布をして生きてきた君にとっては


 簡単な雑務のような仕事なのだが


 この生きるウイルス兵器となったネズミや虫や鳥を

 我が変国と敵対する国へと持ち込んで欲しい」




”自分が消えて無くなる。いなくなるのか


 だが非国民として不要となった奴等のように

 必要無い人間として排除されるワケでは無い”



 想えば目立つのが嫌で

 目立たないように金になる仕事を消化する人生だったが


 永遠に歴史に残るような

 同じ時代に生きた大勢の人間の心に残るような

 目立つ事をやってみたくなってくるのが不思議だ



 だが、やってきた事は国の都合による強制調整活動


 全て墓場まで持っていかなければならない


 色々と知りすぎた目立ちたがり屋な元関係者や

 強制調整活動を国のために実行してきたが

 よけいな事を語りそうになった人間を


 ”いなかった存在”として闇に葬ってきたのだから


 目立つような真似は出来ない



・・・・



 まず、元マフィアボスは

 自分の孫が理事長をやっている大学


 その産学連携事業として運営されているプロジェクト


 大学が調査研究開発をして

 学術論文を発表して学会で名誉を得るのと同時に

 その学術論文を商用技術として知的所有権、特許を取得して

 製品として連携した企業に販売してもらうという

 プロジェクトで開発された


 人工知能や仮想現実の関連工学をつぎ込んだ

 会員制ソーシャル・ゲームのようなバーチャル・タウン


 そのタウン内で自分の元マフィアボスとして

 バーチャル闇組織を運営する人生を組み込んだゲームを製作させた


 1年後、自分の人生が全て組み込まれ

 時代背景や、国の設定などはファンタジー異世界となった

 ゲームが完成して販売された


 人気が出たのは、バーチャル闇組織を運営する

 格好いいボスとして生きる自分を投影したゲームキャラクターではなく


 生きている間、ずっと敵対し抗争を繰り広げたライバル組織のボスキャラ


 一般市民の脅威となる人間を取り締まる正義の軍人警察官キャラ


 孫が運営する大学では、金の卵を産むプロジェクトを抱える

 研究室として事業を継続する事になったが


 自分の人生が、生き方が人々の善意や良心に訴えかけて

 熱狂的に賛美されて人気が出るような人生では無かった事を

 思い知らされるだけだったので元ボスは支援活動から撤退した



・・・・



 しかし隠居し世捨て人のような生活を開始してから数年

 今の世の中で、目立って誰の心にも残るような事?


 それは? なんだ?


 いや、この2000年代の歴史として

 語り継がれる誰かが実行しないとならない事とは?


 歴史が、あの人間が、やった事は

 必要だったと判定してくれるような事とは”



ワケのわからない言葉が渦を巻いたかのように

元ボスの心に湧き上がる


”全世界の歴史教科書に残るような人間になりたい”


一言で言えば、そんな願望だ



あの世に財産を持っていけるワケじゃない


”偉大なる億万長者財団”とかいう

特定の活動をする人々を支援する財団を立ち上げ

自分の死後、全ての財産を財団へと寄付する


という遺言を残せば・・・


と最初に思いつくが、それだと特定の活動をする人々の

活動履歴に自分の名前を付与した財団が記録されるだけで


世界史に自分の名前を残すという願望は叶えられない



そして金に物を言わせて人材を探し出した

自分の名前を世界史に残すという仕事をしてくれる人間を



・・・



その男は偉大なる億万長者の元ボスの目前に現れた



「一番簡単なのは絶対的な悪役になればいいんですが

 それでもいいですか?」



「どんな悪役じゃ?」



「戦争を起こして大量殺りくをして

 民間人殺害の世界記録を作る悪役ですね


 核戦争を起こすと人類が滅亡して

 世界史を語り継ぐ人間自体が滅ぶので駄目ですけど


 そうならない程度の大量殺戮兵器を利用して

 武力制圧で世界征服を狙う悪の秘密結社を結成して

 いくつかの国を取り込めば、歴史に残りますよ


 ただ、戦争犯罪人になって国際手配されますけどね」



「それだと実行犯として戦争を仕掛けた国と

 その指導者の名前だけが歴史に残るんじゃないのか?」



「そうですよ。表の世界史じゃなくて、裏の世界史では

 永遠に語り継がれるって存在までです

 でも、そんなもんですよ、そこまでです


 今から、どこかの国の政治家になって

 国民を全て兵隊にして


 自分と一緒に自殺行為な負ける戦争を

 戦わせられるワケじゃないでしょう?」



・・・・




月本時間の9月30日 午後9時、

ギリス時間の9月30日午後1時



金融各社の投資判断サーバーが2020年上期の

時価会計で会社の資産状況を確認するために

為替決済処理、有価証券損益の確定処理をする時間に


金融各社が共有している同業者団体ネット

に仕込まれた時限爆弾のようなボンバーアプリが起動、


それら数個のアプリは一見、普通の業務アプリに見えた


だが、それらの内のひとつは公開情報と関係者外秘を

区別するサブシステム内の部品プログラムに見えるが

関係者と、それ以外を区別する部分が

9月末日処理になると誤動作をして

考えの浅い人間がデタラメに区別するような

バグが仕込んであった



当然、個人情報保護や、守秘義務契約などは

全て無視するような事になり情報が漏洩する


国、国営企業などにとって不都合な真実が・・


その漏洩した各種情報を元に

ある額以上の不動産債権や株式や債券を

所有する証券口座にある資産を所有する

保守支配層を限定


その証券口座などの資産を全部現金化

ランダムに自動的に世界各地のボランティア団体に寄付


色んな努力をして築いた財産や会社を保有する

先進国で会社経営をして従業員を雇っていたり

地主として住民統治などをしていた保守支配層などの

資産家を破滅させた


そしてネット上に噂を流す


「匿名の資産家、ボランティア団体へ匿名寄付

 現代の足長おじさん」


自分の虚栄心のために誰も何も言い出せず

社会的に殺されたのも同じ状態になって破綻

大勢の人間がリストラされて失業者が増えた



同時に労働者階級の人々が所有する銀行口座の

ネット決済部分を悪用した無差別不正引き出し

無差別攻撃ウイルスも起動


労働者が長年働いてコツコツ貯めていた金が

銀行間の企業間通信のシステムバグを利用して

セキュリティの甘い仮想通貨を経由して消えた


ネット犯罪を防ぐはずだった警察は

全く原因や犯人を特定できず

盗まれた金の転送先すら発見できず


テレビなどで大々的にネット犯罪が報道されたが

犯人については何も報道されず

銀行のネット犯罪防止セキュリティが甘かったせいだ

という世論が流れて、


全ては銀行の責任だという事になり、

無くなった預金の全額を銀行負担で保障

資金力の無い数社の銀行が破綻した




金融システムの放置されたシステムバグが攻撃され

パニック状態になってから数週間後


そのパニックで破産しかけた資産家一族が

最初にパニックを発生させた先進国の

航空会社の自動操縦ソフトを遠隔操作した


金融会社の投資判断サーバーが設置されている

各地のデータセンターや、各国政府の重要施設に

航空燃料を満載したミサイルとして

航空機を突っ込ませて破壊した


各国の主要報道施設も同時に攻撃されたので

テレビ、新聞などからも現状が報道されなくなり

主要な国の政府高官も消されてしまったので

全世界が大混乱の無政府状態になった。


無政府状態になって数ヶ月が経過した頃、


もし完成したら人類滅亡という

感染力が強く殺傷力も強いキメラ・ウイルスを

完成させて管理しているウイルス研究センターの

ウイルス管理システムがハッキングされ


開発中の一番、感染力も殺傷力も強いウイルスが

在籍している研究員や、その家族経由で全世界に広がった


その感染力、殺傷能力が凄まじく街からは人間が全て消えた



余命2年と宣告された元ボスの願いは叶った

自分が昔は存在していただけの人間となって

この世から消えてしまうのと一緒に

全ての人間が自分と一緒に消えて欲しいという願いが



・・・・・



「やれやれ 間に合いましたね」


「そうだな、でも悪趣味な夢だった」


「最初、権力と金に物を言わせて

 余命数年で死ぬ自分と一緒に全人類を滅ぼしたい

 とか言い出した時は、どうしようかなと思いましたけど


 望み通りの幻影を見ながら一生を終えられて

 幸せだったんじゃないですかね」


「しかし、大変だったなー


 脳波を読んだり発言記録とかの入力で

 本人が望む物語を予想する推測用AI


 あたかも本当に実体験しているかのようなVR」



「そうですね。でも、人生最期の望みが・・・


 ”こんな世界、滅んでしまえばいい”


 だったなんて、ある意味、哀しい人生ですね。」



「まあ、そうだな、俺らは人生の終わりが遠い未来だし


 人類全体を、どうこうしようとか


 国全体を、どうこうしようとか


 考えた事すら無いから理解できないけれど


 どうこうできるほどの権力を手に入れた人間は

 ある意味、何かが狂ってなきゃ権力を維持出来ないし


 権力は、あの世に持っていけないからな

 自分の死で権力を失う時に

 自分の一族が、自分の国が、どうなるかとか

 気になるんだろうな


 未来を生きる人々にも影響を与えたいとか


 どういう人生だったかによって

 人生最期の望みは違うもんなんだろうよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ