vol 1 群集心理(みんな)の獣性(にんげんせい)と悪意(きもち)
2019年3月、山本は有名な損害保険会社に入社したが、
入社後の新人研修で優秀ではないと判定され
9月25日、講習を受けるために指示された会議室へ
そこでは研修責任者が待っていて説明を始めた。
「君達は会社に残っても人間扱いされません 何故か?
人様の金を預かる我々にとって無能な事は悪だからです
”悪者”つまり無能な悪人と判定した人間を
我社は、どう扱っているか?
利益を出すために主要業務を担当する有能な人間以外に
雑務などをこなす単純作業労働者も抱えています
彼らは誰にでも出来るような雑務を担当し
社内格付けで下位職種担当として雇用され
それらの人々に用意された制度で働く事になります
物価や人件費が安い外国に低コストで単純作業労働者を抱え
日本国内では単純作業事業所を廃止する事が可能になった時
それらの単純作業労働者は国内では必要なくなります
なので当然、単純作業労働者で満足していた
向上心の無い人間は会社から淘汰されていきます
我が社の月本国内事業所で働きたければ、
レベルの高い労働者でなければ働き続ける事は不可能
有能と判定され続けるために
自分をレベルアップできなければなりません
皆さんは残念ながら有能と判定されませんでした
研修期間が終了した後、皆さんには
仮採用から本採用になるに当たって選択する事ができます
・関係子会社の正社員として契約。
・自己都合退職としてゼロから やり直す。
・害悪と判定されたのに単純作業労働者待遇で会社に残る。
三番目の選択をする人が多いと思うので、
その選択をした人が、どんな日常を送るのかの
記録映像を見てもらいます。
それを見て会社は無能な人間に残酷な事を理解した上でも
第三の選択をしたい人は選択しても構いません。」
プロジェクターがセットされて映像が映し出される
誰もいない個室にいる男が画面に映る
同僚も上司も誰もいない小さな部屋
誰もいないだけではなく電話も無く業務用PC端末すらも無い
そして冷ややかな感じのナレーションが流れる
「彼は入社最初の研修で、会社に残っても
”実験用サル待遇”だと通告されたが
親戚、元同級生、などに会社で落ちこぼれた事を言うのが嫌で
単純作業労働者待遇で会社に残る選択をした
有名大企業の社員になったと喜んでいた両親が落胆する顔や
同じ学校の後輩や同業他社に入社した同級生など内輪の噂
面子、見栄など色んな感情に囚われ、この選択をした。
そして3年、中高生の新入生が卒業するくらい年月が流れた
朝9時から夕方5時まで座敷牢のような部屋
昼食で社員食堂へ行く事はできない。いや行けない。
何故なら待遇の書かれた社員証を付けているのだから
侮蔑のささやきや蔑みの眼によって
差別される側なのを思い知らされるだけだからだ。
正午になるとコンビニ弁当を食べ
静かに目立たないように時間が過ぎるのを待つ
そして夕方、社宅へ帰る。
同じ待遇になった社宅の人々との会話は無い。
男女でも馬鹿で不細工同志は近親憎悪で互いを敬遠するという
まさに、その法則が当てはまっていた
社外の知人や親戚からしたら有名大企業の独身寮と
部外者立ち入り禁止な部署を往復していると言い張り
”会社と仕事のための社会人”として生きている
そう言い聞かせて生きる日々
暗く静まりかえる独身寮の一室で色んな事を思い知らされる。
今更、やり直す事すら、できない。心に浮かぶのは一言
”何故、あの時、第三の選択をしてしまったのだろう”」
夢も希望もなく過ごす独身寮と誰もいない座敷牢のような部屋で
毎日、一人で過ごす情景から、突然、場面は変わる。
「この差別される側の人々を利用する偉い人がいる」
そのナレーションと同時に、実験用サル待遇の人々を
モニタで見ている管理職が映り一言つぶやく。
「人間扱いされないと、人間は壊れていく。
人間扱いされるくらいの能力があって良かった・・・」
たくさんの部下に指示をする合間に業務用PCモニタで
”実験用サル生中継”というボタンを押して見る管理職
そして、別の管理職が電話をかけている場面へ
「実験用サルの中で一番、体力だけはありそうなのを
鬱憤晴らしに言葉の暴力で殴るサンドバック用に
一人、回してもらえますかぁ。
忙しくて不満が溜まっているからガス抜きが必要でね」
その電話シーン後、大男が大勢の従業員がいる前で
過激な罵詈雑言で延々と罵倒されるシーンが映る
大男の心が折れて崩壊し泣き崩れるまで罵倒は続き
臨席の同僚が冷笑を浮かべながら一言つぶやく。
「無能な人間に会社が優しいワケねえだろ。
やめた方が人生が幸せじゃね?」
・・・・・
結局、山本は子会社の社員になる選択をした
「子会社の社員となる事になった君達の処遇を説明します
伝統ある我社の神京本社採用という採用形態では
職務把握能力や職務遂行能力が低いすぎるので
不採用だったワケですが
マジカ太平洋事業部が抱える海外子会社に所属する
社員になる事となりました
担当職務範囲を能力別に狭めた年棒制契約で
担当職務が遂行できなかった時点で契約解除される
麦国企業などが実施している契約社員制度に基づいた
雇用契約となります
会社がやれと言った事を出来れば
年棒が増額となり在籍し続けられますが
直前半年、前年の業績が悪ければ年棒は下がります
職務遂行能力が職務遂行必須レベルに到達していない
と判断された場合は契約解除となります
会社に適応できない常態で、会社に在籍しても
会社にとって不幸ですし皆さんにとっても不幸な事です
頑張ってビジネス交渉術という物を身につければ
ひょっとしたら数年後には毎年10月に
麦国企業年度始時に多国籍グローバル企業が集う
麦国西海岸での大規模商談会会場や、
パーティーに参加できるかもしれません
ですが海外企業交渉研修中に外国語で交渉会話を話していて
気づいた人もいるかもしれませんが
同じようなレベルの同じくらいの年齢の
同じような交渉人が数人来ていたら、
交渉人のレベルの違いが判定できなかったら
格上に見える方に任せてみようかなと思うのが人間です。
そして格上に判定された勝者が熱狂的に讃えられ、
格下に判定された負け犬は激しく罵倒を浴びる
麦国が中心になった自由競争社会では当たり前です
当然、同期入社の人間との競争で負け犬になったままの人間が
このグローバル大企業の本社へ行けるわけがありません
皆さんには、より一層のレベルアップを期待します。
以上で説明を終わります。」
2019年9月26日の朝、子会社に所属する契約書にサイン
10月1日、鄭国首都ブルース行き飛行機チケットが渡された。
チケットが渡される時に、また少しだけ説明。
「指示した通り、全員パスポートは用意してありますよね。
皆さんが所属する事になった会社は
20年前のマジカ金融危機で経営危機に陥り麦国企業に買収
10年前にカメリアで発生した不動産債権投資破綻による
大規模金融危機で経営状態が壊滅状態になり
我社が資本参加して救済する事になった鄭国大企業です。
今は我社の海外現地子会社内の鄭国支社ですが・・
そこに所属して貰う事になりました皆さんは、
10月1日から 一切、月本語は話さないようにして下さい
現地の鄭国語は話せないでしょうから無理だとして、
社内公用語は世界的に公用語とされているギリス語です
ジンガポールではセクハラ発言やセクハラ行為をしたら
警察に通報され逮捕、裁判沙汰になるのが当たり前ですが
それと同じくらいセクハラは、即 裁判沙汰になります
高額な罰金を払わされたり投獄され社会的に抹殺されますので
仕事に専念して異性とは関わらない方が身のためです
部署に配属されたら理解できると思いますが、
特に御年輩の鄭国人らしき人物がいたら
月本語の名前も名乗らないで下さい。
現地名を用意するので、その名前で仕事して下さい
鄭国系カメリア人という設定で連絡報告をして貰います
後は全て現地に行ってから、どんな仕事なのかとか
実際に自分で行って体験して仕事をしながら理解して下さい
月本訛りのギリス語を話すと不都合が生じる場合があります
昔、月本で差別される経験をしてから鄭国へ帰国した鄭国人で
地元の同業者団体に所属する事になった関係者がいる席で
そういった月本訛りのギリス語を話した場合、
相手が差別された苦しみを思い出し
”同じ苦しみを味あわせてやる”という感情を抱えて
トラブルに発展する事が以前あったので気をつけて下さい
日常会話の月本訛りギリス語を整理した資料があるので
午前中は、その資料を読んで訛りを直す事に専念して下さい
どうしても直せそうにない人は話さないようにするために
メールで連絡だけにするように交渉して下さい」
・・・
説明していた人々が昼休みに雑談
「10月1日の朝、何人ぐらいが空港まで来れると思う?」
「え? 全員、来るんじゃないですか?」
「いや、御家柄のいいボンボン御嬢様とかもいるだろ
その御両親に配属先を今夜、報告するとしてさ
本人は鄭国で頑張りたいと言っても何を言うだろうな?
同族会社でマジカ地域に事業展開している一族のボンボンとか
社会勉強で入社試験受けたんじゃないかって感じだろ
それとか結婚相手探しにでも来たのかなって感じの御嬢様とか
明日とかに有無を言わさず親が退職願いを持ってきて
同族会社に無理やり連れ戻されるんじゃないかなー たぶん」
「あー そうですねー 何人か居ましたもんね。
有名大企業に就職できたから、親族からは自立するんだと
張り切っている感じの イイとこの 坊ちゃん嬢ちゃん」
「毎年、一番問題のある地域に行かせようとすると
どうなるかの実験モルモットって言っても
ここまで最悪な事態になった地域に行かせようってのも
人道的にどうなんだろうなって感じがするけど
しばらく こちらから連絡する以外は連絡しないでくれとか
ごまかせて鄭国の空港まで行けたとしても
同期入社の月本人で集団行動するのは鄭国到着までで
鄭国国内にある現地採用の中に放り込まれて
共通語は一応はギリス語って事になってるけど
色んな所のスラングやら訛りやらが混ざっていて
独特な言語で何を言っているかが理解できないだろうしな
もし言語能力だけは少しはあって直訳して理解できても
どういう思惑で言っているかを読み取れないだろうから
仕事として成立するほどのものじゃないだろうしなぁ
月元への反感が大爆発している地域ばっかみたいだから
月本語を話そうものなら悪意に満ちた眼で見られたり
何か日用品を買おうとしたらボッタクられたりするらしい
どうなるんだろうな 他人事だけどさぁ はははは」
「まあ、あんな所へ行かされる待遇じゃなくて良かったですよ」
「でも 民衆暴動デモや クーデターが
数年おきに発生する危険地帯に行かされた
数年前の新人君たちよりはマシなんじゃないの?
一応は先進国って事になってる国だから」
「でも 地域によっては危険地帯も あるよね?」
「運悪く危険地帯に配属されたら、どうなるかなー
辞表を出した方が人生を平和に過ごせるだろうになぁ
怪しいオッサンとか その手先の女がいそうな
ブサや首都ブルースの歓楽街とかに遊びに行かないで
仕事だけしてれば問題ないんだろうけど」
「その昔、軍事政権時代、陸軍出身の大佐派が
マフィア化してなくて大統領私設自警団だった頃から
繁華街を支配して、警察とも癒着していたらしいから
陸軍出身と海軍出身に政党が分裂して
交代に大統領を輩出すんのはいいけど
大統領が変わるたびに野党落ちした側のマフィアを弾圧して
報復が報復を、復讐が復讐を、憎しみが憎しみを招いて
弾圧する側とされる側が入れ替わるだけの抗争の繰り返し
鄭国へ行って、交渉仕事をしていた人が言ってたけど
今、闇で暗躍してるのは野党落ちした元海軍マフィアらしい
前政権の大統領が元海軍トップの娘で親と同じように
”元海軍大統領私設自警団”と関わっていたから」
「今の大統領って検察出身ですよね闇組織と関わらないでしょ?」
「マフィアは酒とか観光地娯楽を扱う企業舎弟を抱えていてな
今の大統領になってから一番売上を伸ばしたのは鄭国産ビール
その次が鄭国国内観光地。原因は大統領の発言。
これだけでも理解できんだろ?
マフィア資金源を最高権力者が確保するのが当たり前なんだよ
独裁政権とかの国じゃ良くある話だけど
一応は先進国になってる国で現存するのは異常って言えば異常
とはいえ、大統領の在任中は絶対的な権力があるから
客観的に見るとマフィアに見えても、
公共事業に関する職務を担当する大統領の関係会社
って事で存在し続けるんだろ」
「でも、絶対的な権力の反動で退任して権力が無くなった時
それまでの権力者が犯罪者にされたり自殺に追い込まれたり
そんな事態が繰り返されるって事なんですよねー」
「鄭国なんて行った事もないし仕事で世間話を聞くだけだから
本当の所は知らないけど どこでも権力争いは あるからな」
・・・
10月1日、朝6時に会社から支給されたスマホが鳴る
こんな朝早くに何事だよと見てみると業務連絡メール
メール差出人は麦国西海岸にあるマジカ地域統括事業本部名義
情報開示している共有情報メールらしきものが送られてくる
それに眼を通しながら空港まで出かけていく
鄭国の空港に到着すると現地の人々が待ち受けていて
配属される部署別に行き先を振り分けられ
ブサだかという港町にある部署に行くように指示される。
ブサに向かう鄭国国内線の飛行機や列車を乗り継ぐ。
意外に到着時間は早く、到着した午後には配属先事業所に到着
到着初日のテレビ電話会議、麦国西海岸では9月30日の夜
退社する前らしき東マジカ統括担当管理職がスピーチ
俺が御前等のボスなんだからな言う事を聞けよって感じの
麦国西海岸訛りギリス語がBGMのようにに流れた後、締め言葉
「昔、私が東マジカで資金運用業務をしていた時の事だ
現地採用社員に我々としては少額な金額の運用を任せた
市場環境要因が悪化しての下がり始めた時に高く買わされ
底値低迷中、”意地と面子と自分の正しさ主張”でホールド
騰がりはじめにイーブンのプラマイ・ゼロで決済売り
営業が集金してきた保険料を我慢するためだけに使用した
そこで取扱い金額を10分の1にして、
本当に大した事のないプレッシャーの無い取引金額にしてみた
不思議な事に時間と金の無駄遣いをやめてくれた
東マジカ地域の人々には例外なく、こういった傾向がある。
この10月から新しく配属になった君達に
そういう東マジカ地域住人の群集心理による発想に
囚われている自覚は無いだろうから
我々が留意点をまとめた資料を読んで理解して
どうすれば勝ち組企業となれるかを考えて欲しい」
続いてブサ事業所の偉い人の挨拶
「君達は、はっきり言って使い捨ての兵隊です
戦場に復帰不可能だと判定した時点で除隊して貰います
先ほど説明のあった資料は、麦国東海岸の伝統ある大企業に
西海岸の新興企業が勝利を収めた成功体験を元にしています
我社が競争を生き抜くのに必要な人材となるには何が必要か?
同業他社と競争で絞り込む要素は何であるべきなのか?
なども並行して書いてありますが
資料を読んで考えるだけではなく業務を担当してもらう中で
実際に発生する出来事の方が色々と教えてくれると思います
資料は過去の記録で、未来の予言書ではないので
書かれている事が絶対では ありません。
では何も知らない人間が、経験による先入観を一切持たないで
業務に就いた方が仕事が効率良い。というワケでは無いので
業界慣習、業界礼儀、業務用語とかを勉強してもらいます
中途採用の同業他社から移って来られた方々にも
我社内での常識を再度勉強してもらいます。
来年3月度末までの業績査定で社内格付けが上がるか、
最低業績未達成と判定されて解雇となるかが決まります
我が部署は、人口350万人ほどのブサ地域で活動する
他地域の事業所に比べると小さな事業所ですが
大きな事業所にして社内格付けを高いレベルへと引き上げ
”凄いなあ あの事業所にいたんですか”と
他部署の方々に羨まれるような部署にするために
日々、努力しましょう」
・・・
台風が接近している影響で雨が降っている。
熱帯気候の島でスコールが吹き荒れるような光景
朝、会社に来る途中に見かける道路、地下鉄
外国語の文字が並んでいるのを除けば神京と違いは無いのだ
と言いきかせるような思い付きが心にわく
どこの場所で仕事するのも違いは無い。
会社がやれと言った事をやって有能と判定されれば、
もっと仕事が任される。その逆ならクビになる。それだけだ。
というような内容の言葉が何故か月本語で考えているのか、
月本で誰かが言っていた言葉を思い出しているのか頭をよぎる
ギリス語で考えて話すように頭の中がなっていないのだ。
仕事に関係無い月本語が ひっきりなしに心に湧いてくる
仕方ない。今まで月本語で考えて月本語で話してきたのだから
ギリス語で考えてギリス語で話すようにしなければと
考えてはいても、月本語の雑念が振り払えない。
始めてのブサでの週末金曜日、
月本国内と同じように週末に何をして遊ぶとか
飲み会とかの世間話でもするのかと思っていたが違っていた。
午後3時に今週限りで人件費カットのために解雇される人間に
契約解除メールが送信され、私物をまとめて社外へ出ていく
来週も残れる事が決まった人間は安堵の表情を浮かべているが
いつものように職務に必要な会話だけが響く
夕方になると週末に誰の家でのホームパーティーに
誰が行くかの話が少しずつ始まる
国内出稼ぎで平日だけブサにいる職人さんとかが
金曜午前中まででブサ郊外の地方都市に帰る事とか
金曜の午前中までに作業項目的には区切りをつけているのは
こういうワケだったのかと納得
ココでの直属の上司に午後3時過ぎに話しかけられ
現地駐在員の社宅 兼 ホームパーティーに行く事になっていて
関係者に紹介するから、どんな態度で何を話すつもりかを
午後4時半までにメールに書いて送ってこいと言われた。
挨拶としては、こういう文言を言って自己紹介を少しだけして
後は相手の言っている事を聞いていようと考えています
というような内容のメールを送ると定型文がメール転送され
今夜、会うのは以下の人々なので全員にレスをつけて
メール送信してくれと指示されて、言われた通りに送信
夜、会場に到着してからは直属の上司の後ろに
黙ってついていって参加者会話の聞き役になった
ホームパーティーは、ゲストルームで仮眠をとったりしている内
延長戦に次ぐ延長戦で、日曜、カメリア野球プレーオフが
映っている時間になっても終わらなかった。
しばらく滞在する社宅もパーティー会場と同じ敷地内にあるので
金曜夜、土曜夜と荷物置き場状態の自分の部屋と言われた所に
眠りに戻った以外は、ほとんどの時間そこにいて
日曜午前中までは内輪のポーカー会場になっていた。
・・・
月曜朝に出社すると、先週金曜末の麦国西海岸時間の夕方まで
仕事をしていた人々と、ポーストラリア時間の月曜朝に
仕事をしていた人々のメールでメールボックスが埋まっていた
本当に自分の担当業務に関係あるのが全く理解できない
とりあえず 発信元別にメールを分けて、
同じ時間に同じ仕事をしている人々のメールを見る
「他地域部署のメールが混ざっているのは何故ですか?」
頭に湧いた疑問を直属の上司に聞いてみる
”俺は投資案件に関する打ち合わせで忙しい、
手取り足取り指導なんてしないから自分で調べて考えろ”
そう最初に宣言してくれた通りに、そっけなく答える
「自分の担当職務に関係無いから一切見たくない?
そう言いたいのか? なら それで いいんじゃないのか
市場環境要因とか人的操作要因の関連性なんか、どうでもいい
私が職務に必要だと絞り込んだ要因だけが有効と勝手に判断
それで仕事をしようとすると、どうなるか思い知ればいい?
というか 俺は有能で忙しいから 御前みたいな暇なのが
毎朝、メール内から本当に必要な事だけを取り出して
まとめて整理しておいて欲しいくらいなんだけれども
何が必要で何が共有情報かすら理解できないみたいだから
今の所、無理なんだだよな? それは自覚してるのか?
試しに 職務に必要な情報だと思うのだけ抜き出して
毎日10時までに転送してみてくれ。」
そう言い放ち職務のために出かけていった。
メール内の市場環境要因とか人的操作要因とかの用語の意味も
漠然としか理解できない。麦国金融用語を月本語に無理やりして
何が、どういった意味なのか理解しにくい用語すらある
商習慣っていう名目で常識化しているのかとかも見えていない
でも、この椅子に座った人間に仕事として回ってくるのは
誰も取り組みたがらない同業他社との泥試合だけが続く仕事で
どうせ同じ仕事をしている人間と表向きは作り笑顔で繕って
裏で憎み合って蹴落とし合う毎日を過ごす事だから
メールの意味なんか理解しなくて大丈夫という事は理解できた。
鄭国時間の火曜朝、麦国西海岸時間の月曜午後
毎週定例の週初めテレビ電話会議
画面に麦国西海岸にいる管理職が映し出され
こっちの会議室にいる管理職が司会者のような感じで
報告やら業務連絡やら部署間相談事項などが語られ
会議前に参加する全員へと事前配布された資料を見ながら
淡々とした感じで議事が進んでいく。
その日、モニタの向こう側の管理職が、
あまり仕事優先順位とかを理解していないと感じたのか
関わっている客に関する質疑応答を混ざる事にしたらしい。
細かい事にまで文句が多くて対処に時間がかかるわりに
金にならない客に時間と労力をかけるのは無駄だが
一応は客なので、どう対応するべきなのか?
それとは逆に、
金になる展開が見込まれ優先する客への対応は?
この二点についての質疑応答
そんな事はノウハウデータベースに登録されているから
今更、口頭で語るような事ではないと言う人から
暑っ苦しく情熱的に、一番有効なのは、このやり方だ
と強く自分の意見を主張するのまで
各地の管理職の意見が出ては消えていく。
一応は参加して聞いてはいるものの実際の所
名前が出てくる会社について何を知っているわけでもなく
理解できるのは文句だけ多くて無料サービスでやれと言う
時間をかけるのが無駄な経費節減策をとる会社への悪口スラング
”刺激の強い悪口は万国共通言語なのかもしれないなあ”
などと くだらない事を思いつく内に会議終了
そして一週間が過ぎて先週と同じように
鄭国時間 土曜朝10時、カメリア西海岸の本社時間が
金曜夕方5時になるまで酒好きオヤジが集まって
鬱憤晴らし話をしながらの飲み会、そしてポーカー
テレビでは麦国野球プレーオフ、カメリアン・リーグ優勝決定戦
航空宇宙業界、その業界からスピンアウトした民需会社
会社、従業員の両方とも差別化が激しく競争も過酷
その保守的な南部にあるビューストンに昔はいた
ビューストン・カストロズのアンチが多く
対戦相手のニューアーク・パンケーキスが勝つことを
期待する人々が集まって熱狂的にリアクション
南部ビューストンで激しい人種差別を実体験した
数人のカメリア国籍らしき人々のヘイト感情は激しく、
凄い勢いで ”くたばれカストロズ”ってな感じの言葉を叫ぶ。
リーグチャンピオンが決定する頃には
ポーカーを続行できるほどに金が残っている人は少なくなり
勝ち残った人と、”勝ち逃げされてたまるか”
と顔に書いてあるような損をしている数人とが
濁ったような空気を熟成させていた。
・・・
翌週の月曜、確認作業を現地協力会社の親方に任せて、
”検討会”だかという会議に一応参加しろと指示された
去年までの前例投資案件で、何が問題かの検討が延々と続く
呪文のような報告や、その報告への指摘やらが繰り返される内に
居眠りしてしまい上司に起こされ、凄い顔で睨まれる
作業項目単位の細かい所は下々の者どもで対処しろ
という話しになったのかと思ったら
信用問題に発展しそうな前例があったらしく。
その前例で去年まで偉かった人を蹴落とせたらしい管理職が
大声で前任者の事を非難し対応策としての決定事項が大事だ
というような自画自賛の俺様演説が開始
そんな感じのが繰り返されクドクドと語られた後
来年2月15日の新規投資案件についてと、
新規投資額と同額の投資資金を既存投資案件の
どこから、どう回収するかの検討
といった検討項目が開始。
偉い人は、誰もが抱えている投資案件を縮小したくないらしい。
”全体の投資資金回収率を下げているのは
お前の抱えている未来の無い投資案件のせいだ
今すぐ完全撤収して投資資金を引き上げろ”
といった感じの、不毛な言い合いが延々と続く。
結局は、偉い社内政治家といった感じの大先生と取り巻きの
最大派閥グループが多数決で撤収する投資資金回収案件が決定
それなら、最初からダラダラと議論しないで
最初から多数決をとればいいでしょ?とも思えたが、
それを聞いたら一応は検討して報告書作成する商習慣なので
それは前例通りに検討されるのが当たり前らしい。
・・・
11月2日、土曜日、来週からの作業準備をする人々が
会社に来るので、その立ち合い
「御依頼の通りに この ”ガン・ジェイン外交”には
販売現場の責任者でもある優秀なセールスの皆様が
顧客に販売しやすいデータをデータベース部分に設定
文書管理部分には、去年から今年にかけて
鄭国国内で流行しているマネーゲームの資料と
今の所、そのマネーゲームで生き残っているらしき
業者の名簿や主要投資手口などが格納されていて
その人的操作要因をデータベース部分に取り込んであります
来年まで主要人的操作要因が変わらない前提で設定してます。
調査員の方による報告で、毎週・毎月の調整作業は
御依頼の項目を随時入力できるようにしてあります。
また ”ガン・ジェイン運用”には、御依頼の通り
基本的に鄭国の年金運用機関が、年金生活者に
平均40万鄭国ウォン(約400麦ドル)の年金を
毎月支給している現状と同じ手口を設定しました
ですのでデータベースには手口開始トリガーとなる
市場環境要因などが設定されています
文書管理部分には年金保険料の集金額についての各種資料
鄭国年金運用機関の過去30年の渡る年金運用実績概要、
大きく年金原資を減らした巨額損失発生事件について資料と
損失リカバリー作業についての資料が格納され
損害発生事象が再発しそうな市場環境要因を検知した場合
鄭国国民性などを考えて最低限必要なロスカット処理と
責任問題訴訟準備についてアラームメールが自動送付され
それらの資料がメールに添付されるようになっています
巨額損失が懸念される事象が発生しなければいいのですが
何年かに一度は発生するものなので設定してあります。
・・・・(中略)・・・・
では今まで依頼された経緯と初期設定の経緯を確認の上
設置確認済書類にサインを頂けた事ですし我々は引き揚げます
WEBアプリや常駐監視サーバーなどとの連携作業要員として
この者を常駐させますので、何か疑問などがある場合には
この者に何でも聞いてください。」
開発コード名が ”ガン・ジェイン外交”とか
”ガン・ジェイン運用”とか呼ばれるコンピュータが運び込まれ
PC、スマホからアクセスできるかの確認作業と並行して
システム屋さんの内輪で偉い人らしき人物が管理職に説明
動かすための人が来週月曜日から来る事を上司から聞かされる。
そして時は過ぎて3週間後の金曜日、
「いやあ 申し訳ございません。一週間で終了させるはずが
結局、2週間 さらに問題が発生して追加対処で3週間
しかも、遅れを取り戻すために、2週目から土日返上
仮眠室を部外者利用させてもらっての24時間通し作業に
協力してもらう事になりまして、お手数をおかけしました。
ですが、悪意を持った部外者からの攻撃感知および対応
内部関係者による情報漏えい防止用ファイルコピープロテクト
情報保護違反を発生させる恐れのある顧客情報検索をした者が
発生した場合の直属上司への警告メール通知
問題行動をしそうな要注意営業社員のスマホに
営業行動監視アプリを強制ダウンロードしての営業行動監視
業務上横領が可能な業務をしている担当者監視
資金運用担当者からの報告書に
虚偽内容が混在していないかの資金運用の運行チェック
また、資金運用担当者からの報告書に
虚偽内容混在が無いかの資金運用運行チェック中に
偶然、悪意を持った部外者から攻撃感知時の処理が発生して
資金運用関係者DBが処理競合したケースなどで排他処理が
何を優先させてデータ更新するかが未設定での更新処理
御依頼のありました段階的提供の第一弾作業の確認項目が
今度こそ完了しましたので、引き揚げます。
11月25日に続いて、12月2日の月曜日にも
重要な会議というか打ち合わせがあるという事ですよね
その御多忙な中、直属の上司の方々からの指示とはいえ
11月29日の昼まで我々との共同作業に
従事させてしまして心苦しく思っております。
管理職の方から指示のあった形式での報告書は
電子媒体で作成してメールで送付済ですので
会議準備の方へと 御戻り下さい。
では、また何かございましたら宜しく御願いいたします。」
作業終了の挨拶をしてSI作業統括責任者のオッサンが
部下を連れて引き揚げていく・・・・疲れた・・・・
まさか、こんな膨大な量の確認作業や確認作業結果を、
こんな少人数で検証しなきゃならないのに・・・
何かの不具合で、もう一回ゼロから検証のやり直しとは
先週から、ほどんど不眠不休に近い。もう限界だ・・・・
はーーーーーーーーーーーーーーーあ。
とにかく疲れた。眠りたい。
また やれと言われそうになったら
現地採用の誰かに押し付けて逃げたい・・・