伶奈と凛と俺
大学生活にも慣れ俺はバイトをする事になった。卒業したら自立するんだしいつまでも学生生活だけをする訳にもいかない。そんな時バイト先はどこがいいかと探していると伶奈や凛もそう思っていたらしく一緒にバイト先を探す事になった。
「瑛太はどんな所でバイトしたいの?」
「ん〜、まぁ融通が利く所であればどこでもいいなぁ。コンビニとかでもいいかなぁ」
「瑛太君、意外とコンビニって考えてるより大変かもよ?」
確かにシフトやら変な客やら居そうだし絡まれたら対処とか面倒そうだけどやってる人はやってるしできない事もないと思うけど……
すると伶奈があっ! と思い出したかのように言った。
「そういえばね! 高校時代にカフェ行ってたでしょ? あそこいつもバイト募集の看板が立ってたじゃん? それによく混んでたから。もしかしたらまだ募集とかしてないかな?」
まぁ確かにそんなのあったな、でももう何年も前だし今だに募集してるかもわからないけど一応調べて電話を掛けてみる事にした。
結果は伶奈の目論見通りでは面接に来て下さいという事になった。たまたま思い付いたけどこんなに早くにバイトの面接が決まるなんてラッキーだ。
だけど…… 何故か面接を受けるのは俺と伶奈と凛……
「えっと、伶奈と凛も同じ所受けようなんて思ってもみなかったな……」
「だって瑛太と同じ所でバイトしたいって思うのは普通でしょ? まぁそれで落ちたら潔く諦めるけど」
「そうそう、こうなっちゃうって瑛太君わからなかった? 凛ちゃんは別について来なくても良かったのになぁ、あはは」
「そうやって私を除け者にしようとしたって無駄なんだからね!」
伶奈の余計な発言のせいでまた不毛な争いが始まってしまった……
伶奈がバイトすると聞いて柊もじゃあ同じ所受けようかなと言い出したがさすがにもうダメと伶奈に断れた柊であった。
伶奈ももう少し柊の気持ちを汲んでやればと思うがそれは伶奈が俺に一筋だと思ってもらうための伶奈なりの考えなんだろう。 すまん、柊……
そして面接の日3人で例のカフェに向かう。高校時代にたまにカフェに行く時に通った道のりはやっぱり懐かしくてこの3人でまた来るのは感慨深いな。
「瑛太、久し振りだね? なんか高校生に戻ったみたい」
「いいなぁ、凛ちゃんは。私が居なくなった後もたまに行ってたようだしズルいわ。でもこれからはよく通る道になるかもしれないし」
「伶奈ちゃんもう受かった気でいるの? 落ちたら恥ずかしいね!」
「フフッ、凛ちゃんだけ落ちて私と瑛太君だけ働く事になるっていう考えはないのかな?」
それを言うなら俺だけ落ちるという考えはないのだろうか?いや、よく考えてみればこの2人はなんか受かりそうだ。見た目もいいし。
そんな中で俺がこの2人と比べられると見劣りしまくりだもんな…… 考えるともうそうとしか思えなくなるからやめておこう。だけど一応聞いておこう。
「俺だけ落ちたらどうするんだ?」
「うーん、瑛太が落ちちゃったら受かってもパスしようかなぁ」
「そうだねぇ、もし次のバイト先で凛ちゃんと瑛太君が一緒になるのはなんか癪だし私も断るかも」
おいおい、動機が不純すぎやしないか?ていうよりもったいないぞそれ? もし受かったら俺の為なんて事で断ってほしくないなぁ……
そして面接を受け奇跡が起こった。なんと3人とも受かったのである。日を改めてご連絡しますとかもなしにその場でokを貰えたので3人で喜んだ。
まぁそこまでで時間帯など出勤日はバラバラではあるがたまに一緒になれる時もあるのでそれはそれで満足したようだ。
バイトでは可愛い伶奈と凛はすぐに人気になりすっかり看板娘扱いだ。伶奈や凛を目当てに来る客もいたがそんなの伶奈も凛もどこ吹く風で器用に受け流している。
それに俺も居る時は伶奈と凛は俺に異様に仲良くしているので客からもあれって彼氏?と聞かれ2人はそうですと答え何やら不穏な空気が流れた事は言うまでもない……
同じく店の人からもあんた堂々と二股してんの? と聞かれなんて言うかわからなくて困った事にもなった。 厳密にいや、厳密に言わなくてもそうかもしれないのが悲しい。
そして大学で昼休みをいつもようにとっていると伶奈と凛が俺の隣に来た。
「なんか最近凄く楽しいね? バイトも充実して瑛太君といつも会えて私とっても幸せだよ」
「何自分だけ幸せに浸ってるのよ! 私だって幸せなんだからね。瑛太がいて、それに…… 言いたくないけど伶奈ちゃんだっているし」
「あはは、何それ? もしかして凛ちゃん照れてる? 嬉しいなぁ、凛ちゃんからそんな言葉聞けて。私どんな結果になったとしても瑛太君の事や凛ちゃんを好きってのは変わらないと思うなぁ。もちろん瑛太君がどっちかとったらもう片方は友達と好きって事でね?瑛太君」
伶奈の言葉に少し言い淀みながら、ああと答える。
「照れてない! 伶奈ちゃんの事いくら嫌いになろうとしても出来なかっただけだし! それにそんなの当たり前でしょ? 瑛太に選ばれなかったら友達として好きって事で諦める。瑛太もよ?友達としてなら許すけどそうじゃなかったら今度こそ浮気なんだから!」
凛がわかってるわよね?と釘をさす。ああ、わかってるよ。俺達3人いつもこんなに仲良しだけどどっちか選べば2人になる。
だけど伶奈はそれでも俺に寄り添い凛もいろいろ迷惑かけて一時期気不味かったが俺の事を好きだからと言って伶奈と同じように寄り添ってきてくれた。
そんな2人の想いに決着をつけたってここまで来ると俺達そう簡単にはバラバラになる事はないだろう。
しっかりとわかった上で俺達3人関係は少し違くなるかもしれないけど疎遠になったりしないはずだ。 だけど今は伶奈や凛もこの関係を楽しんでいるんだとも思う。
でなければ伶奈と凛はこんなにも楽しく笑い合えないはずだ。俺って本当に幸せ者なんだ。
こんなにも魅力的な2人にこれだけ愛されて……
「2人とも。俺ってこんなどうしょうもない奴だけど伶奈と凛のお陰で今は本当に楽しいよ。ありがとう」
「瑛太、私もだよ大好き」
「瑛太君、私も大好きよ」




