久し振りの凛と2人
ある日の休日、特に大学の予定もないので凛が俺の家に突然やってきた。そして久し振りに凛と2人きりになる。俺の部屋に行き凛はしばらく俺に寄り添っていた。
そういえばちゃんと前の事を凛に謝らなきゃいけない。俺が勝手に誤解して凛に別れようと告げた事。
どのタイミングで言おうか俺がソワソワしていると……
「瑛太どうしたの? なんか落ち着かないね?」
「あ、あのさ凛、俺変に誤解して凛と別れようなんて酷い事言ってしまって…… 俺、凛の事選んだはずなのにこんなんなっちゃって」
「ううん、もういいの。その事で伶奈ちゃんにも随分気を遣わせちゃったし、私って情けないなぁ。明るいだけしか伶奈ちゃんに勝ってる所なかったのに。それにね、あの時とは立場が逆になっちゃったのかな? そうじゃないね、振り出しに戻ったのが適切かなぁ? その上でもう1度瑛太に選んでもらったら私…… 」
凛は恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めた。凛も伶奈がこうなるように仕向けたって気付いてるのか、やっぱり伶奈は俺が今どっちを選ぶかって勝負しているつもりなんだ。
「でも瑛太、私別れたつもりないって言ってたよね?なのに私が落ち込んでいる間伶奈ちゃんと随分ラブラブだったよねぇ?」
「ああ、それ含めて本当に俺ってダメな奴だよな」
「そんな瑛太でも私メロメロになっちゃってるんだ、最近は伶奈ちゃんばかりで私悔しい」
ムスッとして上目使いで俺を睨む。確かにあの時は凛と気不味くて俺だけ伶奈に支えてもらっていたようなもんだったから凛に大分寂しい思いをさせてしまった。
「瑛太の体のあっちこっち伶奈ちゃんにも触らせたんだよねぇ、瑛太の浮気者!伶奈ちゃんがそのつもりなら私だって遠慮しないんだから!」
凛は俺を押し倒して馬乗りになり俺の体の胸辺りに人差し指を乗せなぞっていく。やがて凛は堪え切れなくなったように俺にキスをする。
「私、瑛太と別れた覚えないしこのまま瑛太を襲っても何も問題はないよね? どうせ伶奈ちゃんの事だからこんなのは予想してそうだし」
「え?」
そして午後になった。 正直凛が激しく求めてきたので疲れてしまった、凛はというとあれだけ何度もだったのに逆に元気になっていた。
「フフッ、お腹空いたでしょ? そういえば瑛太の両親は? 来た時からいなかったからどこかへお出掛け?」
「ああ、2人で買い物行ったきりだな。この感じだとしばらく帰って来なそうだけど」
「あれ? でも奈々ちゃんはいるよね? 靴もあったし…… よし! じゃあ私何か作っちゃおう、キッチン借りるね?」
凛がトタトタと階段を降りていくと俺の部屋のドアが開いた。枕を持った奈々だった。なんか顔を赤くさせて凄く怒っている?
「お、お兄ちゃん、隣に妹がいるってのにあんなに激しく…… 聞かされてるこっちの身にもなりなさい!」
奈々は俺の顔面に思いっきり枕を投げつけた。
「あーあ、ホント主人公補正でもついてるかのようなモテぶりで気に食わない! 私なんかいいと思った人伶奈さんにとられてるし」
「ああ、柊か。随分奈々って柊と気が合うみたいだけど?」
「え!? そうなの?」
「ああ、凛なんか馬が合わないのかよく柊と言い合ってたし、でも伶奈には柊は忠実かなぁ」
そう言うと喜んだと思ったらまた奈々の顔が少し曇る。あ、伶奈の事言っちゃったからか。奈々のこんな反応なかなかないし新鮮なんだよなぁ。
「何? ニコニコしちゃって」
「いや、奈々もなかなか可愛い所あるんだなって」
「はぁぁぁぁあ!? 変態ッ!」
奈々はそう言って部屋のドアをバタンと勢いよく閉めたけどまたすぐにドアが開く。
「奈々ちゃんどうかしたの?」
「いや、柊の事話してたら真っ赤になって出ていったんだ、それよりもう出来たのか?」
「へぇ〜。ううん、なんか瑛太の顔見たくて…… ねぇ、出来るまでリビングに居てくれる?」
「ああ、俺だけ部屋に居たら作ってくれる凛に悪いしな」
そして凛は昼飯のパスタをササっと作り奈々を呼び一緒に食べる。
「凛さん、なんかごめんね? 本当は私が作るはずだったんだけど」
「ん〜? 気にしなくていいよ、瑛太に私が作ったの食べてもらいたかったし」
「なんか聞き辛かったんだけど凛さんとお兄ちゃんって別れたのかと思ったんだけどそんな事なかったんだね。でも伶奈さんともイチャイチャしてたし……」
その言葉にジロッと凛は一瞬俺を睨むがすぐ笑顔になり……
「うん、別れてないよ。 伶奈ちゃんはそうだねぇ、ライバルだから?」
「やっぱりお兄ちゃんってなにかしらの主人公補正ついてるんだね……」
「あはは、そうだね、私の中じゃ瑛太は主人公だもんね」
昼飯を食べ終わり部屋に戻るとちょうどスマホが光った。伶奈からだ、メッセージで今から遊びに行くね?ときていた。
凛が来てるけどなぁと思って俺が思案しているとまた伶奈からメッセージが届いた。私の予想だと凛ちゃんも来ていると思うけど?ときた。
なんて鋭いんだ、どこまで看破してるんだ伶奈は? 凛にも伶奈が今から来るよと伝えると普通に受け入れてくれたので凛も来るだろうなと思っていたのかもしれない。
「あー、よかった」
「え? 何が?」
凛が急にそう言ってきたので俺は不思議に思って聞いた。そうすると凛は少し顔を赤くさせて言う。
「だって瑛太と久し振りにひとつになれたから!」
ツンと俺の鼻に人差し指で触れ凛はコーヒーを淹れてくるねと言って再びキッチンに向かった。




