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柊と奈々、そして……


「ねぇお兄ちゃん、柊さんってかっこいいね! 寡黙な感じがして。お兄ちゃんにあんなイケメンの友達いるなんて知らなかったよ」


「だったら話し掛けてこいよ? 俺の部屋に居るんだから」


「え〜、恥ずかしいよ。私の事タイプだったら良いなぁ、私結構可愛いと思うし」


俺は奈々に連れられてリビングに来ていた。奈々が柊に食い付くとは意外だった。柊がイケメンだから意外と言ったら柊に失礼だけど意外は意外だ。しかも友達かどうかも怪しいんだが……


でも奈々には残念だけど柊は伶奈の事が好きなんだよなぁ。奈々はどっちかっていうと凛みたいなタイプだと思うし。


「よーし! こんなもんでいいかな?」


奈々はお盆にお菓子やら飲み物やらを乗せた。これで柊にまた話し掛ける口実が出来たと思ってるな、奈々は鏡の前に立って髪を直し変なとこがないかをチェックしている。


奈々のこんな恥ずかしがってる姿は見た事ないな、なんか兄として複雑だったけど相手があの柊だしなぁ。多分適当にあしらわれて終わるだけだな。


奈々は俺を先に行かせ、俺はとりあえず部屋に戻る。


「どうしたの? 奈々ちゃんやっぱり柊君の事嫌だった?」


凛が柊を冷めた目で見てそう言う。


「やっぱりは余計だろ、あれは事故だし」


まぁ確かに事故だしな、それに凛が思ってる事と別な事態になっているぞ?

まぁ後は奈々に任せるか……


「瑛太君ソワソワしてるけどどうしたの?」


「ああ、別になんでもないよ」


しばらく雑談していると部屋のドアがノックされ少し緊張した面持ちの奈々がお盆を持って入ってきた。いつもと様子が違う奈々に凛や伶奈はなんだ?と思いつつ奈々の目線が柊に行ってる事に気付いたようだ。


「あ、あの柊さんどうぞ……」


「ありがとう。さっきはごめんな? 偶然だったとはいえ」


「全然良いんです、もう気にしてませんから」


そんなやり取りを見ていた伶奈と凛はなんだかすっかり他人の色恋沙汰を見る目に変わっていた。


まさかあの奈々が柊を?と思っているんだろうな、俺も信じられないくらいだ。


「そういえば全然似てないんだな? 広瀬と妹って。兄妹なのか本当に?」


「よく言われるんですよ」


「良かったな?お兄ちゃんの方に似なくて」


俺の方を見て柊はそう言った、急にディスってきやがったこいつ……


「はい! 本当に良かったです」


そして奈々はそれに即答する。なんか柊は勝ち誇ったような顔をしているのが若干ムカつくが奈々もそこは否定しろよと思った、少し悲しいぞ……


すると後ろから凛が抱きついてきた。


「大丈夫だよ瑛太? だって私が居るんだから!」


「そうだよ瑛太君、凛ちゃんはさておき私が居るし」


伶奈も俺の横に来てそう呟く。伶奈がそんな事を言うのでチラッと柊を見ると勝ち誇った顔からまた悔しそうな顔に変化している。忙しい奴だな……たこつきと


そんな様子を奈々が観察している。そして柊が伶奈ばかりを見ているのを気付いて奈々もガクッとする。どうやら柊が伶奈を好きってのに気付いたようだ。


だけど奈々もまだ柊に食い下がり友達になって下さいと柊に申し出た。兄が俺だから柊は遠慮するかと思ったがすんなり良いよと答えた。


「やったぁ! あ、あの連絡先とか教えてもらえますか?」


奈々がそう言うと互いの連絡先を交換した。奈々のこんな乙女な姿は初めて見る。しかも相手が柊だ。いつも見ているからよくわからなかったが奈々も普通の女の子なんだなと俺はなんだか兄として普通に応援したくなってきた。


ただ伶奈という強敵がいるけどなぁ。伶奈への想いが柊は強いから奈々の想いが届くかどうか……


「柊君の事はどうでもいいけど奈々ちゃんは幸せになって欲しいなぁ」


ボソッと凛は小さな声で呟く。同じく伶奈が恋敵の凛には何か思う所があるのだろうか?


「どうした凛?」


「だって伶奈ちゃんは強敵だし私だって大苦戦してるから」


「フフッ、嬉しいな。凛ちゃんに私そこまで認められてるなんて」


「伶奈ちゃんを褒めてるわけじゃありません!ねぇ瑛太?」


いや、そこを俺に振られてもなんとも言えない……


「なんか私凛ちゃんと奈々ちゃんに敵対視されそうで怖い。瑛太君守ってね?」


「ほら、そうやって! ズルい! 私だって負けないんだから!」


2人にもみくちゃにされている所を奈々と柊はまたやってると若干引いた目で見ていた。


「あの、柊さんも大変ですね……」


「広瀬の妹は話がわかるな、毎回あれを見せつけられるとな……」


「お兄ちゃんがご迷惑お掛けして申し訳ありません、妹として恥ずかしいです」


あっちはあっちで俺の話題で盛り上がってるようで何より。ディスり大会になっているのが気に食わないけど。


そして暗くなりかけた所で3人は帰っていった。奈々は柊の事でいつもよりテンション高めになっている。


「それにしても柊さんの好きな人が伶奈さんなんていくら私でも勝ち目ないなぁ…… 伶奈さん反則的に可愛いもん、凛さんもだけど。それなのにお兄ちゃんに夢中だなんて奇跡よねぇ」


「本当にそうだよなぁ……」


「大体お兄ちゃんはいつになったら固定の恋人を選ぶのかしら?凛さんと付き合ってたと思ったけど別れたの? そうは見えないけど……伶奈さんとも付き合っているみたいに見えるし、二股じゃない? 凛さんと伶奈さんも何故か許容しているみたいだからまだ平和で済んでるけど」


「なんか高校のドタバタしてた頃に戻ったような感じがするんだよなぁ」


そうだ、もしかして伶奈はあの時の続きをしているのか?ちょっと前に俺に話してくれた事があった。あんな事がなかったら全部お互いなんの遠慮もなしでちゃんと凛と勝負し直して俺の本当の気持ちが知りたいって。


だから凛が元気なかった時は俺に凛とちゃんと話をして元気になってもらおうとか焚き付けるような事を言っていたのか?


思えば伶奈ってそういう奴だ。いつも凛と対等な上で競おうとしていた、それは昔も今も同じなんだ。だから凛が元気になってあんなに嬉しそうなんだ、今の凛なら大丈夫だって。


俺の考えすぎか?でも伶奈ならそう考えていてもおかしくないような気がしてきた……


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