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意地悪な柊


広瀬の奴と岸本が付き合い出して? 1ヶ月以上が過ぎた。なんであんな奴が岸本にあんなに好かれるのか理解出来なくて俺はずっとイライラしていた。


あまり表に出すと岸本に叱られるので我慢している。

クソッ、俺は何の為にここまで岸本について来たんだ? 見方によってはストーカーみたいじゃねぇか……


と、隣にも俺と同じくイライラを募らせた顔をしている奴が居た。恐らく俺と同じ感情が渦巻いているかもしれない。


「何よ? こっち見ないで、気が散る」


「お前から明らかに不機嫌オーラが出てるからだろ」


「人の事言えないでしょ? 柊君こそジトッとした目で瑛太と伶奈ちゃんの事穴が開くように見つめて。それになんで毎回隣に来るのよ? 誤解されるじゃない」


「お前こそなんであいつらの隣に行かないんだよ? もしかして気不味いのか? 大野なんか普通に行っちゃってるぜ?岸本だってお前らが付き合ってた頃普通にあの輪に入っていっただろ?」


俺がそう言うと長浜は俺を睨む。長浜はいつも俺に棘があるな、まぁ俺の日頃の行いのせいでもあるが。そんなに睨んでも元が可愛いので熱視線を送っているようにしか見えないけど? そっちのが余程勘違いされるんじゃないか?


別に好きで隣に座っているんじゃないし。岸本から頼まれたのだ、この間長浜がチャラ男に絡まれていた所を岸本は気付いていて広瀬に知らせて助けようとしたら俺が行ったのを見て頼んできたのだ。


長浜も飛び抜けて可愛い方だし岸本と違って今は広瀬に近付きにくくて1人で居る事がよくある、それで余計なちょっかい出してくる奴がいるかもしれないので俺に見といてと言われてしまった。


岸本の頼みだと断れない。意図的ではないけど岸本に大変な事しちゃったし汚名返上だ。岸本は優しいからちゃんと長浜の事を考えている、長浜には岸本からそんな事を頼まれたなんて言わない方がいいだろう、今の長浜はそんな風に思う余裕もなさそうだし。


「私は…… 自分が思ってたより臆病だったみたい。てかなんで柊君なんかにこんな事言わなきゃいけないのやら。ていうかさっきから言ってるけどいい加減付きまとうのやめてくれない?」


「俺だってそうしたいんだけどさ、お互い大変だな」


「はぁ?」


心の中で溜息を吐く。なんで付きまとうの? としつこく言われると流石に言い訳しようがなくなってくるからやめてくれないか……


今日の講義が終わり広瀬らの後を追って少し後ろから長浜が追いかける。駅までついてやっていこうとすると長浜がクルリとこちらに振り返る。


「なんでまだついてくるのよ!?」


うるせぇ、岸本の言う事を忠実に守っているだけだ! なんて心の中で叫んでも届くわけもなく長浜は怪訝な顔をしてこちらを睨む。


ふと広瀬達を見ると広瀬がこちらを見ている。なんだあいつ? こっちが気になるのか? 岸本と一緒にいるくせに。そして俺はある事を思い付いた。


見てろ広瀬、お前を後悔させてやる。大丈夫、これは岸本に迷惑を掛ける事じゃない。 目の前で怒っている長浜に視線を合わせ、グイッと近寄る。


「な、何よ!? 文句あるの?」


「前から思ってたんだけど長浜ってやっぱり可愛いよなぁ」


「ッんあ!?」


俺から飛び出た予想外の言葉に長浜は間が抜けた声を上げて驚いて鞄を落とした。まぁいきなり俺からそんな事言われたらそうなるよな。


「はぁッ!? 何言ってんの?」


落とした鞄を拾い長浜は明らかに動揺していた。ククッ、岸本が好きな俺がそんな事言うとは思えなかっただろう。


「もうちょっと顔見せてみろよ?」


俺は長浜の前髪を手で上げておでこを出させてこれでもっとよく見えると言ってやった。


「な、ななッ…… 何すんのよ!!」


長浜は顔を真っ赤にさせて俺から後ずさる。そこでまた流し目で広瀬を見るとやっぱり気にしてる。岸本もこちらを見ているけど頼むから勘違いしないでくれよ……


「ははッ、意外と免疫ないんだなぁ、やっぱり広瀬だけだったって証拠だなぁ」


「あんた、からかってるの!? あんたなんかに迫られたって鳥肌しか立たないんだけど?」


「いや、可愛いはほんとだよ」


「やめてよ!」


長浜は持っていた勢いよく振って鞄を俺の体に当てようとするが俺はすかさず避ける。


「うわッ、あっぶねぇ。今の本気だったろ? 当たったら洒落になんねぇ……」


「伶奈ちゃんぶっ飛ばしたあんたが何言ってるのよ!」


チクリと触れられたくない過去をまた言われたので俺もからかうのがエスカレートする。


「いやいや、そんな所もまた可愛いなって思うよ。髪型変えた時も可愛いなって思ったし」


「本当になんなのよ!? あんたに言われても嬉しくないんだってば!」


だんだんと真っ赤な顔をした長浜の目には涙が浮かんできている。マズい、流石に言い過ぎたか? ポロポロと長浜は静かに泣き出した。


俺は長浜にそっと近付き手で涙を拭ってやった。するとドスッと長浜に腹をパンチされた。今までの仕返しとばかりに力を込めてパンチされたので流石に痛くて体がくの字に曲がりそうになるがなんとか耐えた。


お前広瀬にだったら絶対こんな事しないだろ、 暴力女め……


そんな事をしていると横から勢いよく頭を叩かれた。大野だった。


「何凛ちゃん泣かせてんのよ? あんた最低ね」


「いや、俺は褒めてたつもりなんだけど急に泣き出すし」


「凛に何言ったんだ?柊」


広瀬が喧嘩を売るような口調で俺に尋ねた。明らかに広瀬は怒っていた、なんだよお前? やっぱり長浜に未練タラタラじゃねぇか、俺はざまあみろと思い広瀬の怒った顔を見れて満足したのでここは素直に謝った。


岸本もいるしな。でも流石に泣くとは思わなかった。本当に広瀬だけだったんだな。



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