寂しい気持ち
瑛太に突き放されてから数日、数週間が流れた。最初の頃は悲しくて寂しくて気が狂いそうだった。今だってとても寂しくて瑛太の事を想うだけで涙が出そう。よく女は別れたらすぐに新しい恋を探すからケロっとしてるとか言うけど私には適用されないみたいだ。
なんでかな? ていうか別れたつもりないから当然か……
今では私から見ても瑛太と伶奈ちゃんは凄くラブラブに見える。あの伶奈ちゃんだから当たり前か、私なんかよりずっと器用に瑛太の心を掴んでそうだもん。
鞄に付けているキーホルダーを見る。あの時伶奈ちゃんに渡された3人お揃いの友達の印…… 私はそのキーホルダーを外しグッと掴む……
何が友達よ! 私から瑛太を奪ったくせに!! 私はキーホルダーを掴んでいる手を振り上げ壁に叩きつけようとしたけどピタッと止まる。
あはは、できないや…… あんな事されても私伶奈ちゃんの事嫌いになんてなれないや。どうして? 伶奈ちゃんも瑛太を私にとられた時こんな気持ちになったのかな?
私はずっと瑛太と一緒に居て、その間もずっと伶奈ちゃんは私にも優しかった。瑛太にちょっかいをよく出して私を怒らせてたけど本気で私が嫌がる事はしないでいたし……
そういう所も含めて私は伶奈ちゃんに勝てないんだろうなぁ。 それにいつだったか柊君に言われたな、私がある程度伶奈ちゃんに瑛太と伶奈ちゃんがスキンシップ取る事を半ば認めてるって。図星だったから何も言い返せなかった。
だって伶奈ちゃんは大事な友達で一緒に瑛太を好きになって、そしてどちらか告白されるまでずっと仲良くて告白されてからも伶奈ちゃんは私に嫌な顔せず接してくれてだけどそんな伶奈ちゃんが私から瑛太を奪って。でもだからって私伶奈ちゃんを嫌いになれないし。
私と伶奈ちゃんはおかしい部類なんだろうか? うん、きっとそうだ。だから恋仇の私とこんなに仲良くしてくれたし私も受け入れたんだ。
そしてとある大学の日、伶奈ちゃんは私と瑛太が付き合ってた頃のように私に接してくれるけど私は伶奈ちゃんより大人じゃないのかそれとも物分かりがよくないのか少し遠慮気味だ。
それに瑛太も私が来ると少し余所余所しくなる。これは辛い…… どうして私にそんな態度を取るの? 私がはっきり別れるって言わないから? でもごめん、私から別れるなんて絶対言えないよ。こんなに好きなんだもん。
教室を移動する時瑛太と伶奈ちゃん、美香ちゃんは先に行ってしまった、私は何故か柊君と一緒になってしまった。
「なんか最近お前から負のオーラが出てるな」
「ふん、誰かと思えば瑛太を殴ろうとして伶奈ちゃんをぶっ飛ばした柊君じゃない、馴れ馴れしくしないで。あんたと一緒の所見たら瑛太がまた誤解しちゃうじゃない」
「ひでぇ言い様だな、俺あの時の事今だに後悔してるんだぜ。てかお前らとっくに別れたんじゃないの? なんで今更広瀬の事なんて気にしてんの?」
「ごめん、無神経だった。でも私は瑛太と別れたつもりないし」
なんか柊君に対しては意地悪モードになっちゃうな……
「お前も往生際が悪いよな、どう見ても広瀬と岸本付き合ってるだろ? それに広瀬なんか忘れたら? あいつと付き合ってももうしょうがねぇだろ、あんなはっきりしない奴なんてさ」
「瑛太の悪口言わないで! 私が不用意にあんたと仲良くしたせいで瑛太は誤解しちゃったんだし」
「はいはい、悪かったよ。俺も往生際悪いし俺達お似合いだな」
「なんであんたとお似合いにされなきゃいけないのよ? 冗談はやめてよね」
私はさっさと柊君を置いて教室を移動しようとするけど柊君は私と並んで歩く。はぁ、このまま一緒に教室に入って瑛太に見られたらどうするのよ……
「長浜って岸本と同じくらい顔が良いくせに可愛くないのな、広瀬に対する態度と俺に対する態度全然違うしな、広瀬の奴にはデレデレしてんのに」
「瑛太と柊君が同じわけないでしょ? 瑛太は私にとって特別なんだから。それに柊君は瑛太にいつも突っかかって意地悪言うから自業自得でしょ?」
「はははッ、いつまで経っても広瀬広瀬だな、あいつがお前がこんなに想ってる事知ってんのかなぁ?」
……そうだよ瑛太、私こんなに瑛太でいっぱいなんだよ? 伶奈ちゃんと関係持ったって私の心の中は瑛太の事が好きで好きでしょうがないのに。
それとも私瑛太に飽きられちゃったのかな? 私の想いが瑛太にとっては重かったのかな? だから伶奈ちゃんと? ダメダメ、そんな風に思っちゃダメだ。益々私落ち込んじゃうよ。
よりによって柊君の前で泣きたくないし…… 絶対バカにされる。それに瑛太にもまた見られでもしたら面倒くさい女に思われちゃいそうだし。
今のこの状況って昔瑛太が伶奈ちゃんと結ばれようとして私があの手この手で瑛太に協力しようとしてあわよくば気が引けたら良いななんて片思いしてた時よりよっぽど絶望的だよね。
瑛太にはもう別れかけられてるし。ていうか瑛太の中で私は終わってるのかもしれないけど。
「なんかいろいろ考え事してるみたいだけど教室ここだぞ?」
「へ?」
柊君にグイッと肩を掴まれそのまま教室に入れられた。私は慌てて教室の中を見渡すと瑛太が居た。そして柊君に肩を掴まれている所をバッチリ見られてしまった。
私はその瞬間柊君に掴まれていた手を思いっきりはらった。もう遅いけど……
うぅ、嫌な所見られちゃったよ。やっぱり私柊君とそんな関係とか思ってないよね瑛太?
「まるで人を疫病神みたいにしやがって」
「的確じゃんその表現。はぁ〜、もう最悪……」
「お前のその勝手な解釈の広瀬の思考回路でどんな花畑な妄想してんのか知らねぇけどさっさと座ったら?」
「わかってるわよ!」
私は出来るだけ柊君から離れて座った。瑛太は勿論伶奈ちゃんと一緒に座っている。私もそこに入りたい、だけど私が行くと瑛太はいい顔してくれない。
私チラチラ瑛太と伶奈ちゃんを見ちゃってる…… そんなに落ち込みたいの? と自分に問い掛けるが見ずにはいられない。
2人ともいい雰囲気だ、私と付き合ってたっての嘘みたい。 なによ! と思ってると横から声を掛けられた。
「前から思ってたんだけど君って超可愛いね」
誰だろうこの人? 如何にもな感じでチャラそうな男の人だ……
「えっと、ありがとうございます?」
その後もちょくちょく話されて困ってしまった、講義が終わり瑛太達の後を追おうとするとそのチャラい男から腕を掴まれた。
「ねえ、連絡先教えてよ?」
「すみません、急いでるんで!」
「いいんじゃん、それくらい」
ああもう! 最悪、放っておいてよと思ってたら柊君がこちらに向かってきた。
「こいつと次一緒に行くんで離してやってくれません?」
柊君が威圧するかのようにチャラ男に詰め寄る、柊君は身長も結構大きいし仏頂面なので結構こうされると怖い。チャラ男は柊君の迫力に負け私から腕を離した。そして今度は柊君が私の腕を掴み教室を出た。
「あー、えーと、助けてくれてありがとう?」
「いいよ、別に。お前にも散々迷惑掛けただろうしお詫びだ」
私ってなんだかんだで柊君に結構ピンチな所助けてもらっちゃってるな…… だからあの時だって打ち解けられたんだ。
「ほら、着いたぞ」
教室の前まで来てパッと手を離す、彼なりに気を遣ってるんだろう。なんだか柊君っていい人かと思ったり最低と思ったり評価がよくできないのは無愛想さからも来ててそこら辺が足を引っ張ってるんだな、もう少し瑛太とも仲良くしてあげたらいいなと思ったけど大好きな伶奈ちゃんを取られているから仕方ないのかもしれない。




