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更なる誤解


大学の入学式が終わってから買い物して食事を摂り俺は岸本達と別れアパートに帰ってきた。

岸本の事が好きで必死でここまで追いかけてきた、だけどここには広瀬達が居て岸本は広瀬に夢中だ。


勝ち目なんてないのかもしれないけど俺は岸本の事が…… どうすれば岸本に振り向いてもらえるんだろう。広瀬はズルい。 長浜みたいな彼女が居ておまけに岸本まで。


岸本が昔話していた。2人は両想いで長浜も広瀬の事が好きで、そして広瀬は長浜を選んだ。


それだけだったらまだよかった、だけど岸本は想いが届かなくてもまだ広瀬の事が好きでいる。俺は岸本が転校してきて岸本に一目惚れした。


なのに岸本はずっと広瀬に縛られたままで前に進めないでいる。それは岸本にとってずっと苦しい事だろう、それでもそんなに広瀬の事が好きなんだな。だけど俺だってお前をここまで追いかけてくるくらい好きだったんだ。


広瀬の事は気にくわないが広瀬の彼女の長浜も気に食わなかった、岸本の広瀬を断ち切れない原因も長浜がある程度岸本がまだ広瀬を好きでいる事を容認しているせいだ。


岸本は長浜の事を大切な友達と言っていた、それは長浜にとってもそうなんだろう。どっちをとっても友達でいようと岸本は提案したらしいけどそれが結局こういう状態を作り出したんじゃないのか?


だがそんな事を言っても後から現れた俺には干渉してほしくないのだろう、岸本もその事についてはあまり突っ込まれたくなさそうだし。


溜息をついて明日の準備でもしようとした所インターホンが鳴った。 こんな時に誰だろう? 知り合いもここにはいないし、さっき岸本達と別れてきたばかりだし……


俺は注意しながら玄関のドアを開けるとそこには長浜が居た。長浜は何故か泣いているのか目を腫らしている。


「長浜、何か用か? ていうかどうしたんだよ、そんな顔して。そんなんじゃ広瀬がげんなりしちまうぞ?」


「…… あんたのせいよ…………」


「は?」


長浜はプルプルと震えながら怒っているのか低いトーンでそう言ってきた。 意味がわからない、俺何か怒らせるような事したか? それ以前に最近はまずまず良好な感じだと思ったんだけど……


「どういう事だよ?」


そう言った途端長浜は俺に詰め寄り、その勢いで俺は玄関の床に倒れてしまった、だが長浜は倒れている俺に迫り、俺の襟筋を掴んで涙に濡れた悲壮な顔で俺に叫んだ。


「あんたがっ…… あんたが! あんたのせいで私瑛太に嫌われちゃったじゃないの!」


ますます意味がわからない。俺が長浜に何もするわけないだろう? 酷い誤解じゃねぇか…… 長浜が俺の胸を何度も叩く。


「あんたが変に私に丸くなったから! 私に話しやすくしたから瑛太に誤解されちゃったんじゃない! このバカ!バカ!バカッ! うぅ…… ひっぐ……」


はぁ、なんでそうなるんだよ? 広瀬って思ったよりバカなのか…… 長浜が俺に靡くはずないだろ。 あんなに広瀬の事が好きって言ってたのに。


それに俺だって長浜にも原因があるとは言え長浜はただ単に岸本を気遣ってやってるだけだからそこまで嫌ってるわけじゃないから反省して長浜への態度を改めたってのに……



「落ち着けよ、そんな風に言われたって俺何にもわかんねぇよ、詳しく聞かせろよ」


「何がッ!何が詳しくよ! 本当はこんなとこに来たの瑛太が知ったらまた誤解されちゃうのに」


「じゃあなんで来たんだよ!? お前だって俺に突っかかるのはお門違いだってわかってるんだろ?」


そう言うと長浜は俺を叩いていた手を止め俺に馬乗りになっていた体勢から離れた。


長浜はハァハァと息を荒げていたが今度は肩を震わせ静かにまた泣き始めた。その様子を見るとやはり長浜は混乱しているようだった。


「わかってるわよ…… 私だってあんたと話しやすくなったからって距離を縮めちゃったし…… だけど……」


「完璧に広瀬の誤解なんだからお前がそこまで取り乱さなくてもいいだろ」


「バカッ! 瑛太の事だからこんなに取り乱してるんでしょ!」


俺からしてみれば本当に迷惑で広瀬の奴は俺にどれだけ面倒な思いをさせれば気が済むんだ? だけど長浜をこのままにしておくのもなんかあれだし仕方ない……


「頭冷やせよ? 取り敢えず飲み物入れるから入れよ、それにこんなに騒いだら他の人の迷惑だろ?」


「……うぅ、 わ、わかった」


俺は取り敢えず長浜をテーブルに座らせキッチンに行きコーヒーを淹れ長浜に差し出した。 長浜は小さくいただきますと言いコーヒーを口に含んだが熱かったのか咽せていた。


「あっつい……」


「そりゃ淹れたてだからな。 少しは頭冷えたか?」


「こんな熱々のコーヒー出されて冷えると思った?」


「全くまた堂々巡りだな、せっかく普通に接するようになったのにまたそれかよ? もしかして俺とまたこんな感じになれば広瀬の奴も安心するとか思ってるのか? アホくさッ」


そう言うと長浜はダンッとテーブルを叩き俺に怒りの視線を向けてくる。ああ、怒らせちまった。だけどなんでそこまでするんだ? そんなんで本当にいいのか?


「あんたなんかに私の気持ちなんてわからないわッ! どれだけ瑛太の事を好きかなんて…… どれだけ必死で瑛太と付き合ったなんて」


「だけど終わる時ってあっという間……」


その時パァンという音と共に俺の頬が痺れた。 え? おれビンタされた? 頬を押さえて長浜を見ると先程より更に激しい怒りを見せた長浜の顔があった。 広瀬といる時は絶対見せないような顔だ。


「終わってなんかないッ!!」


「…………ごめん、言いすぎた」


俺は居たたまれなくなってトイレに行った。 まさかあんなに怒るなんて…… そりゃそうか。 俺だって岸本の事になったらあんな風になるのかもしれない。

そしてトイレから戻ると長浜は顔を伏せてじっと待っていた。


「……さっきはごめんなさい。私も叩くなんてやり過ぎた、もう帰るね?」


「ああ、こっちこそごめん」


玄関まで長浜を送ると外はもう薄暗くなっていた。 流石に危ないと思ったので送っていく事にした。 長浜はいいと断ったのだが今の長浜はなんだか危なそうに見えてやっぱり送っていく事にした。


電車に乗り長浜の家の付近まで会話はなかった。だけどこんな状態の長浜と何を話していいかわからなかったのである意味助かる。


もう家に着くというのでここらで別れようとした時……


「凛!」


「え? え、瑛太?」


「心配で…… てかなんで柊と?」


広瀬は顔を真っ青にさせていた。 これは不味そうな場面で出くわしてしまったと俺が誤解を解こうとしたら……


「やっぱり俺なんかより柊の方がいいんだよな?」


「え、や、違う、違う!瑛太、違うの!」


「おい! 広瀬!」


広瀬はそのまま後ろを振り向き走り去ってしまった、長浜もその後を追って俺も長浜の後を追ったが少し驚いていて遅れた俺と長浜は広瀬に追いつく事はなかった。



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