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凛と柊


大学の入学式までまだまだ期間があるので伶奈は出来るだけ俺達と遊びたいと言ってきた。 俺も凛も伶奈があっちでずっと我慢してたのをわかってるのでよく遊んだ。たまに柊も来るが毎度の展開に目を瞑れば慣れたもんだ。


最近の凛は柊の態度のお陰で随分柊と話すようになっていた。全て喧嘩腰だけど。慣れてきたってのもあると思う、そんな凛に柊も慣れてきたんだろう。


だからあからさまに雰囲気が悪くなる事も少なくなっていた、俺への態度は突き刺さるような感じだけど凛は凛で柊に慣れてくれればいいかと思っている。だけど何故か胸に何か引っ掛かりが生じてきている。


それがなんなのかわからない。 わからないけど大した事はないかと自分で自分に言い聞かせる、何せそれが何かわからないから。


「瑛太、また難しい顔しちゃってどうしたの? あ、柊君に何か言われたの? 私がガツンと言ってあげようか?」


凛が俺の顔を覗き込んでくる。でもよくわからないし、凛の顔を見ているとなんだかホッとする。 凛はどんどん魅力的になり髪を切ってから更に美人に見えるようになった。 凛にはショートが1番似合ってるな。


「おーい! 瑛太君凛ちゃん!」


伶奈達が駅で俺達の姿が見えたので手を振っている。そして大野の横にはぶっきらぼうな顔でポケットに手を突っ込み如何にも俺が居るのが気に食わないという雰囲気だ。これから皆で買い物を楽しくしようというのにブレない奴だなぁ。


「柊君、またブスッとしちゃって。顔は良いのにそんなんじゃ伶奈ちゃんに嫌われちゃうよぉ〜」


「うるせぇな。お前こそ、そんなにねちっこいと広瀬に愛想尽かされるぞ」


「残念! 瑛太はそんな人じゃありません、柊君と違ってとっても優しいんだから」


「あ! また私の前で!」


凛が俺の腕を強く抱きしめる。とは言っても化粧をしているから顔を付けるわけにはいかないので体を密着させてくる。これだと余計にベッタリくっついているように見える。


凛に触発されて伶奈も俺にくっついてくるのでその光景を見て余計に柊がイライラを募らせているのがわかるので俺は一旦凛と伶奈を剥がすがそうすると2人は余計に火がついたように迫ってくる。


チッと柊が舌打ちする。俺だって柊の立場だったらムカつくだろう、なのでこれ以上柊の目の前ではイチャつくのはあまりよろしくないけど凛と伶奈が揃うとどうしても……


「柊君、今舌打ちしたでしょ?」


凛にも柊の舌打ちが聞こえたのですかさず凛が絡む。


「知るかよ、あいつのどこがそんなにいいんだか」


「柊君にはわからないもんねぇ瑛太の良さが」


「凛! バカ、危ない!」


「え?」


柊からクルッと体を回した凛は位置を把握してなかったのか線路の方へ落ちそうになった。寸前、俺の視界がスローモーションになり凛を引き上げようとする。


伶奈達も凛に手を伸ばそうとするが間に合わない、俺も間に合いそうにない。

ダメだと思った瞬間横から伶奈でも大野でもない手が伸び凛の腕を掴みそのまま線路の反対側へと凛を引っ張る。


そう、凛を助けたのは柊だった。凛を引っ張った反動で柊は後ろに倒れ凛は柊に覆い被さるように倒れる。辺りに沈黙が訪れる。 だけど俺達以外の人も見ていたので大丈夫か?という問い掛けに沈黙は破られる。


「凛ッ! 柊!」


「………………あっ」


凛が体を起こし青ざめた顔で俺を見る、そして次に柊を見た。


「いってぇ…… たくっ、危ねぇ」


「ひ、柊君、大丈夫!?」


凛が心配して柊から体を退かし頭をそっと持ち上げる。 伶奈と大野も凛らに駆け寄る。


「あ、あの…… ごめんなさい。 それと……ありがとう。 瑛太達も心配掛けてごめん」


凛はさっきの事が大分ショックだったのかかなりシュンとしてしまっている。 結構危なかったから無理ない。まだ青い凛を落ち着かせようと肩に手をやる。微かに震えているのがわかる。


「全くなんとかなったからいいものの気を付けろよ? それと広瀬、お前が助けてやれよな。彼女だろ?」


その通りだ。 俺は凛を助けられず助けたのはいつも凛といがみ合っていた柊で……


「で、でもビックリした。凛ちゃん怪我なくて本当に良かったよ、柊君、本当にありがとう」


「柊やるじゃん、少し見直したよ」


「ああ。俺からも礼を言う、凛を助けてくれてありがとう」


柊はふんと言うと背中をポンポンとはたき何事もなかったようにまたポケットに手を突っ込んだ、だけど少し凛の様子を心配しているのは俺にもわかった。


凛は少しの間俺に寄りかかり怖かったと言っていたが電車が来る頃には元気になっていた。 そしてデパートに行き俺達は買い物したりしていると柊の視線を感じた。


凛の事を見ていた。 柊も少し怖がってた凛を心配していたから元気になって安心しているんだろう。そして帰り際、凛が何かに気付いた。


「あ、柊君左手の手の甲擦りむいてるよ、それってさっきのアレだよね? 今まで気付かなくてごめん…… 絆創膏あるから待ってて」


「いや、別に大した事ねぇし」


だが凛は助けて貰って何もしない性格ではないので鞄から絆創膏を取り出し柊の傷口に貼ろうとするけど柊は別にいらないと幾らか抵抗していたが疲れたようで抵抗するのをやめた。


「あ、改めてありがとう…… さっきは気が動転しててお礼もろくに言えなかったから」


「はぁ、わかったよ。素直に受け取っておくよ」


「だ、だからって別になんでもないんだからね! 思い出したらまた怖くなってきた…… 瑛太、慰めて!」


凛は柊に助けられたのが少し悔しいのかよくわからない態度になっていた。するとそんな様子の凛を見て柊が微かに笑った。


今までぶっきらぼうな態度だったから凛も俺も少し呆気に取られた、そんな様子を見て柊はまた舌打ちをして無愛想モードに戻った。



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