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合わない2人


「もう! なんなの柊君は!? 前から瑛太に突っかかってせっかく伶奈ちゃんの家で楽しく過ごそうとしてたのに!」


今日は伶奈の家で晩ご飯までご馳走になるので俺と凛と伶奈は買い出しに行っていた。まぁ大野がまた険悪にならないように俺らを行かせたんだけど……


凛はさっきの事をまだ怒っている。 珍しいな、凛がここまで引き摺るなんて。


「まぁまぁ凛ちゃん、柊君はあれはあれで悪い人じゃないんだよ? よく見てくれて気が利くし」


「それは柊君が伶奈ちゃんを好きだからじゃないでしょうか? 私なんてさっきは手痛い所をガツンと突っ込まれちゃったし」


まぁ柊の言った事に凛も自覚はあるんだよな。 だけど柊にとってはそうだけど俺達にとっては今更な事でズルズル行っている。


「もしかして凛ちゃん柊君の事気になってる?」


「冗談! なんで瑛太の事悪く言ったりあんな態度の柊君なんかを。瑛太、私は柊君がどう言おうと瑛太の味方だよ」


「ははッ、気にすんなよ? 俺は別に大丈夫だけどあんまり顔を合わせない方がいいのかもしんないなぁ」


「ダメ! 瑛太君が来てくれなきゃ私寂しいよ、柊君には悪いけど私が好きなのはやっぱり瑛太君だもん」


こうなっている内は俺は柊にあんな感じでチクチクと言われるんだろうなと思いつつ3人でスーパーに向かう。 俺達含めて5人いるので今日はすき焼きにしようという事になった。


伶奈は柊の事よりも3人揃ってこれから一緒に居られる事を何よりも喜んでいるので上機嫌だ。

俺もあっちに行ってた時から柊に言われ慣れているので然程でもないが凛はそうはいかない。


柊と接する時俺は意図的に出来るだけ凛と離れていたからだ。 まぁそれでも一緒にいた以上何度かこうなったけど。今日もこうなりそうだなと予想はついてたからな。 事実一悶着あってしまったし。 帰ったら帰ったで何事もなければいいのだけれど。スーパーに着き鍋の材料を買っていると見知った顔が2人いた。


「あら、久し振りじゃない? 確かそうそう、岸本さん! 図書室以来ね、そっちは長浜さんに広瀬君」


「あ、椿先輩、その節はどうも。 えーと隣は…… お姉さんの奏さん?」


「そっちの子は私初めましてだけど椿ちゃんのお知り合い? よろしくね、白石奏です。凄いね、椿ちゃん美人ばかりお知り合いなんて」


「お姉ちゃんにだけは言われたくないなぁ」


しばらく椿先輩達にも会ってなかった。伶奈の家って白石家に近いからこういう事もあるんだな。

そういえば奏さんって大学行ってるよな? 椿先輩も奏さんの後を追うように大学に行ってそれに近くでしょっちゅう帰ってくるって事は……


「あの、椿先輩と奏さんって×○大学ですか?」


「え、そうだけど? もしかして瑛太君達も?」


やっぱり…… まぁそんな事じゃないかと思ったけど。凛と伶奈は奏さんらと同じ大学だった事で意気投合してしばらくその場で話していたので仕方なく俺は鍋の具材でも揃える事にした。


んー、野菜はこんなんでいいかな。肉はと…… 選んでいると伶奈が話し終えたのかやって来た。


「ごめんね瑛太君、すっかり話し込んじゃった。あ、お肉はこっちの方がいいかな」


伶奈はすき焼き用の肉を選んでカゴに入れた。そういえばそんな風な肉あるんだった。あまり買い慣れてないからついつい普通の肉を選んでしまった。


「ああ、そうだな。こっちだった、凛は?」


「凛ちゃんは今ジュース選んでるよ、なんだかこうして一緒に買い物してると楽しいね! 瑛太君がいるからだけど」


伶奈が人目を憚らず俺の方に腕を回してきた。 ちょうどその時すかさず凛も見ていたようでムスッとして伶奈と俺の間に入り腕を回す。 これじゃあ買い物出来ないんだが?


「凛ちゃん、こんな3人並んでちゃ他の人の邪魔になるよ?」


「そんな事言って私が目を離すと伶奈ちゃんすぐ瑛太とくっつこうとするんだから」


「だってもう私も瑛太君を奪いに行く方にシフトしちゃってるんだからいいじゃない? フフッ」


この光景、柊が見たら怒り心頭だろうな。主に俺に…… あいつがついてこなくて本当に良かった。


「瑛太、私が美味しいすき焼き作ってあげるね!」


「残念、今日は凛ちゃん何もしなくていいからねぇ、だって瑛太君に私の手料理あんまり食べさせた事ないし。すき焼きってのがちょっと残念だけど今度はしっかりしたの作ってあげるから楽しみにしててね?」


「あ、ずるーい! そうやって瑛太の気を引こうとして!」


「なぁ、嬉しいけどもうちょっと静かに買い物しような? 闘志メラメラで挟まれると居たたまれないって」


なんやかんやで買い物を終え俺達は伶奈の家に戻ると大野がご苦労様と迎えてくれた。


「お帰り岸本、荷物持つよ?」


「あ、ありがとう柊君」


岸本の持っていた荷物を柊はキッチンの方へ運んでいった。


「ね? よく気を利かせてくれるでしょ?」


「それは伶奈ちゃんだからじゃないの? 私のなんか何にも反応しないわよ」


やっぱり柊を見ると凛は少し不機嫌になっている。 それから伶奈はキッチンに行き鍋の準備をしている。 俺達も用意をしてしばらくしてからすき焼きが出来た。


「瑛太君、お鍋運んでくれる?」


「ああ、わかった」


すると俺より早く柊が伶奈のもとへ行き伶奈から鍋を受け取った。


「俺が運ぶからいいよ」


「ちょっと! 伶奈ちゃんは瑛太に頼んだんだからわざわざ柊君が行かなくていいんだけど?」


もはや凛と柊は水と油だ。 俺はあまり気にしないから柊にやらせておけばいいのに凛もあまり突っかかると更に面倒くさい事になってしまう……


「柊君! 手伝ってくれるのは嬉しいんだけど瑛太君と凛ちゃんの嫌がる事しちゃダメでしょ!」


「…… わかったよ」


「あはは、伶奈ったら柊のお母さんみたい」


「もう、美香も笑ってないで卵持っていてくれる?」


その後はすき焼きを皆でワイワイしながら食べた、けどなんだか凛は柊を睨みながら食べてたような気がする。そんな俺は柊から視線を感じたんだけど……


そして夕飯を食べ終えしばらくしてから柊は帰っていった。


「私やっぱり柊君は気に入らない!」


「なんか柊って広瀬君に闘志燃やして凛ちゃんから恨み買って面白い事になってるわね」


「いや、全然面白くないんだが……」


「そうよ、嫌な感じ!」


だけどその柊によって俺と凛と伶奈は思わぬ事態になっていくなんてこの時はまだ思ってもみなかった……



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