ひとつ
冬休みももう半分以上過ぎた、凛の様子が少しおかしい。 理由はなんとなくわかる。 伶奈が遊びに来てからというものの少し2人きりになれる時間があまりなかったもんな。
それに伶奈からの猛烈なアピールに流石の凛もタジタジだった、好きだった伶奈からそんな事をされて嬉しくないなんて言ったら嘘になるけど俺は凛と付き合うって決めたから俺も伶奈のアピールされる傍ら凛の事が気になってた。
なので俺は凛にコッソリと夜中に会いに行くことにした。 勿論凛に事前に連絡は入れておいた。 俺の親達は知らないけど奈々には一応話しておいた、なんせ部屋が隣だから絶対バレるもんな。
深夜1時頃部屋を出る、奈々に今から行ってくると伝える。
「お兄ちゃん、不審者と思われないように気を付けてね」
「はいはい、じゃあ行ってくるわ」
階段を静かに降りて真っ暗なリビングを通り過ぎて玄関へ行く、静かに玄関を開けて外に出る。泥棒になった気分だ……
それに寒い。もうちょっと着込んでくればよかったけどそう何度も行ったり来たりしたくないのでそのまま凛の家に行く。行くがてら凛にメッセージを送る。
『今家出たところ、寒いから厚着してきた方いいぞ』
『わかった、楽しみ!』
『伶奈は寝てる?』
『うん、大丈夫だと思うよ? それより気を付けてね、結構遠いし』
まぁ遠いと言っても2駅離れてるくらいだ、歩いて50分くらいか? でも寒いから長く感じるな。 正月ムードはまだあるけどこの時間だと流石に静かだ。
横から吹く風が冷たく頬を刺す、だけどなんだか静かでとても落ち着くなぁ。 女の子だったら夜中とか怖いんだろうけど俺は悪くないなと思った。
夜中の風景を楽しみつつようやく凛の家に着いたので凛に連絡をする。 凛の家の玄関の前で待つ事数分静かに玄関のドアが開いた。
「お待たせ。 待ったよね? 寒いのにごめんね」
「いや、俺はもう歩いているうちに慣れたから平気だよ」
さて、これからどこ行こうなんてもうコッソリと凛と相談して決めていた。 このまま凛の家に入るわけにも行かないし凛がだったらちょうどいい場所があると言ってきた。凛の家から少し行った所に所にラブホテルがあるのでそこへ行こうと言われたのだ。
最初聞いた時は驚いたけど他に気の利いた場所もないし、なんせ夜中だし考えてみればそこが1番簡単だったのだ、金銭的には余裕があったし凛も割り勘にしようと言ったけど問題はラブホテルなんて初めて行く事なんだけど……
勿論凛も初めてらしいが鮎川に聞いてみたら大丈夫、簡単簡単と教えられたので大丈夫らしい。 というよりラブホテルなんて行ったら…… 凛もわかってるのだろうか?
「さ、行こっか? なんかこんな夜中に出掛けるなんてあんまりないから楽しみ! しかも瑛太とだもん」
「本当はこんな夜中に出歩かない方がいいのかもしれないけどな」
「もう! そんなのいいんだって。 せっかく2人きりになれたんだから私は夜中でもなんでもいいんもん! やっと瑛太とイチャイチャできるし」
俺的には伶奈を放っておいて外出てきても大丈夫なのか?と言いたい所だったけど言うだけ野暮だろうな、それにもともと俺が2人きりで会わないかって提案したしな。
「さ、寒い…… こんな寒いのによく歩いて来れたね? しかも結構薄着じゃない?」
「まぁ最初は寒かったけどな、歩いてれば少し暖かくなるよ」
と言っても女は男より寒がりだから体感温度も違うよな。 凛は歩きながらピッタリと俺にくっつき自分が巻いていたマフラーを俺の首に回した。 はっきり言って歩きにくい……
でも凛は寒いだろうと思ってやってくれたんだから何も言えないな、それに凛は暖かいでしょ? と言いたげに満面の笑みを向けてくる。
「ありがとう凛、あったまるよ」
「えへへ、そうでしょ〜?」
凛は更に俺に両手を回し抱きついてきて体を擦り付ける、更に歩きにくくなるけど凛はそんなの御構い無しだ。
「鼻が冷たくて瑛太の匂いが嗅ぎ辛い……」
「歩きにくくないか?」
「むぅ! 私が抱きついてるのにさっきからずっとそんな事思ってたの? ひどーい!」
「あはは、悪い悪い。 あ、あそこか?」
俺が指を指す方向にはジュピターと大きく書かれたホテルがあった。 ジュピターって…… 近づくにつれて少し緊張してきた。 こんな所に来て大丈夫なんだろうか? 俺達まだ高校生だぞ?
「不安なの瑛太? 大丈夫、しっかりエスコートしてあげるよ!」
「まるで行き慣れた人みたいな台詞だな」
「す、鈴菜さんにあれこれ聞いただけだもん! 私だって初めてなんだからね」
「はいはい、じゃあ凛の知識でしっかりエスコートしてくれ」
凛にそう言うと力強く返事をした。 てか何そんなに力んでんだ? まるでこれから1発やるぞみたいな気合を入れていた。 ここでキメるつもりなのだろうか? なんだか更に緊張してきた。
というか男の俺がこんなんで情けないな。凛はしっかりと俺をリードしようとしてくれているけど俺がこれでいいのだろうか?
「あ、雪降ってきたね。 瑛太帰りとか大丈夫? 私はそんなに離れてないからいいけど……」
「積もらなきゃ大した事ないだろ? 今から考えても仕方ないし入ろうぜ?」
「うん!」
入ると部屋を決める電光掲示板があった。 どれにするかと凛は悩んでいたが高い部屋は論外だろう。 俺達そんな高い部屋払える程のお金持ってないもんな、 そしてフリータイムという事でそこそこの部屋を決めてエレベーターに乗る。
「フフッ、瑛太とこんなとこに来ちゃった、なんかいけない事してるみたいで楽しいね!」
俺は逆に緊張しているんだけど? 主にこれからここで何が起こるかで……
「瑛太緊張してる? 実は私も結構緊張してるんだよね……」
んん? 俺と凛は別に何かするとか言うわけでここに来ると決めたわけじゃないけどもう来た時点でそんな事をする雰囲気になっているのか? 俺そういうの本とかDVDでの知識しかないぞ?
「あ、俺何も準備もしてなくて……」
「大丈夫だよ、全部揃ってるんだって!」
「え、何が?」
「えっと、その…… なんていうかそういうの」
そう聞くと凛は歯切れが悪くなる。あ、言い辛い事聞いちゃったな。 そして部屋に入るとお洒落というかアダルティックな雰囲気だ。
「わぁー! 思ってたよりいい感じだね! 部屋も綺麗で広い」
凛は目をキラキラさせて部屋にあるベッドに飛び込んだ。俺はこんな風になってるんだと思い部屋をキョロキョロしていた。 すると凛がこっちにおいでと手招きしているので凛が寝転んでいるベッドに行く。
「瑛太、抱きしめて」
凛がそう言ったのでベッドに寝転ぶ凛を抱き起こした。数分抱きしめていただろうか? 凛は満足して今度は部屋を物色し始めた。 そしてTVのリモコンを見つけたのでスイッチを入れると……
そこにはアダルトな映像が流れていた。喘ぎ声を上げる女と獣のように腰を振る男…… パッと凛を見ると真っ赤になりながらTVに釘付けになっていた。 恥ずかしいのに目が離せない、そんな感じだ。
「り、凛?」
「あ、ああ! 」
俺の呼び掛けに正気を取り戻したのかTVを消した。 そして凛は下を向き静かな沈黙が訪れる。 だけど凛はパッと俺に顔を向けると……
「あ! お風呂! こういうとこのお風呂ってどうなってんだろ?」
凛はバスルームに向かった。 俺もその後に続く。
「わぁ、ジャグジーだ。…… ねぇ瑛太」
「ん? どうした?」
「い、一緒に入らない?」
凛はとても恥ずかしそうに言ったけど俺もいきなりだったからびっくりしたし俺も恥ずかしい。 だけど凛は来た記念にどうしてもと言うので一緒に入る事にした。 お湯を入れ泡の素を入れると次第に風呂が泡風呂になっていく。 自分の家じゃやれないなとそんな事を考えていた。
「瑛太、服脱いで?…… 私も脱ぐから」
何故か向かい合って服を脱いでいく、そしてお互い産まれたままの姿になる。 とても恥ずかしかった。 凛も恥ずかしいのか顔が真っ赤だ。
「じゃあ入ろう?」
俺の手を取り風呂に入る。 さっきも入ってきたばっかりだったけど凛と入るとなると全然違う。目のやり場に困る、凛も同じのようだ……
「え、瑛太」
「ん?」
「わ、私今日瑛太とする!…… したい!」
もうここまで来たんだ。 俺も凛の裸を見た時からこっちもその気だ、凛にばっかりこんな事言わせてちゃダメだもんな。
「ああ、俺も凛としたい」
そして今日俺は凛と心と体も交わった。帰る頃には雪がどっさりと積もっていたけど一線を超えた俺の足取りは何故か軽かった。




