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その65


電車が止まり伶奈の姿が見えた。 そして凛が呟く。


「なんか伶奈ちゃん引っ越す前より綺麗になった気がする」


確かにそうだ、もともと可愛かったのが更に可愛くなったというか…… あっちで相当モテるだろうな。



伶奈は俺達を見つけるとパァっと笑顔になって駆け寄ってきた。



「瑛太君ッ!!」


勢いよく伶奈に飛びつかれた。 来るかもと思い足を踏ん張っていたのでなんとか転ばずに済む。


久し振りだ、伶奈の匂いがする。俺を力一杯抱きしめた伶奈はなかなか離れない。


「瑛太君、瑛太君、瑛太君ッ!」


伶奈泣いてるのか? そうだよな、俺達と違って伶奈は1人だったんだ。 そりゃあ寂しかったよな。 俺は伶奈の頭を優しく撫でた。


「伶奈ちゃん…… まったくもう。 私もいるんですけど?」


「うん、凛ちゃんも久し振り」


涙を手で拭い凛の事も抱きしめる。 凛も会いたかったのか涙ぐんでいる、そして凛も鋭いけど伶奈も鋭い。 凛を見て俺を見る。


「あれ? それって……」


少し伶奈の顔が曇る。 俺と凛のリングを見たからだ。


「ああ、これ? 実は伶奈の分もあるんだ」


「え?」


普通に考えたらおかしいよな…… それは俺も凛もわかってる。なんで凛と付き合ってるのに伶奈の分も用意してるんだってなる。


だけど俺と凛も合意の上で用意してたんだ。 理由はわからない、ただ伶奈は切っても切れないのかそんな不確かな、なんとも言えない……


「ほら、これだよ」


伶奈にリングの入っている箱を渡す。 伶奈はそれを受け取ると胸に当てギュッと握った。


「…… 嬉しい。本当に」


伶奈はとても大事そうに箱を見つめる。俺と凛もそれを見てホッと胸を撫で下ろす。本当なんでだろうな? 俺達の絆みたいなものなのか……


「今付けてみていい?」


「うん、つけてみなよ」


「わぁ、ぴったり!」


凛が伶奈の指のサイズ大体見繕ってたしな。かなり喜んでくれてるようでよかった。 すると伶奈は俺の腕に手を回しぴったりと組んだ。


「あ〜! 私の瑛太なのに!」


「凛ちゃんは毎日瑛太君とイチャイチャしてたでしょ? 確かに凛ちゃんに瑛太君を任せたけど私が側にいる時は私も瑛太君とイチャイチャするもん」


「むぅ〜! 仕方ないなって甘い顔していれば!」


凛はもう片方に回って俺の腕を組む。 だからそれやめてくんないかな? 他人から見られると変にしか思われないから……


「あ、そしたらこれから私の家に行く?」


「うーん、最初は瑛太君の家がいいかな!」


「ぐぬぬ…… そう言うと思った」


そして俺の家に帰る事になった。伶奈がいると昔に戻ったかのような錯覚に陥るのは無理ない。


「伶奈、新しい学校最近どうだ?」


「うん、もうすっかり友達も出来たしとりあえずホッとしてるとこかな」


「伶奈ちゃんモテモテでしょ?」


「あはは、それなりだよ。そっちこそ最近どう?」


「こっちでは大変だったのよ、柚さん入院しちゃうし」


「え? 何かあったの?」


伶奈には朝日奈の事は言ってなかった。せっかく帰ってくるのに心配とか掛けたくなかったから俺と凛は黙っておこうと言っておいたのだ。 経緯を話すとどうして言ってくれなかったのとやっぱり伶奈は言った。


「だって伶奈には心配とか掛けたくなかったし朝日奈も昨日無事に目を覚ましたらしいしな」


「そうなんだ…… でも目が覚めて良かったね、私タイミング悪い時に来ちゃったかと思ったよ」


「ほら、そうなるから私ら黙ってたのよ」


「そっか、2人とも私が気兼ねなく帰って来れるようにしてくれたんだね。あ! そうだ、私からも2人にプレゼントあるんだ」


「え? 何々!?」


「瑛太君の家に行ったらね!」


そして家に着くと俺の部屋に行こうとすると奈々がまたドタドタと俺のもとに走ってきた。


「やっぱり伶奈さんだ!」


「こんにちは奈々ちゃん、久し振りだね」


「うわぁ、伶奈さん前より綺麗になってる」


「なら瑛太君も私を好きになってくれるかな?」


伶奈がドキッとする事を奈々に言う。俺

はどんな反応をすれば良いんだ!?


「こら! 奈々ちゃんを巻き込んじゃダメ! あー、なんかこの感覚久し振り……」


「んー、伶奈さんというか、お兄ちゃんにはどちらも高スペック過ぎてお兄ちゃんが浮いてます」


確かにこんな2人と一緒にいると俺は浮いているかもしれない……


「浮いてても私気にしないもんねぇ。ありのままの瑛太で満足だもん」


「私もどんな瑛太君でも受け入れちゃうよ」


「うわぁ、お兄ちゃん鈍感なままでいた方が精神的に楽だったかもね」


奈々がコソッと俺に呟く。 そうだな、俺にはこの2人を捌き切れるほどタフじゃないしな。


そして俺の部屋に行き伶奈からプレゼントを渡される。 なんだろう? と思い開けてみるとマグカップが入っていた。


「よかったらそれ使って? 凛ちゃんとお揃いなるのは少し悔しいけどね、私からのおめでとうの気持ちもあるから」


「と言う割には瑛太を横取りしようとする気まんまんに見えるのは私だけ?」


「あはは、凛ちゃんに今は任せてるだけって言ってるでしょ?」


「ふん! だったら瑛太は私なしじゃ生きられないようにしてやるんだから!」


おいおい、なんでそうなるんだよ…… 俺を好き勝手したいようだけど俺にも一応人権はあるんだけど。


伶奈と凛もこうして言い合いしてるの見るの久し振りでこれはこれで厄介なのだけどやっぱり懐かしくて思わず笑みが溢れてしまう。


そして少しした頃凛はお昼を奈々と作るからと言って俺は伶奈と2人きりになった。 伶奈は俺に気になってた事があると言った。


「ねぇ瑛太君、こんな事聞くの少し抵抗あるんだけど……」


「ん? 何?」


「もう凛ちゃんとはした?」


「ええ!? 何を?」


「…………エッチ」


消え入りそうな声で伶奈がそう言った。


「いやいや、そんな事まだしてないと言うか俺にはまだ早いってか……」


「え? これだけ付き合ってまだしてないの?」


「う、うん。 そうだけど」


やっぱり俺が意気地なしなのか、凛もよくそう言うし……


「それって…… もしかして私がいるから?」


伶奈の言葉に俺の中で稲妻が走った、俺は俺にはまだ早いと言いながらどこか伶奈への思いがまだあったのかもしれない。 伶奈に今そう問われて感じた。


「フフッ、そっかぁ。 瑛太君ってそんなとこで遠慮しちゃうもんね、私的には少しホッとしたけど、やっぱりどうして私って転校しちゃったんだろってのがあって凄く複雑…… でも私ね今でも、ううん、前よりもっと瑛太君の事が好き」


俺は自分の気持ちに決着をつけたつもりだった。 今でも凛の事が何より大事だ。それは変わらない、だけど俺は…… どっちにしろ2人に不誠実じゃないか。


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