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その63


伶奈が来るし目前に迫るクリスマスどう過ごそうかと思った矢先だった、凛が鮎川から連絡を受けて朝日奈が大変な事になっていた。


そしてその鮎川は珍しく凛にしがみついて号泣していた。 朝日奈は意識不明の重体らしい。 なんでも刺されたそうだ。 新村は気が気じゃないだろう、今も病院で目が覚めない朝日奈を見舞っている。


「柚ったら、おかしいと思ったのよ…… 急に家に来ない方がいいとか言い出して」


「ねぇ瑛太、私達もお見舞い行かない?」


「そうだな、朝日奈とはもう知らない仲でもないしやっぱり心配だよな」


「うん……」


でも身近でそんな事があるなんてな。 凛も相当ショックを受けているようだった。 朝日奈が入院している病院に行き病室を訪ねる。


新村が朝日奈の手を掴んで必死に眼を覚ますように祈っているようだった。 この感じだとずっと朝日奈の側に居たんだろうな……


「柚さん……」


「来てくれたのか。 ありがとう」


「新村、朝日奈はどうだ?」


「ダメだ、全然意識がないんだ……」


朝日奈を見るとただ眠っているだけのように見える。 凛は朝日奈の側に行きもう片方の手を握った。


「柚さん、こんな事になるなんて…… 私柚さんと友達になれたと思ってたのに目を覚ましてよ? 新村君も隣にいるんだよ?」


凛が朝日奈に話しかけるも反応はない。どうしてこんな事になってんだ?


「可哀想だよ柚の奴…… せっかく昔の柵なんて忘れて生きようって思ってた矢先に」


新村は朝日奈の昔の事を話してくれた。俺や凛とはかけ離れた人生を朝日奈は過ごしてきた。 朝日奈はそんな過去を清算したかったんだな。


そしてしばらく朝日奈の所へいたが俺達は帰る事にした。 病院を出た凛は朝日奈の様子が思ったより悪かったので元気がない。


「柚さん可哀想だね…… 新村君も」


「そうだよな。新村の話だと朝日奈も新村とクリスマス迎えられるって楽しみにしてたのにな」


「だけど私達ってただ柚さんが目を覚ましてって思うしかできなくて……」


「だよな、朝日奈の生命力に賭けるしかないなんてな」


今日はとりあえずクリスマスとかどうしようとか言ってる雰囲気ではもはやなく、一旦家に帰る事にする。 すると俺のスマホに伶奈から連絡が来ていた。


確認すると伶奈は26日に来るようだ。 あいつ気を遣ったんだな、俺と凛が一緒にクリスマスを祝えるように。


「凛、伶奈は26日に来るって」


「え? クリスマス辺りに来ると思ってたけど伶奈ちゃんに気を遣わせちゃったかな?って私にも今伶奈ちゃんから連絡来てた」


「そんなとこ伶奈らしいよな」









____________________________________________








「はぁ〜」


今日はクリスマスイヴだ、今頃瑛太君や凛ちゃんはイチャイチャしてるだろうなぁと想像してたら溜息が出た。


「ちょっと伶奈、せっかくのクリスマスなのに溜息なんてついて辛気臭いよ?」


私は美香の家に来ていた。せっかくだから美香がクリスマス一緒に遊ぼうと言ってくれたのだ。 美香には2つ下の弟がいて私も兄弟とかいれば寂しいのも少しは紛れたのかな?なんて感じる。


「姉ちゃんも寂しい奴だよな、クリスマスに誰も祝ってくれる男いないなんて」


「あんた人の事言えんの? てかそれ伶奈に対しても失礼じゃない?」


「伶奈さんはあんまり美人だから逆に出来にくいんだよ」


「あんた何いきなり伶奈の弁護してんのよ?」


「あはは、可愛いじゃない美香の弟。 いいなぁ」


「こいつ照れてるよ、伶奈にそんな事言われて」


「うっせぇ! 伶奈さんからそう言われたら誰だって照れるだろ!」


「惚れるなよ〜? 伶奈にはちゃんと好きな人いるようだし」


「美香! 余計な事言わない!」


好きな人って言っても1度は振られてる人をまだ好きなんて私は見苦しいのかもしれないけど好きなものは好きなのでどうしようもない。


「ねえ伶奈、その好きな人に何かプレゼントでも買ったの?」


はっきり言って私なんかが渡していいのかと思ったけど瑛太君と凛ちゃんにはマグカップを買っていたのだ。 私からこんなの渡されても困るかな?って思ったけどだって2人とも大事な人だもん。


それなのに私も瑛太君と付き合えたらななんて思うのは我慢しなきゃ。 私は側にいてあげられないし……


凛ちゃんに瑛太君の事はよろしく頼むって言ってあるし。 私なんか及ばない仲にもう2人はなってると思うと無性に悲しくもある。 だけどこうなるってわかってたじゃん。私が悶々としていると美香に暗いよと言われた。


「あんたも罪よねぇ。柊ってさ、伶奈の事好きなのよ」


「え?」


ここ1ヶ月以上この生活をしていて柊君がなんとなく私に気があるのかなって気がしてた。 最初の素っ気なさも今思えば意識してくれてたんだなってのも。


だけど私は今柊君よりも瑛太君で頭がいっぱいでそんな気持ちを向けている柊君の事まで考えられない……


「そんな難しい顔しなくたっていいよ、柊だってわかってて好意向けてるだけなんだから」


「う、うん」


「まぁ明後日からあっち行くんでしょ? 楽しんできなよ」


「ありがとう美香」


「なぁんだ、伶奈さん好きな人いるのか。 つまんねぇな、俺が彼氏になっても良かったのに」


「てかあんたまだいたの? 盗み聞きしてんじゃないわよ、しかも何様よ?」


「フフッ、慰めてくれたの? ありがとね」


そう言うと美香の弟は「そんなんじゃねぇし!」と言ってどこかへ行ってしまった。


「さて! 今日はね、伶奈がみんなともっと仲良くなるように私の友達も誘ってるから皆でカラオケに行こう? 伶奈が来るって言ったら皆喜んでたし」


「え? 私聞いてない……」


「サプライズよ! 男はいないから安心しなよ」


そうして美香の友達と一緒にその日はカラオケに行ったり買い物したりしてイヴの日は過ぎていった。



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