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その60


逃げるようにしてトイレの中に逃げ込んだ私はしばし頭を冷やしていた。 ダメだダメだ! こんなんじゃダメだ。 こんなネガティブな思考ばかりしていたら私瑛太君に嫌われちゃうよ。 学校でもぼっちになっちゃう……


切り替えるんだ、友達になれそうな美香だっているじゃない。 卒業するまでこの学校で生活しなきゃいけないんだ、だったら頑張らなきゃ!


私はゆっくりとトイレのドアを開け教室に向かった。






______________________________________________








今日俺の高校に岸本伶奈が転校してきた。 しかも俺の隣の席? 俺は岸本を見た瞬間に一目惚れしていた。


こんなに可愛い子見た事ない。 岸本とさっき仲良くしようとしていた大野も結構可愛い部類に入っていたと思うけど岸本はレベルが違う程可愛かった。


先生に俺の隣の席に座れと岸本が近付いてきた時俺は緊張してついつい素っ気なく対応してしまった、岸本が隣に座ると岸本のいい匂いが香る。


そして岸本は軽く俺に挨拶してきた。 俺はやっぱりそこでも素っ気ない態度になってしまう。 俺は顔が結構いいって言われるけどこの愛想のなさだ。岸本もなんだこいつ?って思ってるかもしれない。


俺の性格は若干根暗だ、皆の中に入るのも得意じゃないし自分からというアピールも苦手だ。 宝の持ち腐れとか言われるけど性格なんだから仕方ない。


授業が終わると岸本の席には物珍しいのか、いや、岸本が可愛いから男女共に群がっている。


俺は寝たふりをして隙間からチラチラと岸本を見ているくらいしか出来ないくらい陰キャだ。 まぁそんな俺にいちいち話し掛けてくるのは同じマンションに住んでいる大野くらいだ。


最初は俺も少しはチヤホヤされたけど次第にこんな性格の俺とはあまり皆も話し掛ける事は少なくなっていた。


まぁ顔が少しはいいって言ってもこんなもんだろうと思っていた。 すると大野も岸本に話し掛けた、相変わらず大野は

人と仲良くなるスキルが高いなと思っているとバシバシと叩かれた。


こいつ余計な事しやがってと思い大野に文句を言うと岸本がその様子を悲しそうな顔をしていて見てたので思わず視線が行ってしまった。


そして岸本はトイレに行ってくると言って教室を出て行く。


「どうしたんだろ?」


「さぁ? 皆寄ってたかってたからウザかったんじゃね?」


「あんたじゃあるまいし。 ねぇ! そういえば伶奈って私達と同じマンションかもよ!?」


「え? マジで?」


「うんうん! 朝見掛けた時そうかもって思っただけだけどね」


「なんだよ、それだけか」


俺はそれに本当にガッカリとした態度を取ってしまったので大野が勘づき俺に意地悪そうな顔で聞いてきた。


「あんたその落ち込み様、もしかして伶奈に一目惚れでもしたの?」


「バカ! んなわけあるかよ……」


図星をつかれたので俺は美香から目を逸らす。 不味い、態度に出てしまった。でももし、大野が言った通りに俺達と同じマンションに住んでたら…… と思うと変な期待が込み上げてくる。


「あんたってわかりやすー」


大野がニヤニヤとして俺にそう言いかけてくる。 これ以上冷やかされるのはごめんなので俺はまた机に突っ伏した。


「あ、伶奈おかえりー!」


どうやら伶奈が戻ってきたようなので大野がまた話し掛けていた。 そして俺が1番気になっていた事を聞く。


「伶奈ってさぁ、あのマンションから登校してきた?」


「え? そうだけど?」


「やっぱり! 私とそこの柊さぁ、同じマンションなんだよね! よかったら明日から一緒に登校しない?」


「え? 柊君も?」


「あいつはいつも1人で行っちゃうけど。 ねぇ! そこで寝たふりしないでどうなのよ?」


また余計な事言いやがって…… でも岸本は大野の言った通り同じマンションだった。でも岸本の柊君も?って反応が気になる。


俺がいると嫌なのかな? それだったらかなりショックだけど。俺は大野に話を振られたので仕方なく身を起こす。


「それがなんだよ?」


こんな風にしか受け返しができない自分が今となっては呪わしい。本当だったら是非一緒に行こうと言いたいのに……


「あんたって本当に不器用だよねぇ」


大野が物凄く呆れた顔でそう言う。 まるで俺の本心を知っているかのように。


「私らさ、同じマンションに住んでるから一緒に明日から登校しない?って話になってるんだけど?」


「美香、柊君嫌がってるんじゃない?」


岸本が慌ててそう言う。 違うんだ、むしろ逆だ! めちゃくちゃ嬉しい事なのに俺は正反対の態度を取っているだけなんだ……


「伶奈、こいつあんな風に言ってるけど本心では喜んでるから」


それはそれで余計な事言うんじゃないと大野を睨むがまったく意に返してない。


「わかったよ…… 行けばいいんだろ行けば!」


こんな所でも俺の正反対の意思は働きつい喧嘩口調になってしまう。 大野はそれを聞いて最初からそう言えばいいのにと言って自分の席に行ってしまった。


そして隣の岸本と更に気不味い雰囲気になってしまう。 大野、ここまでしたんならいっそこの気不味い雰囲気をなんとかしてから行ってくれと思うが。



「なんかごめんなさい、私柊君に迷惑かけるつもりじゃなかったのに」


「え、迷惑? 気にすんなよ」


岸本が申し訳なさそうに俺に謝ってくる。 ごめん岸本。 俺は本当は凄く嬉しいんだ。


「それだったら帰りも同じはずだろ、 大野に言っとくから今日一緒に帰るか?」


俺にしては積極的な意見が出た、多分岸本が申し訳なさそうにしていたからだ。


「え? …… じゃあそうしよっかなぁ」


岸本は少し迷い俺にそう言った。 やった、言ってみるもんだな。そしてその後授業が始まったが隣の岸本を気にしていたのでその日の授業はいつにも増して頭に入ってこなかった。



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