その59
賑やかだった椿先輩の家でお昼をご馳走になり帰りの電車で今日は俺の家に行きたいと凛が言っているので連れて行く。
着くと早速奈々が迎えに出た、そして俺と凛は部屋に行き一息つく。
「伶奈ちゃん、今頃どうしてるかなぁ?」
「まだ移動中かなぁ?」
俺と凛は窓の外の景色を眺めた。
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瑛太君と凛ちゃんと別れ私は車に揺られている。知っている風景をどんどん通り過ぎ見知らぬ土地に入っていく。
こんなに離れちゃったらなかなか会えないね…… 私は過ぎ去る景色を見る度に気持ちが沈んでいった。
「伶奈、寂しい思いさせてごめんな?」
お父さんがそう言ってくれる。だったら引っ越しなんてしないでよと言いたいけどもう何もかも過ぎた事、今更どうしようもない。
この話が出てからというもの、私は両親と少しギクシャクしていた。 だってそうでしょ? 住み慣れたとこを離れ知らない場所でやっていくなんて。
でも私の都合で世の中回っているわけではない。どうにもならない事なんだ、私のワガママなんて通じないってわかってる。 だけど寂しいよ……
そして数時間経ち新しいマンションに着いた。 荷物はもうマンションの中に届いているので荷解きをする、私は新しい部屋に荷物を持っていき段ボールを開ける。 先週行った遊園地の時の写真や文化祭、クラスのみんなが私のために作ったアルバムなどを見てまた涙が溢れてくる。
「瑛太君、凛ちゃん、やっぱり寂しいよぉ……」
そんな言葉がポツンと出た。 私って2人の中から弾き出されたみたいに感じてしまってとてもやるせない気持ちになってしまう。
だけどこのままでいたって何も始まらないので私は力なく荷物を取り出し部屋に並べていく。 ふと鞄を見ると前にデパートで買った仲良しの印とお揃いのキーホルダーが見えた。
瑛太君、凛ちゃん、今頃どうしているんだろう? 連絡を取るのは簡単だけど……
私は更に寂しくなりそうで手が止まる。
その後少し遅い夕飯を取りお風呂に入って寝る事にした。 こんな気持ちで明日から新しい学校なんて…… ワクワクも何もない。 ただただ不安で上手くやっていけるんだろうか? 瑛太君や凛ちゃんに会いたい、前の住んでいた所に戻りたい、そんな気持ちばかりだった。
そしてあっという間に朝になり前の高校の制服のままで新しい学校へ登校する。 新しい学校の制服はあと数日かかるので仕方ない。
嫌がっていた私に少しでも負担を掛けたくなかったのか私の両親は歩きで行ける距離の場所を選んでくれた。
そして初めての通学路を歩く。 周りには私が新しく通う学校の子等が歩いているのかな? たまに見慣れない私の事をチラチラ見る視線を感じる。
なんか本当に知らない所に来たように改めて感じる。まぁそんなんだけど……
そして学校に着き職員室に行きもろもろの説明を受け自分のクラスとなる教室に先生と向かう。
やっぱり緊張するな、新しいクラス。 上手く馴染めるといいけどな。
先生が教室の扉を開け私もそれに続く、
私が入ると一斉に私に視線が刺さる。こういうのはやっぱり慣れないな……
「みんな静かにしろよー! 今日からこのクラスメイトになる岸本だ、軽く自己紹介してくれないか?」
「岸本伶奈です。これからよろしくお願いします」
とても簡単に済ませてペコリとお辞儀した。 するとクラスの男子が少し騒ついた、 私の自己紹介やっぱり素っ気なさ過ぎたかなと思った。
「えー、超可愛いじゃん!?」
「本当だ、アイドルみたい」
「男子って本当に単純よねぇ」
そんな言葉が飛び交った。なんだ、自己紹介が悪かったわけではないのかと私は少し安堵した。
「おら、お前ら静かにしろって言っただろ! それと席は柊の所空いてるんだからもうそこに決まってる。 岸本、あそこの空いてる所がお前の席だ」
「あ、はい」
見ると廊下側の1番後ろの席だった。
そして私はその席に座る。 一応周りの人達によろしくと小声で呟きながら。
隣の柊君という男子は私が隣に来るとチラッと私を一瞥し視線を前に戻した。結構柊君ってイケメンなんだなぁと思い隣なので柊君にも挨拶する。
「あ、あの、よろしくね?」
「ん、ああ、よろしく。 俺は柊 健斗」
そして最初の授業が終わり一息つこうかと思っていたら私の周りに男子や女子が集まってきてしまった。
「ねぇ岸本さんって超可愛いよね! 前の学校でかなりモテてたでしょ?」
「俺、彼女募集中だからもし彼氏いなかったら俺と付き合わない?」
「バカじゃない? 転校してきたんだからいるわけないでしょ?」
「マジ? 前の学校とかでいなかったの?」
などなど好き勝手言い放題に言ってくる。もともと私はそんなに明るいタイプでもないし男子と積極的に話をするなんてのも瑛太君くらいだったから圧倒される……
「ちょっとちょっと! 岸本さん質問責めで困ってるでしょ? とりあえず自己紹介! 私は大野 美香、よろしくね! 美香でいいよ?」
「あ、よろしく。 じゃあ私も伶奈でいいよ」
「よしよし! 伶奈さぁ、通学中から目立ってたよ?」
「え?」
「通学路私と同じなのかな? 伶奈かなり可愛いから今朝歩いてる時からどこの誰だろ?って噂されてたし」
「え、そうだったの?」
チラチラ視線感じたのはそれだったのかぁ。 可愛いなんて言われたって…… そんな言葉は瑛太君から聞きたかったな。 なんて思っていると。
「どうしたの伶奈? 明後日の方なんて向いちゃって。 もしかして前の学校で好きな人でもいた?」
「ううん、そんなんじゃないよ」
私は図星をつかれたので笑って誤魔化した。 隣の柊君から視線を感じたのでチラッと見ると柊君は寝ていた。 気のせいかな?
「ああ、柊ね、こいつってイケメンなんだけど愛想ないからねぇ、もっと陽気なキャラだったら結構モテるのにさ」
とバシバシと美香は柊君の頭をバシバシと叩くと柊君はその手を振り払い怪訝な顔をして美香を睨んだ。
「あんだよ? うるせぇな」
「起きちゃった? ごめんあそばせ」
そんなやり取りを見てると私は最初の頃凛ちゃんに言われて瑛太君を起こした事を思い出して急に胸が張り詰めるような感覚に陥った。
なんだろう? 今すぐ瑛太君と凛ちゃんに会いたい…… 凄く寂しい。 ダメだ、油断してると泣きそうになる。 私はちょっとトイレと言ってその場を離れる。
「瑛太君……」
まだ離れて間もないせいか私はとても寂しくて仕方なかった。 今の私には高校生活なんて早く終わっちゃえばいいとしか思えなかった。




