その57
そして凛の家で伶奈と今後どうするか俺と凛は考えていた。
「やっぱり私伶奈ちゃんに何かしたい!」
「そう言っても今から何ができるかなぁ? まともな事出来る時間もなさそうなんだよなぁ」
「だって伶奈ちゃん急過ぎるんだもん、水臭いよ、友達だよって言ってたのに」
まぁそれは伶奈も怖くて言えなかっただもんな。 だけど俺も何かしてあげたいのは一緒だし、このままお別れなんて言われるのは寂し過ぎる。
「よし! 明日3人で遊園地行こう?」
「いや、持ち合わせがないんだけど……」
「実は私もなんだよね」
「どうすんだよ?」
「だ、大丈夫、一応アテはあるんだ」
そう言いながら凛は少しオドオドしている。誰に頼むか知らないけどあまり頼りたくなさそうだ。そんなのアテと言えるのだろうか?
次の日振替休日で休みになっている。 そして凛が言った通り3人で少し離れたとこの遊園地に行くために俺が支度をしていると……
「あれ? お兄ちゃんどこかお出掛け?」
「ああ、凛とちょっとな」
「凛さんと仲直りしたの?」
「いや、別に喧嘩とかしたわけじゃないし、それに俺は凛と付き合う事にしたから」
「え!? そうなの? へぇ〜」
なんだこいつ? あんだけいろいろ言ってたくせにいざ付き合ったとなるとこの素っ気ない態度、よくわからん。
「で? 伶奈さんは弄んで終わり?」
「人聞き悪いな。 弄んでないし伶奈は転校する事になったんだ。 だからせめてそれまで伶奈に少しでも楽しく過ごしてもらいたいって思ってるんじゃないか」
「伶奈さん転校しちゃうんだ!? お兄ちゃんにはもったいない人だと思ったらやっぱり離れちゃってくのね」
「どんな理屈だよそれ?」
なんて奈々とあんまり意味のない会話をしてる場合じゃなかった、支度しないとと思っているとインターホンか鳴った。奈々がはいはーいと玄関に向かう、すると奈々が凛の手を引いて俺の所へ戻ってくる。
「お兄ちゃん、噂をすれば愛しの凛さんだよ?」
「え、凛? わざわざ俺の家に来たのか?」
「わかってないなぁ、お兄ちゃんは。早くお兄ちゃんに会いたくてわざわざ来てくれたんじゃない、ねぇ凛さん?」
「えへへ、奈々ちゃんは上手いなぁ」
凛が奈々に顔をスリスリさせて喜んでいる。 こいつらいつも息ピッタリだな……
というか凛のアテって結局なんなんだ?俺お金まったくないのに大丈夫なのか?
「あ、瑛太、準備できたね? そろそろ行こう? もう来ちゃってるかもしれないし!」
そうして凛と電車に乗り凛の家の駅まで行く、すると見覚えがある3人組が……
そう、朝日奈と新村と鮎川だった。 もしかしてお金の都合ってこいつらか!?
凛を見ると若干気まずそうな笑みで俺に微笑みかけている。
「ほ、本当は鈴菜さんに頼んだんだけど……」
「あ、ああ。 なるほど……」
俺はどういう事かようやく理解した。そして一旦電車から降り俺と凛は朝日奈達の所へ行くと……
「やるじゃない凛ちゃん、私をアテにするなんて」
「ごめんね、凛ちゃん。 私でも良かったんだけどどうせなら柚にも教えてあげたくてね。 もう凛ちゃんと柚も知らない間柄じゃないしね!」
つまり鮎川に頼んでその鮎川が朝日奈に頼んだのか。 すると朝日奈が財布を取り出し凛にヒョイっとお金を渡した。が、その額はなんと10万円だった…… やりすぎだろ朝日奈…… バイトダメな俺達に返せるのかそれ?
「ゆ、柚さん、額がちょっとおかしいよ!? 明らかに遊園地で使う額じゃないよね!?」
「え? そうなの? 」
「おい柚、だから羽振り良すぎなんだよお前は。 ドン引きしてんじゃねぇかよ、せめて半分にしろって」
「ん〜、啓ちゃんがそう言うなら…… じゃあはい! 返さなくていいからね! 伶奈ちゃんしっかり慰めてあげてね」
「え、悪いから返すよ。 少し時間掛かるかもしれないけどいいかな?」
「いいよいいよ、私のお金少しでも人の役に立つならね! じゃあ私らこれでバイバイするね、行こう啓ちゃん、鈴菜」
「柚、ここでバイバイしてどうすんだよ? 俺達も一緒に乗って戻るようだろ?」
新村はそう言っていたが朝日奈がたまには違う場所で遊びたいって言って聞かないので残る事にした。 朝日奈ってちょっとアレな印象だったけどいいとこあるよな。
そして次の電車に乗り伶奈が待っている駅に着く。 伶奈の姿が見えた、こちらを見つけてニッコリ微笑んで手を振っている。学校では毎日会っていた、休みの日も遊んでいた、俺を好きだと言ってくれた、そして俺は凛を選んだがこれからも友達だと言ってくれた伶奈がもう少しで転校するって思うとなんだか急に悲しくなってきた。
「瑛太、悲しいよね? 私もだよ、でも今日はそんな顔伶奈ちゃんの前であまりしないようにしよう? 伶奈ちゃんだって気を遣っちゃうよ」
凛が俺の表情から察したのか心配してくれている。 凛の言う通り今日は悲しい気分に伶奈をさせちゃダメだよな。 せっかく凛も伶奈を楽しませようと思ってるんだから。
「瑛太君、凛ちゃん、今日は誘ってくれてありがとね! それと凛ちゃん、これから瑛太君をよろしくね? 後…… 話は瑛太君から聞いてる?」
「うん、瑛太の事は任せて。私今まで伶奈ちゃんとは張り合ってばかりで…… 伶奈ちゃんはそれでも瑛太や私の事を」
「あはは、私だってそんなに出来た人間じゃないよ。 ね? 瑛太君」
そう言って伶奈は俺の腕に抱き付いてきた。 ってこんな事して大丈夫なのか? と恐る恐る凛を見ると若干引きつった笑顔を見せている。
「い、いいよ、だって伶奈ちゃんだしね!」
「じゃあキスも大丈夫だよね?」
「だ、ダメだよ! 調子に乗らないで!」
さっきまで凛は俺にあんな事言ってたくせに自分から潮らしくなりしっかり伶奈に気を遣わせてしまっている。 だけど今ので緩んだのか凛も自然に接している。 本当にこんな時でもそんなとこは伶奈らしいな。
「てかいきなり遊園地だなんて私お金持ってないけど大丈夫なの?」
伶奈がそう言うが本当にその通りだよな。 朝日奈がお金を貸してくれなかったら無理だったもんな。
「大丈夫! 私が全部払うから大船に乗ったつもりでいてね!」
それは朝日奈のお金だろと俺は心の中で突っ込む。 でもいきなりだったけど早いうちから伶奈ともわだかまりもなく打ち解けられた。 それはいろいろあったけど変わらずに接してくれる伶奈と凛のお陰だな。
そして遊園地に着き俺達はいろんなアトラクションに乗りいっぱい写真を撮った。 伶奈も楽しそうに笑っていた。 そしてふと伶奈は俺と2人で観覧車に乗っていい? と凛に聞いた。 凛は乗ってきなよと俺と伶奈を送り出した。
観覧車に俺は伶奈と一緒に乗る。そして動き始めた観覧車で……
「瑛太君、今日は本当にありがとね。 凛ちゃんにもそう伝えなきゃだけど」
「ああ、昨日凛がいきなり3人で遊園地行こうってなって今日だからな、いきなりでごめんな」
「ううん、とっても嬉しいよ。 私の為にしてくれたんでしょ? 私瑛太君や凛ちゃんと友達になれて…… 瑛太君を好きになって本当に良かった。今までの事やこうなった事もまったく後悔してないよ? ただ私別れるのが辛くて…… こんなに私の事を想ってくれる人達と離れたくないよ」
伶奈は我慢してたんだろう、抑えていた気持ちが溢れ出すように伶奈は涙を流した。 凛ごめんな。 少し伶奈を励ましてあげたいんだ…… 俺は伶奈の隣に座り伶奈を優しく抱きしめた。
「え、瑛太君……」
「いいよ、凛には後で俺が怒られるから。だから我慢しなくていいんだ伶奈」
そして伶奈は俺の腕の中で声を上げて泣いた。 思いっきり泣いて少しスッキリしたのか観覧車が1番上が過ぎた頃。
「これ以上は凛ちゃんに悪いから……」
伶奈はそう言い俺の腕から離れる。
「転校しても私の事忘れて欲しくないな」
「忘れるわけないだろ? 伶奈だって言ってただろ、俺達友達だって」
「うん、私高校卒業したらまた瑛太君達の所へ戻ってきたい。今は凛ちゃんに瑛太君を任せるけど私まだ瑛太君の事やっぱり好き、だから私もっと瑛太君にとって魅力的になるよう頑張ってやるんだから! その時また凛ちゃんと勝負したいな」
そう言って伶奈はとびきりの笑顔を見せてくれた。 伶奈は今でも十分魅力的だよ…… 本当に伶奈って強い子だな。俺こそ凛や伶奈をがっかりさせちゃいけない。
観覧車を降りその後も俺達は遊び夕飯を食べて終電近くまで一緒にいた。こういう時の時間はあっという間に過ぎるものだ。 伶奈は観覧車の後も明るく振る舞い俺達と別れ、俺と凛も帰りの電車に乗った。
「ねぇ瑛太、観覧車乗った時ちゃんと伶奈ちゃんに優しくしてあげた?」
「え? わかってたか?」
「そりゃわかるよ」
「ああ、俺なりに励ましたけど……」
「いいよ、私瑛太の事信じてるし伶奈ちゃんの事も信じてるもん。だって友達だもん」
凛はそう言い静かに俺の肩に身を寄せた。




