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その51


そしてその週の週末、伶奈から一緒に出掛けようと誘いがあった。今日は学校休みだしそろそろ約束が迫っているのに伶奈は凛も一緒にねと言っていた。 そこいら辺が未だによくわからないが。


「お待たせ! 瑛太君、凛ちゃん!」


「なんなの急に? 3人で遊びたいって。怪しい〜」


凛が怪訝な顔をして伶奈を睨むが伶奈は全く気に留めず俺と腕を組み行こうと促した。


「ちょっとぉ! シカトすんな!」


「あはは、凛ちゃんもさぁ!」


伶奈はもう片方の腕で凛と腕を組んだ。なんか今日の伶奈はいつにも増して明るいな。 この前のはなんだったんだ?と思わせる。


「でも確かにどうしたんだ? 急に」


「だってほら、私言ったじゃん? 3人とも仲良しになりたいって! それに瑛太君にはこの前困らせたお詫びもあるし」


「この前困らせたお詫び? 瑛太、一体伶奈ちゃんに何困らされたの?」


伶奈が余計に怪しむような発言をしたので凛は俺の顔を覗き込む。あの時の事は流石に言えないな。


「いや、特に大した事じゃないよ」


「ふぅん」


凛が俺と伶奈の顔を交互に見る、これはやっぱり怪しいと思っている態度だ。

それにしても女2人に俺1人で街を歩いているとどうもバランス悪いんだよなって思うけど誘う奴も他にいないし……


「え、あれって……」


凛が何か見てキョトンとしていた。 俺もその方向へ視線を向けると朝日奈と新村らしき人物がイチャイチャしながら歩いていた。 朝日奈が一方的にイチャイチャしているんだけど。


こちらが凝視していたので朝日奈達も気付いて朝日奈は若干顔をしかめたが目が合ったので新村と一緒にこちらに近付いて来るのでなんなのか身構えてしまう。


「こんなとこで会うなんて奇遇だね、相変わらずあんたら仲良いわね!」


「柚さんこそ凄くいい感じに見えるけど?」


「そうなの! 啓ちゃんようやく私に落ちてくれたの!」


「何が落ちてくれただよ? 柚と付き合うのは相変わらず大変なんだよ」


「啓ちゃんったら照れちゃって可愛い」


どうやらこの2人は晴れてカップルになったようだな。新村も前は本当に朝日奈に嫌そうな顔を向けていたのに今は満更でもなさそうだ。 てか新村前より女っぽくなってるのは髪伸びたせいか?


「じゃあ私達2人の邪魔にならないようにどっか行くね、行こう? 瑛太君、凛ちゃん」


「待って!」


朝日奈が伶奈を呼び止めた。ぶっちゃけ俺らウザいと思われてるような態度だったのになんだ?


「凛ちゃん、この前はありがとうね。凄くいい加減な励まし方だったけどお陰で啓ちゃんと上手くいったし」


「わ、私そんないい加減だったかな? 結構一生懸命だったんだけど」


「あはは、冗談冗談。 お礼に何か奢らせて? もう少しでお昼でしょ、何か食べない?」


「え? 悪いよそんな」


「私お金持ちだから大丈夫!」


そう言って朝日奈は俺達に昼食を進めてきたが断るにも特に理由はないのでそうさせてもらう事に決めた。


俺はもう1人男が増えて良かったなって思ったけど新村はどう見ても女にしか見えないので孤独感が上乗せされただけだったようだ。


と言うより新村とイチャイチャしている朝日奈は女とイチャイチャしているようにしか見えないので危ない関係に見えてしまっているのは大丈夫なんだろうか?


朝日奈はどうせだったら高級レストランで食べたいと言っていたが新村に強く止められ普通のファミレスになった、どんだけ金遣い荒いんだ朝日奈は?


凛は少し朝日奈と仲が良いようで朝日奈とちょくちょく話している。 朝日奈結構キツい感じなのにいつの間に……


昼食を済ませ、朝日奈達と別れ俺達はデパートに行き映画館で映画を見たり伶奈と凛が服を見たいと言ってそれに付き合ったりしていた。


2人とも俺にこれ似合う?っていちいち聞いてくるので忙しかったが伶奈と凛なので嫌とは思わなかった。奈々だと面倒なんだけどな。


そして小物売り場で伶奈が俺と凛と自分にお揃いのキーホルダーを買った。


「これ、仲良しの印! 私達ずっと友達でいたいね」


「伶奈ちゃん急にどうしたの?」


「……だってもうちょっとしたら文化祭でしょ? でもどっちかになったとしても」


「言いたい事はわかった。私はその時になるまでよくわかんないけど伶奈ちゃんが思ってるより私は伶奈ちゃんの事友達だって思ってるよ」


こんな会話になると俺は少し耳が痛いな、だって俺は2人のうちどちらか選ばないといけないから。でもそうしないと伶奈と凛も先に進めないんだ。だけどまだどちらの方が好きなのかも俺はわからない……


「あ、ごめん瑛太君、こんな事言ったら気不味くなるよね?」


「あ、いや、気にすんなよ」


「そうだ瑛太、プリクラ撮ろう? 私達3人で!」


そして俺達はプリクラを撮り今日は帰る事にした。伶奈と駅で別れ俺と凛は一緒の電車で帰る。


「なんか伶奈ちゃんの様子おかしくなかった?」


「凛もそう思うか? 確かにちょっとおかしかったな」


「伶奈ちゃん凄く焦ってるみたいだった。なんなんだろう? あ! 瑛太の気持ちが私に傾いてるとか思ってるのかな!?」


凛が俺に試すようにそう聞いてきた。 だけどどっちかなんて決められないでいる俺をすぐに凛は見抜き溜め息を吐いている。


「なぁんてね……」


「ごめんな凛、俺って卑怯者だよな。どっちにも良い顔してどちら付かずなんてな」


「あはは、そんなに落ち込まないでよ? 私が瑛太の事卑怯者なんて思うわけないじゃん?」


「俺をそんなに気遣ってくれなくていいよ、凛や伶奈の方が精神的に辛いもんな」


「……瑛太。 ねぇ、今から瑛太の家に寄ってっていい? どうせ明日も休みなんだし」


「なんか前も同じ事あったな……」


「大丈夫! 変な事しないから」


「女の口からそんな言葉出てくるなんてな」


「あはは、普通逆だよね」


凛は純粋に俺が落ち込んでいると思ったのか俺の家に来て俺とお喋りをして奈々とも遊んでやってくれている。そして帰る頃になると……


「瑛太、本当にあまり気にしなくていいよ? 私今まで瑛太に決断を迫っていて瑛太にとってそれって苦痛でしかないよね?」


「でも凛にとっても今の状態は苦痛だろ?」


「そうじゃないって言えば嘘になるけど伶奈ちゃんと私の事で瑛太がそこまで悩んじゃうのはなんかね…… それも嫌だっていうかなんていうか、もっと純粋にピンと来た方を選んで欲しいって。言っててなんか私もよくわかんなくなっちゃった」



凛が言おうとしている事はわかるんだけどそんな感じで選んじゃっていいのかって思ってるんだが……


でも考えると俺も難しく考えすぎてたのかもしれない。俺はどちらか選ばなかった方はどうすればいいんだとか考えてばかりいた。 そんなんじゃまともに答えなんて出せるはずないもんな。


「凛ありがとう、少し気持ちが軽くなったよ」


そう言った俺は凛を抱きしめていた。そうしたくなったからだ。自分も悩んでる癖に俺を励まそうとした凛を抱きしめずにいられなくなったんだ。


「え、瑛太?」


「あ、なんか急に凛を抱きしめたくなって……」


「ん、えへへ。そっかぁ」


そして凛は微笑み俺を力一杯抱きしめ返してくれる。 そうだった、凛はいつでも俺が困ると助けてくれたんだ。



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