その46
「瑛太一緒に寝よう?」
「ダメよ、瑛太君は私と寝るの」
俺がベッドに入っていると2人がまた口論を始めた。 仲悪いようで仲が良いのかもしれないな、ここまで来ると。
「じゃあ、私と伶奈ちゃんが一緒に瑛太の隣になれば文句ないでしょ?」
「うーん、それならまぁいいかな」
「おいおい、この狭いベッドに3人とか正気か?」
「じゃあ瑛太君は何かいい解決法でもあるの?」
「…………」
「ほら、瑛太も何も思い浮かばないんじゃん、じゃあ決定!」
そう言って伶奈と凛は俺のベッドの中に入ってきた。 マジで狭い、身動き取れないしベッドの外側の凛なんか弾き出されそうだ。 伶奈も隅だからかなり狭いだろう。
だが2人はそんな事ものともせずに俺にくっついている。 これじゃあ寝返りひとつとれない。 それに腕に2人の胸が押し付けられている…… これじゃあ気になって寝れない。
「なぁ2人とも、無理しなくていいんだぞ?」
「全然無理なんかしてないよ? この方が瑛太に密着できるし!」
「珍しく凛ちゃんと意見が合ったね。 私も同じく」
「マジかよ……」
そして2人にサンドイッチされて俺は悶々としていた。 あれ? なんか天から声が聞こえてきた。 なんだろう?
耳を澄ませて聞いてみる。
「……なせ」
「ん?」
「離せ! この変態!」
気がつくと俺の目の前には奈々の顔があった。 物凄く真っ赤な顔をして目は若干潤んだ奈々の表情……
なんと今までのは夢で俺は奈々をいつの間にか抱きしめていたらしい。
「このバカ! さっさと離せロリコン!」
俺が慌てて手を離すと奈々もすぐにベッドから避難した。
「何してんのお前?」
「こっちの台詞だ! なかなか起きないから起こしてやろうと思ったらいきなり妹を抱きしめて……」
「あー、夢のせいだ。悪い」
「一体どんな夢見てたのよ!? 発情期なの? この変態!!」
「だからごめんって! じゃなかったらお前を抱きしめるなんて事ないだろ?」
「マジで鳥肌全開なんだけど…… 最低!」
「で、何しにきたの?」
「お母さんとお父さんもう仕事行ったから朝ご飯作ってあげたから呼びに来ようと思ったんだよ! なのに犯されるとこだった、実の兄に!!」
「そうだったのか。てかそんな事するはずないだろ! まったく……」
「いいからさっさと食べろ! そして死ね!」
勢いよくドアを閉め奈々は出ていった。寝ボケてたとはいえ悪い事したな。 奈々だからあれくらいで済むものの……
リビングに行くと奈々が用意した朝食が出ていた。 あいつあんなん言ってたけどいい妹だよな、しっかり俺の朝食用意してくれるし前も伶奈と凛来た時助けてくれたし。
夏休みも終盤になり今日は俺も出掛ける予定ないし奈々もゆっくりしているようだし家には俺達だけか。
奈々には後でちゃんと謝っておこうと思いトイレに向かった。トイレに入る瞬間LINE来たので誰だろう? と思いドアを開けると悪い事は重なるように奈々が入っていた。
用をしている奈々は突然の出来事にポカンとした顔になっていたが徐々に怒りと恥ずかしさのあまりなんとも言えない表情に変わっていく。
「な、奈々、なんで鍵かけてないんだ?」
「ドアの所に書いてあるだろッ!!」
ドアを見るとドアノブの下に張り紙があった。 鍵故障中と書かれていた、スマホを操作しながらドアを開けたので全く気付かなかった……
「ほ、ほんとだ……」
「いつまで開けてんのよ!? てかこっち見るな! ドスケベ! 閉めろバカ!!」
「ごめん!!」
バタンとドアを閉めた。 するとドア越しから奈々の怒りの声がした。
「お母さん帰ってきたら言いつけてやるからね!」
今日は厄日か? 何をやってもなんか奈々を怒らせるような気がしてきた。昔はよく風呂とか一緒に入っていたがもう年頃だもんな……
これは完全に嫌われたかもしれない。 リビングにいると奈々がやってきて軽蔑の眼差しを俺に向けていた。
「な、奈々まだ怒ってる?」
「妹とはいえ、抱きついたりトイレしてるとこ見てよく言えたわね?」
「ワザとじゃないんだ、ただ運が悪かった」
「お兄ちゃんどんだけ運悪いんですかー? 前お風呂入ってる時も勝手に開けるし年頃の女の子の裸見るなんて最低なんですけど? それにさっきはトイレも……」
「重ね重ねすみません……」
「罰として1000円」
「え? 金払うの?」
「どう見ても軽い罰だよね? 文句ある? JCのトイレとか裸見て1000円だよ? こんなに優しい妹いますか?」
「いません。 払うから許してくれますか?」
「ならよろしい」
そして俺は奈々に謝罪の金を払うと奈々は乱暴に受け取った、でも許してくれたようで盛大な溜め息を吐いて言った。
「そんなんだから凛さんと伶奈さんの関係も拗れるのよ! 」
「え? それってなんか関係ある?」
「大アリよ! 凛さんと伶奈さんに何か間違いを起こしそうだし」
「そんなまさか」
「いいえ、そもそも今の状態が間違いだらけなんだから少しは自覚しなさい!」
「してるからこれ以上何も起きないように気を遣ってるよ」
「へぇ、お兄ちゃんに気を遣える気なんてあったんだ? そっちのが驚き」
「なんだよ? 俺だってそのくらいできるさ」
「そんな人が妹のトイレの最中にドアを開けるのかな?」
グッ…… 地雷を踏みそうなので反論出来ない。 というより何を言っても奈々に勝てる気がしない。
「ほうら、何も言えないじゃない。 なんで私がお兄ちゃんに説教しなきゃいけないんだか」
「そういう奈々だって…… あ、やめとこ」
「なんですって? そういう私だってそんな経験ないくせにって言おうとしたでしょ!?」
「いえ、滅相もございません」
「私、お兄ちゃんみたいに鈍感じゃないから!」
そう言って奈々は自分の部屋に戻っていった。 ふぅ、2度あることはなんとかって言うから今日はあと奈々を怒らせないようにしないとなぁ。
なんだかあいつも大人になったな、昔はよく俺にベッタリくっついて歩いてきたのに今じゃ若干ウザがってるくらいだしな。
俺は奈々にまだ昔みたいな子供な感情を持っていたけどそれは奈々に対して失礼なのかもしれない。
そんなこんなで俺と奈々の夏休みの1日は過ぎていった。 そうそう、タイミング悪く俺にLINEを送ってきたのは凛だった。
買ってきた服を着て俺に見て欲しくて送ったのだ。だけど奈々といろいろあって既読スルーな状態で止まっていた。
2時間くらいスルーしていたが返さないと後々言われるのは目に見えていたので謝罪をしながら似合ってるねと返した。
するとやはり今まで何をしてたのかとしつこく聞かれた。




