その42
そして翌日体育祭になった。
今日は体育祭メインなのでこの日は体育祭が終わり片付けが済めば学校はそれで終わりとなる。 そこだけは嬉しい所だ。
「瑛太君、今日は頑張ろうね! 昨日は私がいない間にたっぷり凛ちゃんと遊んだでしょ?」
「……う、そこに突っ込まれるとなんとも言い辛いな」
「あはは、凛ちゃんはライバルだしね! でも私も瑛太君には遠慮しないでどんどん攻めるからね」
「伶奈ちゃん、隣に私がいるんだけど?」
「だって昨日は凛ちゃんは瑛太君を独り占めにしたでしょ? 私も瑛太君が欲しいし!」
「ダメ! 瑛太は私のなの!」
2人とも俺の両手を引っ張っているが凛が思いっきり引っ張った。
「きゃあ!」
「うわっ」
「わっ!」
凛を下敷きに俺が凛に倒れその上に伶奈が倒れた。
「お、重い……」
1番下の凛が呟いた。
凛と伶奈の柔らかい体にサンドイッチされた俺は凛の胸に顔を埋められ頭には伶奈の胸が当たる。 ていうか息が出来ない。
「もぉ、凛ちゃんバカ力出しちゃって……」
伶奈が体を上げ俺もようやく息が出来た。
「はぁ、苦しかった……」
「ちょっと瑛太! 私の胸に顔を埋めてたくせに苦しかったが感想なの?」
「だって思いっきり密着してたから息出来なかったんだよ」
「えへ、瑛太君に胸押し付けちゃった」
「伶奈ちゃん! さりげなくそんな事瑛太にしないでよ!」
「不可抗力だもん、仕方ないじゃん? ねぇ、瑛太君」
俺を挟みきゃーきゃー言い始めた。 これは辛い、精神的にこちらもガリガリ削られるけど自分が蒔いた種なので俺は2人の仲裁に入った。
「それより2人とも、そろそろ開会式の時間だから行こうぜ?」
「はぁ、開会式なんてどうでもいいのに……」
「あ、私実行委員だから先行ってるね!」
「まったく油断も隙もないんだから!」
多分伶奈もそう思ってるよなんて言えないから突っ込まないでおこう。
そして開会式が終わり競技がスタートした。
最初は障害物競走が始まった、そして俺の番が来た。
「瑛太ーッ! 頑張れぇ!」
「瑛太君! 怪我しないでねぇ!」
横から伶奈と凛から応援が聞こえる。 こんな時は注目されるからやめて欲しいけどもうやるしかないよな……
そしてスタートした。5人並んでスタートし最初は俺がトップになった、チラッと横を見ると橋本の姿が見えた。
橋本も俺に頑張ってと目で訴えてるような気がした。 そしてハードルを越え跳び箱なども順調にこなして網を潜る所まで来た。
潜り終わるが2番手になってしまった、そしてそのまま覆る事なくゴールした。
真ん中くらいを目指していたから悪くないかな。
「瑛太! お疲れ様、かっこよかったよ!」
「うん、瑛太君惜しかったけどおめでとう!」
伶奈と凛にそう言われるとなんか嬉しくなってくる。 1位取れたらもっと喜んでくれたかな? 橋本をチラッと見ると橋本も笑顔で返してくれた。
そしてしばらくすると障害物競走も終わりキャタピラレースも終了し、二人三脚になった。
橋本がバインバインと大きい胸を揺らして俺の所に走ってきた。 相変わらず胸でかいなぁと思っていると後ろから凛に小突かれた。
「瑛太! 少しは緊張感もってよね? また橋本さんの胸に見惚れて! わ、私の胸だったらいつでも貸すのに……」
「瑛太君さっき私と凛ちゃんの胸を押し付けられてたのに……」
「あ、そんな見惚れてないって! イメトレに集中してただけだって」
「広瀬君、よ、よろしくお願いします!」
橋本はかなり緊張しているようだ、この調子だと開幕直後に転びそうだ……
「橋本、何もそんなに緊張する事ないって。 俺達がビリになってもあんま響かないから安心してやろうよ?」
「で、でもビリだと私より瑛太君が恥ずかしい思いしそうで」
「大丈夫だって、俺そんなに期待されてないから。 ビリでも俺だし当たり前か程度にしか思われないと思うし」
「瑛太君、私達は瑛太君達を応援してるからね!」
伶奈はそう言いニッコリ微笑んだ、伶奈に先に言いたい事を言われた凛はムスッとしていたが。
「始まるまでまだあるし少し練習するか?」
「う、うん! 広瀬君に恥はかかせたくないしッ」
「だからそう気負うなって」
そして俺と橋本は伶奈と凛が見ている前で本番まで練習した。
「むぅ、瑛太とあんなに密着するなんて嬉しいハプニング起きまくりじゃん……」
「あはは、凛ちゃんって素直で可愛いね!」
2人がまた何か俺達を見て話しているが今は練習に集中だ。
「橋本、だんだん調子良くなってきたな」
「うん、広瀬君が気を遣ってくれたお陰かな?」
そして俺達の番が遂にやってきた。
「頑張ろうな橋本」
「う、うん!」
スタートの合図で俺達は走り出した、真ん中くらいの位置になった。 よし、なかなか悪くない!
そして順調に行くかと思ったらもう少しの所で橋本がバランスを崩し俺達は転んでしまった。そしてどんどん抜かれていきビリになってしまった。
「ごめんなさい、広瀬君本当にごめんなさい」
ゴールはしたが橋本は悪いと思ったのか大泣きしてしまった。
「いや、途中までいいとこまで行ってただろ? 少し運が悪かっただけだって」
「でも、でも! あんなに広瀬君に練習に付き合ってもらったのにッ」
「いいんだよ、それにちゃんと俺達2人でゴールしただろ? それだけでいいって」
「広瀬君…… ありがとう、うわぁぁんッ」
橋本は俺にしがみつき更に大泣きしてしまった。 みんなが見てるのに構わず橋本は泣いてしまった。 そしてしばらく俺は泣いてる橋本を宥めた。
「橋本元気出せって? 俺橋本と走れて良かったよ」
「嘘だよ、こんなに足手まといな私で……」
「でも俺達頑張ったろ? それに仲良くなれたじゃん? だからそれだけでも良かったじゃないか」
「広瀬君…… うん、ありがとう。 そう言ってくれて」
「瑛太君、残念だったね。 あんなに練習したのに」
「まぁいいよ、頑張ったんだしそれは無駄じゃないから」
「そうだよ、瑛太頑張ったの私達も見てたしね!」
なんか心なしか2人とも凄く気を遣っているような気がして申し訳ないけど……
「次伶奈と凛達だろ? 頑張れよ?」
「うん! 伶奈ちゃんには負けないからね!」
「凛ちゃん、私達同じクラスだから勝負する意味ないんだけど?」
「あ…… いろんな意味で負けないんだからね!」
「あははは、やっぱり凛ちゃんって可愛いねぇ」
2人こそ緊張感なくリレーの方へ行ってしまった。 リレーが始まりうちのクラスはビリになっていた。
二人三脚でビリだったのもこれでなんて事ないなと思っていると凛の番になり凛はバトンを受け取りどんどん前との距離を詰めていった。 やっぱ凛は脚が速いな。
凛は1人抜かしもう1人までもうちょっとという所で伶奈にバトンを回した。 伶奈はアンカーだから2週走る。 伶奈はあっという間に前の人を抜かし遂に1位になりぶっちぎりでゴールした。
凛もかなり速いけど伶奈はもっと速いな。 1位になっちゃうなんて。
「伶奈、凛お疲れ様。 2人とも凄いな」
「伶奈ちゃん速すぎ……」
「凛ちゃんこそ速いって。今度2人で追いかけっこしようか?」
「うわぁ、伶奈ちゃんとはやりたくない、瑛太とだったらいいけど!」
「あ、ひっどーいッ! 私だって瑛太君と追いかけっこしちゃおうかなぁ」
「伶奈には絶対脚の速さじゃ勝てそうにないな、てかおめでとうだな!」
そしてなんやかんやあった体育祭も無事に終わった。 すると橋本がやってきた。
「広瀬君、さっきはごめんなさい。それとありがとう。 私広瀬君と練習できて楽しかった。2人がなんで広瀬君好きなのか私もわかっちゃった」
「え? 橋本さんそれって……」
凛が焦ったように聞いた。
「う、ううん! 岸本さんと長浜さんの邪魔とかするつもりないの。ただ広瀬君、ありがとう!」
橋本はそう言ってあまり見せなかったニッコリとした笑顔で走り去ってしまった。




