その40
今日は瑛太が私の家に来てくれる。 私はとても緊張していた。 どうしよう!? 瑛太が私の部屋に来ちゃうの?
何しよう? も、もしかしてこのまま最後までいく気なの私?
とか変な妄想ばかりが浮かぶ……
「凛、お前家に近付く度にカクカクしてるけど大丈夫か? 今日マズいなら後ででもいいんだぞ?」
「全然マズい事なんてないしッ! ていうか女の子の家に行けるのになんで瑛太はそんなに平気そうな顔してるわけ? 男の子はエッチだからチャンスをみすみす逃すような後でとかそんな発想あるの?」
「いや、変に深読みするなよ。 なんか凛の心の声に聞こえるぞ?」
「……うぅ、わ、私がそんな事考えるわけないじゃん」
ダメだ、全くその通りです…… こんな時だけ察しが良くならないでよね。
「それに俺だってかなり緊張してるんだからな」
「え? そうなの?」
「ああ、ただそんな風に見せないように頑張ってるだけ」
「ふぅん、瑛太って結構女の子に耐性ついてきたよね……」
「凛が過激な事ばっかりしてくるからな、そりゃ慣れてくるわ」
「それが裏目に出ちゃった。 瑛太がガチガチになってくれれば私も瑛太をからかって緊張ほぐす事出来るのに……」
「俺を緊張ほぐす道具にすんなって」
「どうせ私は伶奈ちゃんみたいに気遣い出来ないしお淑やかじゃありませんよ〜だ!」
「そんな事一言も言ってないだろ?」
「顔が物語ってるもん!」
ああ、伶奈ちゃんの名前出したくないのに私から話題を振るなんて……
「そぉいや体育祭終わったら伶奈も俺の家に来るんだったな」
「そんなに嬉しい? 伶奈ちゃん来るの」
私はあからさまに怒って見せた。 こんな事してると私って伶奈ちゃんと比べると器が小さく見えちゃうかもしれないけど瑛太をとられたくない一心だからどうしてもその気持ちが勝ってしまう。
ああ、でも私は伶奈ちゃんじゃないんだ、真似したって勝てないんだ。
だったらこのままの私で瑛太を勝ち取ってやる!
「嬉しくないって言えば嘘になるけど…… いや、嬉しいかな。 ごめん」
「そうだろうね! まぁ嘘言われるよりはそうハッキリ言ってもらった方がいいけど…… じゃあ今から私の家に行くのは嬉しい?」
「緊張するけど他の女の子の家なんて初めてだし嬉しくないわけないだろ? ただ凛の親とか本当に大丈夫か?」
「うちの親共働きだし私達が家に行く頃にはまだ居ないし、寛大だって言ったでしょ?」
「ふぅん。 だったら安心だけど……」
「あ、ここだよ!」
「結構立派な家なんだな」
「まぁ私が生まれた頃建てたらしいからね! 遠慮しないで入って入って!」
「お邪魔します」
とりあえず瑛太をリビングに連れて行った。
「暑いよね? 何か飲み物飲む?」
「じゃあお言葉に甘えて」
うーん、飲み物はアイスコーヒーでいいよね。後は……
あれ、私今日汗かいてたんだ。 く、臭いよね? シャワー浴びてきた方が良いのかな?
「はい、どうぞ」
「おう、ありがとう。 ん、どうした?」
「えっと…… 私シャワー浴びてくるね!?」
「ちょっと待てよ!? なんでいきなりそうなるんだよ?」
「今日体育してきて汗かいちゃったし…… 私臭くない?」
「え? 凛はいつも良い匂いさせてるけど」
言われてカァ〜ッと顔が赤くなってしまった、瑛太私の匂いいつも嗅いでたの? 嬉しいような恥ずかしいような……
「わ、私の匂い嗅いでたの?」
「はぁ!? その言い方だと俺変態みたいに聞こえるじゃないか…… 目の前通り過ぎたりすればわかるだろ? てかお前何テンパってんだ?」
「て、テンパってなんかないよ! そうだ! 私の部屋行こう? 家族以外では瑛太が初の男の子なんだから! か、感謝してよね」
「あ、ああ。 そんな言い方されると余計意識してしまうだろ……」
「……意識したって良いんだよ?」
「へ?」
「わ、私瑛太の女のつもりなんだから!」
「だから私で意識して緊張してくれるんなら私って瑛太に女として見られてるって事で……」
最後は恥ずかしくてゴニョゴニョしてしまった。
そして瑛太を連れ階段を登っていく。
ん? 瑛太が下を向いている? って……
あ、私のパンツ見えてた!!
「…… 瑛太見たでしょ?」
「……見てません」
「嘘だ! 反応が怪しい! 色は?」
「…… ピンク」
「ほら、思った通り。 興奮したんでしょー!?」
「いや、一瞬だからよくわかんないって」
「じゃあよく見てみる?」
「お前って相変わらずそんなとこは大胆だな……」
瑛太は顔を赤くさせて頭を掻いている。 瑛太の反応が可愛くて私もつい悪ノリしちゃったけど私もドキッとするんだよ?
そして瑛太を私の部屋に入れた。
「はい、どうぞ入って!」
「へぇ〜、これが凛の部屋かぁ」
「もうまじまじ見ないでよ! 恥ずかしいなぁ」
「白を基調とした部屋にブラウンの絨毯に緑の芝生柄のマット、小さめのテーブルに丁寧に並べられた化粧品類に……」
「何テンプレみたいな説明してんのよ!? そういうのいいから!」
「ああ、ごめん、なんとなく……」
「もう! そこのベッドにでも腰掛けてて!」
瑛太をベッドに座らせ私も隣に座った。これって瑛太の部屋でもやってたな……
「なんか凛の部屋って綺麗で落ち着くな」
そりゃあ瑛太をその内招こうと思って大片付けしたからね。 でもそう言ってもらえるとやった甲斐があって嬉しいな。
「ど、どう? 初めて女の子の部屋に入った感想は?」
「まぁうちに奈々も居るんだけどな、でもなんか変な感じ」
なんか私の方が落ち着かなくなってきちゃった…… これからどうしよう? 私から瑛太を押し倒しちゃっていいのかな? でも拒絶されたら? どうしよう……
「凛どうした? 」
「え、瑛太ッ! な、なんでもしていいよ!?」
瑛太の声に反応して思わずとんでもない事を口にしてしまった。 ど、どうしよう!?
「は!? 何がなんでも?」
「あ、えーと! とりあえずベッドに入って2人で横になろう?」
また変な事を言ってしまった。 もうダメだ、何も考えられない。 私は瑛太をベッドに寝かせ私もその隣に入った。
「凛? どうなってんのこれ?」
「わ、私もわかんない……」
私は恥ずかしさのあまり毛布で顔を隠し瑛太の胸に顔を埋めた。




