その39
私は岸本伶奈。私が高校生になって早1週間、ある1人の男の子が気になっていた。
その男の子は広瀬瑛太君という子だ。 最初は私は彼の事はなんとも思っていなかった。
ん? なんか視線を感じるなぁと思いその視線の元をさり気なく探す。 あ! あの男の子が私を見てたんだ。 チラチラ見られる事あっても彼くらい露骨なのはあんまりいないしね。
私はさり気なくのつもりだったのだが彼は私の視線に気付き目を逸らした。 あれ? よく私の視線に気付いたね、もしかして私も少し露骨だったかな?
中学生の頃は私はモテていたと思う。だけど私は誰かと付き合ったりとかそんなに興味がなかったので告白されても何かと理由をつけて断っていた。
まぁ別に今も大して考えは変わっていないのだけれども。 そして私は視線を机に落とした。
彼といえば学校初日から可愛い女の子に声を掛けられていたなぁ。そう、それが凛ちゃんだった。凛ちゃんはモテるだろうに瑛太君に恋でもしているかのようにウットリしていた。
どうして彼の事がそんなに好きなんだろう? そう思っていた。
そしたらふとこんな噂があった。
凛ちゃんは告白されても好きな人がいるので断っているという。 瑛太君の事かな? と私は思った。
そして私はもっと驚くような事を聞いてしまった。 昼休み凛ちゃんが友達とお昼を食べている時偶然私は彼女達の話を聞いてしまった。
長浜さん達は廊下側の扉の近くの席で話している。私はすぐ近くの廊下の外にいて偶然聞こえてしまい私の名前が出た事によって足が止まり聞き耳を立ててしまった。
「あんたってバカだよねぇ。 広瀬君が岸本さんの事を好きってわかってるくせにわざわざ2人をくっつけようなんて、やっと広瀬君と会えてそんな事約束しちゃって」
「だって瑛太が岸本さんが好きなら…… それが瑛太が望んでたら。困ってたら助けるって言ったんだもん」
え? なんで長浜さんはそんな事するんだろう? 大体勝手にそんな事されても困るよ私は……
「広瀬君は岸本さんに片思いで凛はその広瀬君に片思いでややこしいわね」
本当にややこしい、だけどあんなに可愛い凛ちゃんにここまで好かれる瑛太君ってどんな人なんだろう? と思ったのがキッカケだったんだと思う。
授業の時や休み時間にチラリと彼の姿を見る。 相変わらず長浜さんと仲良く話している光景が多い。
本当に瑛太君の事が好きなんだなぁと思った。 でもその瑛太君は私が好きで…… あれ? だけどどうして私もこんなに気にしているんだろう? 私はそれがなんなのかわからなかった。
本当だったらそんなの知らん振りして瑛太君と凛ちゃんはお互いで頑張ってねと思ったはずだ。
なのに私は日に日に彼らをどうして目で追ってしまっているの? これは好きだから気になっているの? わからない、今までそんなの興味がなかったから。
こんな事で私って恋に落ちたの? もっと恋とかそういうのは劇的な出会いとかお互い惹かれ合うとか思ってたし…… だから確かめたい。
でも私って自分から行くなんて勇気がないし…… どうしたらいいかな? と思っていると急に凛ちゃんから声を掛けられた。
「岸本さん、今瑛太が寝ちゃってて私が起こしても起きないの。 だけど岸本さんが起こしてくれれば起きるかな?って思ってさ! ね? お願い」
「うーん、いいよ!」
意外にも凛ちゃんからそんな申し出が出たのだ。 その時私はようやく話せるキッカケが出来たと思い快く引き受けた。
「ねぇ、広瀬君、起きて」
私は瑛太君の肩に触れた。 意識し出していた私は瑛太君に触って少しドキッとしていた。
「ん〜、なんだよ?」
瑛太君はその時寝惚けていたのか凛ちゃんだと思ったのか私の手を振り払った。
あ、手触れちゃった。と私はまたドキッとした。
「え?」
瑛太君はまさか私が起こしに来るとは思わずにポカンとした顔をしていた。 間近で瑛太君を初めて見たかもと私は思った。
隣で凛ちゃんはしてやったりと思ってクスクスしているけど本当は私になんて頼みたくなかったはずだ。
「仲良いいんだね、広瀬君と長浜さんって」
「あ、いや、そんなわけでは」
「瑛太は私以外の女の子とあまり話すの慣れてないからね、岸本さんに試しに振ってみたの」
「そうなんだ? 私もあまり男子と話すの得意じゃないから一緒だね」
そう言い私は席に戻った。 なんか凄くドキドキした。私ってやっぱり瑛太君を意識していたの? と自分に問いかけた。
そしてその後クラスの人達でカラオケなどにも行った。 瑛太君と隣の席になれたんだけど凛ちゃんは瑛太君から離れてしまっていた。
ごめんね? 今は瑛太君と話させて。 と凛ちゃんに心の中で謝り瑛太君と話した。
そして瑛太君は私が隣で嬉しいと言ってくれた。 なんだろう? 彼に言われてこっちも嬉しくなった。 いつの間かこんなに好きになってたんだ……
瑛太君は凄い勢いでジュースを飲んでいった、そんなに喉乾いてるのかな? 頼もうとしてるけど私のジュースあげようかな? ううん、あげたいな。って思った。
そして瑛太君は多少遠慮はしたけど私のジュースを飲んだ。
さっき私の口が触れていたストローを瑛太君の口が触れている。 なんか凄くエッチな感じなんて思うのは私が処女だから?
そんなこんなしていると瑛太君が歌う番になった。 瑛太君は歌う事なんか頭になかったのか焦ったように決めて焦ったように歌っていた。 そのせいか音を外したりしていたけど私は可愛いなって思った。
そして私の番になった。 凄く緊張した。 隣で瑛太君が聴いてるんだもん、私は慎重にだけど瑛太君を意識しながら歌った。 カラオケでこんなに恥ずかしくなったのは初めてだ。
そしてその後瑛太君とカフェに行ったり学校でお喋りしたり、デートって言えるかわからないけどそれっぽい事もした。
電車の中で瑛太君に胸を触られた時は心臓が止まる位ビックリしたけど嫌ではなかった。 もうその時の私は完全に瑛太君に夢中になっていた。
凛ちゃんと2人きりでいる時は瑛太君はどうしているんだろう? とか思ったりしたが凛ちゃんだって私と瑛太君が2人きりでいる時はそう思ってるだろう。
凛ちゃんは私より前から瑛太君の事が好きだったようだから私は邪魔者以外の何者でもないのに私と瑛太君の仲を取り持つなんて辛くないのかな? そんなわけないよね……
でも私は瑛太君を好きになってしまった。 でも凛ちゃんの事もこれまで瑛太君越しに接してきて好きなんだよ私は。
だから凛ちゃんとは瑛太君の事でどうなっても仲がいいままでいたいな。 なんて思ってる。 都合いいよね?
でもそれが私の本心なんだし、だから私はこのままじゃいけない。
私は瑛太君に好きって言う。瑛太君と凛ちゃんとしっかり向き合う為に。
そう思った、だから体育祭が始まる前に瑛太君に告白した。 ううん、もうその時しかなかった。 瑛太君は無意識に凛ちゃんにも惹かれていたのを私はなんとなく感じてたし、何より私にはもう余裕がなかった。
時限式のタイムリミットがもう迫っていた。 だから伝えなきゃ…… 好きって事を。
そして好きと伝えたけど私が思っていた通り凛ちゃんの事も瑛太君は好きになっていた。
瑛太君はやっぱり凛ちゃんの好意に気付いてなくて瑛太君らしいなって思った。
私と瑛太君をくっつかせようとしていた話はもうわかっていたので敢えてその事はわからなかった振りをした。
凛ちゃんの本心はどうであれ私と瑛太君をくっつけさせようとしていた。なら私はこれからは同じ土俵で凛ちゃんと勝負する。だから凛ちゃんとは文化祭が終わるまでライバルだ。 でも友達なのは変わりたくない。
こんな事になるなんて私も最初は思わなかった。 世の中上手く行く事ばかりじゃない、もし瑛太君が私を選んだら? 私にはとても幸せな瞬間なんだろう。
だけどその後は?
瑛太君と凛ちゃんにとても申し訳ない事になってしまう、それを考えると押し潰されそうだ……
でも本気で私は瑛太君の事が好きなんだ、どうなっても自分が本気で好きになった人の想いを、この恋が実ってもダメであっても聞きたい。
私に許された期限以内に瑛太君はハッキリしてもらうと約束して貰った。
それまでは私は瑛太君と凛ちゃんに自分の想いをぶつけちゃおう。
そんな事を思い私は明日に迫った体育祭の準備を着々と進めた。
だけど心の片隅には今頃瑛太君と凛ちゃんは何をしているんだろう? という事ばかりが渦巻いていた。




