その37
「瑛太! 覚悟してね!? って宣言したのに今くっついているのは橋本さんだなんて……」
「仕方ないよ凛ちゃん、体育祭の練習だもの。 ねぇ、瑛太君?」
「ああ、ごめんな、凛」
体育祭が明日に迫った中2時間連続の体育の授業で休憩の合間凛につっこまれてしまった。
「ま、まぁ別にそれはわかるんだけどさぁ…… 瑛太橋本さんの胸に意識行き過ぎなんだもん」
「あ、いや。そんな事はないって……」
「凛ちゃんの言う事にも確かに一理あるよね」
「伶奈まで何言ってんだよ……」
「瑛太ただでさえおかしな状況になってるのにこの上橋本さんとも何かあったら私でも怒るからね!?」
「大丈夫だって、何もないから!」
「フフッ、凛ちゃんって瑛太君が好きってわかったら急にヤキモチ焼いちゃって」
伶奈が凛の様子を楽しそうに見ていた、そして俺の腕を取りピタッとくっついた。
「あっ! なんでそこで瑛太にくっつくのよ!」
凛もすかさずもう片方の腕にくっついた。 騒ぐと目立つからやめてほしいけど……
「凛ちゃん、そういえば私に隠れて瑛太君と何してたのかなぁ?」
「な、何って…… 健全なお付き合いの練習よ! ね? 瑛太」
「あ、ああ。 そうだったのか?」
健全なお付き合いの練習…… 俺にとっては刺激の強い物ばかりだったけど。
伶奈は凛と仲良くなりたいと言っていたのでこんな状況でもとても楽しそうだ。
だけど少し引っかかる、言ってて悪いが凛みたいな焦りがあまり感じられない。俺は今度は伶奈の考えが少し読めなくなっていた。
伶奈はとても優しい子だというのはよくわかった、凛と仲良くなりたいも本当だろう。 だがなんだかそれ以外にもありそうで。 まぁ今まで伶奈と凛の想いに気付かなかった俺が考えてもわかるわけないか……
「あ、あのお取り込み中ごめんなさい、広瀬君と練習再開してもいいかな?」
「へ? あ、そうだった。 行って来なよ瑛太。 でもわかってるわよね?」
「わかってるって!」
「私は瑛太君を信じてるから大丈夫だよ?」
「もう! そうやって細かい所で瑛太にポイント稼ぎして!」
「あはは、凛ちゃん考えすぎだって」
わーきゃー言ってる2人を尻目に俺と橋本は練習を再開した。
「広瀬君、邪魔してごめんね?」
「いや、どうしたもんかと思ってたから助かったよ」
「なんかあの2人いきなり広瀬君といつもより仲良くなったね。 広瀬君って凄くモテるんだ?」
「そんなモテないって」
「だって岸本さんと長浜さんだよ? 2人ともとっても美人だよ」
「そうなんだけどさ、よく俺なんかにって思ってるよ」
「ほら、今だって2人ともずっと広瀬君を見てるよ? 本当に好きなんだね?」
「俺って凄く鈍くてさ。 全然気付かなかったんだ」
「あはは、私から見てもあの2人広瀬君に気があったのはわかったよ。特に長浜さんとかはわかりやすいから」
「耳が痛いな。 やっぱそうなんだな、てかあれ? なんか凄く順調に速くなってないか? 俺達」
「あ、本当だ。 明日の体育祭までに走れるようになってたりして……」
「俺と橋本もようやく息が合ってきたんだな」
「そうみたいだね! 広瀬君のお陰だよ」
「いや、橋本が頑張ってたからだろ?」
「ううん、広瀬君はこんな私でも怒らないでしっかり私の練習に付き合ってくれたお陰だよ、ありがとう!」
「明日は頑張ろうな、橋本。 結果とか気にしなくていいからさ」
「うん! 広瀬君今日まで付き合ってくれて本当にありがとう」
「ははッ、まだ明日があるし明日が本番だろ?」
「そうだったね、広瀬君がペアで良かった」
そして長い体育の時間が終わり昼休みにった。
「ああ、ようやく私も解放された。 やっぱりペアになるなら瑛太がよかったなぁ。 橋本さんと瑛太すっかり仲良しになっちゃって」
「言っとくけどちゃんと練習してるからな」
「はいはい、わかってますって!」
「瑛太君お昼食べに行こう? それと凛ちゃんもいい?」
「え? 私もいいの? もう私から無理矢理瑛太を誘っちゃおうかと思ってたんだけど」
「あはは。凛ちゃんの事だからそうなるかもって思ってたよ、だから私から誘ったの」
「むぅー、伶奈ちゃんにいいようにされてるような気がするけど瑛太と一緒にお昼出来るならいっか! 沙月に言ってくるから待っててね!」
「ん? どうしたの瑛太君」
「いや、伶奈って本当に凛と仲良くなりたいんだなって」
「フフッ、おかしいかな? おかしいかもね、同じ瑛太君好き同士なのにね。でも同じ人を好きになったんだから私と凛ちゃんだって絶対仲良くなれるよ」
「うーん、理屈としてはそんなような気もするけど」
「瑛太ーッ! 伶奈ちゃん、ほら、さっさと行こう?」
凛が急いだ様子で手招きしてきた。 そんなに急がなくてもいいのにな。
屋上に行き凛が嬉しそうに弁当を広げた。
「今日からね、瑛太の為に特別メニュー作る事にしたの!」
「私もね、瑛太君にはいつも作ってあげてたから考える事同じだね」
「おいおい、俺食べ切れるのか?」
「んー、じゃあ今日はみんなで食べよう? 明日から瑛太はお弁当少なめに持ってくるかいっその事持ってこなくていーよ!」
「わーい、じゃあ私も凛ちゃんの手作り食べれるんだ? 嬉しいなぁ」
「そのかわり伶奈ちゃんのもたべさせてね?」
「もちろん! はい、どうぞ!」
「じゃあ、いただきます」
伶奈の弁当を凛が一口食べてみた。
「…… 美味しい」
「凛ちゃんのもいただきます。 あ! 美味しい!」
「伶奈ちゃん料理もここまで出来るなんて…… 瑛太いつも食べてたの!?」
「あ、ああ。 でも凛のも美味しいよ」
「本当!?」
凛はパァッと笑顔になりニコニコと弁当を食べ始めた。 その様子を見て伶奈も普段より明るい顔で凛の弁当をまた一口食べた。
伶奈はこんな感じだから確かに思ったより伶奈と凛は仲良くなれそうだ。 それを俺はぶち壊しにしてしまうかもしれないと思うと罪悪感に苛まれた。




