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その34


「じゃあもう少し息を合わそうか?」


「は、はい!」


体育祭までの体育は体育祭の練習になっていた。 俺は橋本と二人三脚のペアを組む事になって練習していたのだが全然橋本とは上手く行けそうにない……


「あ、あの足引っ張りですよね?」


「あのさ、敬語とかやめないか? 俺達同級生だろ?」


「はい。 じゃなかった、うん」


「少し肩の力抜いて行こう? どうせ練習だしさ、考えてみたら俺誰が速いとかあんまり興味ないしさ」


「でもこういうのって遅いとクラスの誰かに怒られるような」


「確かにそんなの気にする連中いるかもしれないけどそん時はそん時で考えれば良いよ、少なくても俺は気にしないし」


「あ、ありがとう」


「じゃあ歩幅を合わせて」


「うん」


ノロノロと俺らは動き出した。先ずはこの状態で自然に歩く事にした。走ると橋本の胸がバインバイン揺れてどうしても集中出来ないからな、正しくバスターバイン。


橋本ってかなり胸がデカいな。まさか胸が邪魔で足下見えないとか…… 流石にないよな。


なんてバカな事を考えていたら橋本との歩幅がズレてバランスが崩れる。


「あ、ごめんなさい!」


「いや、俺が余計な事考えてたせいだから」


胸がデカくて足下見えないのか? とか考えてたなんてとても言えない。


「あいつら何やってんの? 遊んでんの?」


「あれで二人三脚やる気かよ?」


そんな声が聞こえてきた。 橋本をチラッと見ると聞こえてたようで橋本は焦っている。


「あんなの無視しろよ? 同じクラスなのにあんな事言う奴らの為に練習してやってるなんてイライラするだけだからな」


「う、うん」


「ちょっと! あんたら瑛太達が一生懸命やってんのになんでそんな事言うのよ!? クラスメイトなんだから協力してあげなさいよ!」


凛にも聞こえてたのか凛は俺達を庇ってくれていた。 伶奈も橋本に文句を言ってる女子達に注意してくれている。


「ほら、ちゃんと応援してくれる奴らもいるしさ、それにまだ体育祭まで少しは時間あるし形だけでも走ってる風に見えればいいって事にしよう?」


「広瀬君って優しいんだね」


「え? どこが?」


「教室だとなんかあんまり話し掛けるなオーラが出てるから少し気難しい人なのかな? って思ってて。 ごめんなさい」


「あー、やっぱそうか。 実際友達とかあんまりいないしな、俺」


「でも岸本さんとか長浜さんはよく喋りかけてるよね?」


「あの2人はよく俺にこんなに仲良くしてくれてるよなって思ってるんだけどさ」


「…… 私も引っ込み思案で友達とかもあんまりいなくて。 私って暗いよね?」


そう言った途端話すのに集中していたのか橋本はまたもバランスを崩し横に崩れ落ちそうになったが橋本の腕を掴みなんとかコケずにすんだ。


橋本の分厚い黒縁眼鏡が地面に落ちた。

あれ? これってなんかテンプレ的な展開だけど橋本って眼鏡ないと意外と可愛い顔してるんじゃないか?


「め、眼鏡、眼鏡!」


まるで某アニメの◯び太のような仕草で眼鏡を探している橋本に眼鏡拾い渡した。


「あ、ありがとう」


眼鏡を掛けこちらにバツが悪そうにお礼を言ってきた。


「ひ、広瀬君?」


「あ、悪い。橋本って眼鏡掛けてないと可愛いんだなって思って……」


「え、ええ?」


橋本はそんな事を言われると思っていなかったのか顔を赤らめて焦っていた。


「髪型とかも変えてさ、コンタクトとかにすれば凄くいいんじゃないかって思った。 てか俺何言ってんだ? ごめん、気にしなくていいよ」


まぁ余計なお世話だよな。 凛に助言されてた俺が助言する側とかってあり得ないし。


「瑛太君、大丈夫? どうかしたの?」


俺と橋本の様子が気になったのか伶奈が駆け寄ってきた。


「ああ、大丈夫だよ。 てかいろいろ言ってくれててありがとうな」


「瑛太君達が頑張って練習してるんだもん、当たり前じゃん。 瑛太君あんまりそういうの興味なさそうだったのに結構頑張ってるから尚更ね」


「あはは、伶奈にもやっぱそう見えてたか。 なんかこのまま言われ続けるのも少し癪になってきてさ。 ちゃんと走れるくらいまでは頑張ろうかなって」


「うん! 頑張ろう、橋本さんも無理しないでゆっくり出来るようになろう?」


「岸本さん、ありがとう。 広瀬君優しくしてくれてるから無理はしてないよ?でも私もともと運動音痴で」


「俺もそんなに運動得意じゃないからおあいこだな」


そんなこんなで体育も終わった。そして昼休みになり屋上で伶奈と弁当を食べていた。最近は屋上で食べる事も多くなった。 伶奈曰く落ち着くのだそうだ。


「晴れてる時の屋上は最高だねぇ」


「確かにいいよな、少し暑くなってきたけどさ」


「なんか洗濯干したくなるよね」


「あはは、学校まで来て洗濯干す気かよ?」


「私結構そういうの好きだよ? 学校で洗濯とかの科目あったら楽しいだろうなぁ」



そんな他愛もない話をしていると伶奈が急に訪ねてきた。


「瑛太君、なんか橋本さんと結構仲良くなったんだね?」


「え? そうか?」


「見てたらわかるよ、さっきだっていろいろ何話してたの?」


「ああ、橋本コケそうになった時眼鏡落ちてさ、眼鏡しないで髪型変えれば結構可愛いんじゃないか?って言ったんだよ」


「え? そんな事話してたの?」


伶奈の顔が曇っていく。


「まぁでも俺がそんなの言える立場じゃなかったしそう言った事も気にするなっては言っといたけど」


「ダメ!」


「え?」


「なんか嫌だ、瑛太君が他の子にそんな事言っちゃうの……」


「伶奈?」


「凛ちゃんだったら瑛太君ともともと凄く仲良かったからそんな風な事言っててもなんか納得できた。でも………」


伶奈は何か言おうとしていたが途中でやめてしまった。 凛ならよくて橋本だと嫌なのか?


そんな事を考えていると伶奈がこちらを真剣な眼差しで見た。

そして少し伶奈は迷っていたようだが決意した表情になった。そして……


「私ね、瑛太君の事好きなの」


一瞬俺の中で時間が止まった。 そしてそれと同時に伶奈の唇が俺の唇に触れていた。




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