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その3


「そんなに気になるなら行ってくればー?」


凛が少しイラついたように言う。

そもそも俺が岸本に片想いをしているが実際には岸本との接点がなく近付きようがなかった。


だがとあるきっかけで岸本と一緒に行動できる事になった。

それはクラスの連中があまり知り合いのいない同士で仲を深めるためにカラオケに行こうと言う事で俺にもお誘いが掛かった。


凛の前の席の「冨樫とがし まなぶ」から俺に話しかけた。


「瑛太も行こうぜ? な? 」


「うん、行ってみようかなぁ」


「瑛太、良かったじゃん、チャンスがやって来て」


「そうだな、こんな機会滅多にないしな」


俺はついに岸本とお近付きになれるという期待でだらしない顔になっていた。


「ねぇ、顔チョーニヤけてるけど?」


「ああ、だってそりゃあそうだろ? 凛の訓練もいらなくなったりしてな」


「へぇ、それは良かった事!」


だけど凛は俺のニヤついた顔を見てさっきまでの笑顔は消え急に不機嫌顔になった。


「お前は何怒ってんの?」


「怒ってません」


「怒ってるだろ? 急にどうしたんだよ? そもそも俺に岸本けしかけたりして楽しんでたのお前だろ?」


「いいから行けば? 私とよりそっちのが楽しんでしょ?」


「よくわかんない奴だなぁ」


「あ、長沼さんも来てね、瑛太と仲良いようだし何より可愛い子いると盛り上がりそうだしさ」


学がいきなり口を挟んできた。


「え? 私も? うーん……」


凛が少し悩んでいたが俺をチラッと見て行くと言い出した。


「まぁいっか、瑛太も行くなら私も行ってあげようかな」


「はぁ、変な奴だなぁ」


そして土曜日になり待ち合わせの場所まで行くと10人くらいの集団がいた、あそこだな、見ると岸本もいた。


私服姿の岸本はとても可愛らしくいつもの見慣れた制服とは違いとても色っぽく見えた。


すると岸本の隣に凛もいた。 凛も岸本に負けておらず可愛い、2人とも男子に人気なようで話しかけられていた。

そして凛が俺に気付いた。


「あ、瑛太ー! こっちこっち」


凛が俺を見つけて笑顔で手を振り男子のもとから俺に駆け寄り俺の手を繋ぎその場に引っ張っていかれた。


「あ、広瀬君。 今日はよろしくね!」


岸本は俺に笑顔でそう言った。 ヤバい、めちゃくちゃ可愛い。 俺は多分真っ赤になっていたと思う。


「あ、ああ。 楽しもうな」


カラオケに行くと俺達は席に着いた。 俺の隣には岸本が来てくれた。


「えっと、隣良いかな?」


「え? ああ、うん」


「やった! 」


岸本はそう言い俺の隣に座った。 え? 喜んでる? 岸本も!?

凛を見ると凛も俺の隣に行こうとしたが他の男子にこっちに来なよと半ば強引に俺とは離れた所に行った。


そしてなんだか少し不機嫌な表情をしていた。男子はそんな事を知らず凛目当てかだったのか凛に喋りまくっていた。


そして他の奴らが歌い出した。

あー、あいつまったく楽しくなさそうだなぁと思っていると……



「もしかして長沼さんもこっち来たかったのかな? 私悪い事したかなぁ?」


「そんな事ないって。 あいつに絡んでるのが凛には気に食わないだけだと思うよ?」


「広瀬君って長沼さんと凄く仲良さそうだもんね? 私より長沼さんが隣の方が良かったかなぁって……」


「え? 俺岸本と隣で嬉しいけど……」


「え!?」


そういうと岸本は焦っていたように感じた。 あ…… 今の発言キモかったかな?


「あ、あのさ! 変な事言ってごめん、 ただ単に岸本と仲良くなれたらいいなぁって」


「あ…… う、うん! 私も広瀬君と仲良くなれたらいいなって思ってたから嬉しいよ」


そしてなんだか若干俺達に気まずいような空気が漂う。


「ほら、次瑛太の番だぞ? なんか歌え」


俺は全くカラオケの事なんて考えてなかったので慌ててしまった、ヤベェ、全然何歌うのかも決めてない……


しばらく迷いヤケになりわかる範囲の適当な曲を入れて俺は歌った。 そして緊張していたので音を外しまくりとても恥ずかしかった。


歌い終わった頃には汗がぐっしょりで気になったから隣にいた岸本からほんの少し距離を取った。


そして俺の隣の岸本の番なので岸本も歌出だした。 岸本は流行りのアーティストの曲をとても綺麗な歌声で歌っていく。


岸本の歌声を聞けるなんて幸せだ。 カラオケじゃなかったら絶対聴けないもんな。 岸本が歌い終わり俺にエヘッと笑いかけた。


「あー、少し緊張しちゃった、喉乾くね。 って広瀬君もうジュースなくなっちゃったんだ? 私の飲む? 」


「あ、だったら頼むから岸本飲めよ」


「今のタイミングだと頼み辛いからさ、もう少し後になるから私の飲んでていいよ?」


そうして岸本は自分のグラスを俺の席に置いた。 これはまたしても間接キスという奴では?


女の子ってこういう事抵抗ないのかな? と思いつつありがとうと言い俺は岸本のジュースのストローに口をつけた。


だけどそれを凛が刺すような視線で俺を見ていた。 なんで睨むんだよ? 応援してんじゃないのか? と俺は思った。


そしてしばらくするとジュースを2杯飲んだようなもんの俺はトイレに行きたいので席を立った。


そしてトイレを済ますと俺は部屋に戻ろうとすると凛がそこにはいた。

ムスッと手を腰に置いて立っていた。


「楽しそうだね! 岸本さんと間接キスまで出来て尚且つ仲良さそうで!」


「なんで怒ってるんだよ? お前の練習通りじゃん。 それに間接キスだったらカフェでもやってただろ? 意外と女子ってそんなの抵抗なくてビックリだわ」


「あ、あれは! 瑛太だからしたんだよ!? 他の男子とするわけないじゃん」


「え? なんで?」


「そ、それは…… 私って瑛太の唯一の女友達でしょ! だから!」


「あ、そうだったのか」


「ほら、戻るんでしょ? 行くよ!」


そして俺達は部屋に戻った。 ていうかあいつ何しに来たんだ? あいつもトイレだったのか?


席に戻ると岸本は笑顔で俺の座っていた場所に誰も来ないようにしてくれたのか自分の上着を置いていた。 それをヒョイッと避けて俺に座ってと促した。


「わざわざごめんな」


「ううん、全然いいの! あのね、LINEとかやってる? よかったら交換しない?」


「え? いいの?」


「うん!」


そして俺と岸本はお互いのLINEを交換した。


「後でメッセージ送っちゃおうかなぁ」


岸本はそんな事を言っていた。 むしろ送ってくれと俺は思いつつその日のカラオケはなんだかんだで楽しく終わった。 それは岸本が隣にいたからだと思う。


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