その28
ん? 朝か? ああ、少し寝ていたんだった。 なんだ? 後ろに何かある。
俺が邪魔だから後ろの物を退かそうとして手を伸ばした。
「あんっ!」
は? なんだこの感触? 柔らかい。
「え、瑛太……」
なんで凛の声が? 頭がだんだん覚醒していく…… 凛が顔を紅潮させている。
そして俺の手には凛の胸を鷲掴みにしていた。
「はぁ!? なんでお前が俺のベッドで寝てるんだ!?」
「瑛太のエッチ……」
「あ、ご、ごめん!……じゃなくて! なんでお前が俺と添い寝してるんだよ!?」
「だって前になんかで人肌で温めるといいとかって見たから…… 私のせいで風邪引いたからそれくらいお世話しよう思って」
「だからってなぁ、お前って本当に大胆だよな……」
「いつかこんな時がくるかもしれないし。私と瑛太にも」
「え?」
「あ! 瑛太と伶奈ちゃんと私と私の好きな人にねって事! 緊張しすぎて何もなかったら後悔するでしょ?」
「何もなかったらって何があるんだよ?」
「だから! 瑛太のエッチ!」
「だからってこんな事していいのか?」
「だからこそだよ…… これは私と瑛太だけの秘密の特訓! 女の子とこんな事した事ある?」
「そりゃないけど」
「私も男の子と一緒に寝るなんて初めて…… だからね、協力してくれるんでしょ? 私にも」
「うッ…… まぁそうは言ったけど俺がもし我慢出来なくてなんかあったらどうするんだ?」
「私に欲情して我慢できなくなるって解釈でいいのそれ?」
「なんでそう極端な解釈なんだよ?」
「ん〜、でもまぁ瑛太なら秘密を共有する仲だし、 私瑛太の……」
「あ! てか俺のパンツももしかして洗ったか?」
「え? うん。 洗ったよ?」
「あー、もう遅かったか」
「何が?」
「いや、言うと更に恥ずかしくなるからいいや」
「? あー! もしかして私が瑛太のパンツで興奮するとでも思ったぁ?」
「なんでわざわざ引っ張り出すんだよ?」
「あははッ、家族の洗濯してると思えば何ともないよ? 瑛太ってそんな事気にしてたんだねぇ、可愛い」
凛がニコニコ笑って俺の顔を突いてからかってきた。自分で墓穴を掘ってしまって後悔した。
てか凛の胸を揉んでしまった。 前にもこれと似たような事あったよな、電車の中で。 あの時は伶奈だった、これが俗に言うラッキースケベって奴か……
「お兄ちゃん! 食材買ってきたからお昼ご飯今から作るからねぇ」
勢いよくガチャッとドアを開け奈々が入ってきた。 おい、ノックは? さっき言ってたよな? 何があるかわからないからノックしたって……
「うそ…… 私がちょっと目を離した隙にお兄ちゃんもうそこまで凛さんと…… 凛さんがいくら可愛いからって風邪引いてるのに」
「バカ! 何勘違いしてんだよ? それにノックしろよ! 」
「奈々ちゃん、これは違うの! なんかこうした方がいいと思って私が無理矢理……」
おい、無理矢理とか言うなよ! ますます怪しいだろ……
「2人してそんなにムキになって怪しい」
「だから誤解だって言ってるだろ!?」
「あはははッ、わかってるよ? お兄ちゃんにそんな甲斐性も度胸もないもんね」
「奈々ちゃん、お昼なら私も一緒に作るよ?」
「ありがとー! お兄ちゃん良かったね、凛さんの手作りが食べられて」
「もういいからとっとと作ってこいよ」
「寂しいだろうけど少し凛さん私が借りるねぇ」
「瑛太! 頑張って作るから早く元気になってね!」
そして2人はキッチンの方へと向かってしまった。 思わぬハプニングで平静を失ってしまった。
一旦落ち着こう。 こんな時はゴリラを具現化するイメージを頭に叩き込め。
そして俺がゴリラをイメージして肌で感じ始めた頃また眠りについた。
「瑛太、起きて! ご飯できたよ?」
なんだよ…… 眠いから起こさないでくれと俺は体を揺する手を無視し反対側に寝返りを打った。
「瑛太ぁ! 本格的に寝始めないでよ? 起きないんだったらこうしちゃうんだから!」
すると頭を抱き抱えられ顔を胸に埋められた。 思わぬ行動に一気に目が覚めてしまった。
「っておい! 何すんだよ?」
「起きないからでしょ? 瑛太ってこんな事されないと起きないの?」
「いや、もうちょっとやり方あるだろ?」
「ふふッ、でもすぐ目を覚ましてくれたねぇ」
「いいから離せよ!」
「お兄ちゃん、凛さんいつまで何してるの!? ……て、何してるの?」
「「あ……」」
「本当にこの2人は…… ちょっとでも隙があるとすぐそんな事して」
「こ、これは瑛太がなかなか起きなくて仕方なく……」
「そ、そうだ、俺にはさっきまで意識なかったんだ。ノーカンだよな……?」
「2人とも…… 見苦しいよ?」
すっかり奈々に白い目を向けられ俺と凛はリビングに向かった。
「まったく! 仲睦まじいのはいい事だけど妹の私になんてもの見せるのよ? それも何回も!」
「奈々ちゃん、ごめんなさい……」
「あ、凛さんは許す」
「じゃあ俺は?」
「お兄ちゃんは吐き気がする!」
「なんで凛はいいんだよ!?」
「凛さんは健気でとっても可愛いから! ねぇ凛さん」
「あはは……」
わけのわからん理由で納得できない俺は凛が作ったお粥を頬張った。
「どうかな? お粥だから味とかよくわかんないだろうけど……」
「…… なんか美味しい」
「そりゃあ凛さんの愛情がこもってるもんねぇ」
凛が茶化してくるがなんか本当に美味しく感じた。
「どういたしまして! 今度は普通の料理瑛太にご馳走してあげるね!」




