その24
ゲーセンに着くと伶奈は目を輝かせていた。 結構ショボいゲーセンなのにな。 でもそこがまた可愛い。
まず格ゲーはなしだな、俺は好きだけど伶奈はどう見てもやらなそうだし……
UFOキャッチーとかか?
などと思っていると伶奈が早速何がやりたい物があったそうだ。
「私これやってみたい! 瑛太君と一緒に!」
ああ、恐竜撃っていくシューティングゲームか、これなら伶奈にも出来そうだな。
「よし、じゃあそれやろうか」
「うん、楽しみ」
車型のボックスに入ると伶奈がピッタリとくっついて腰掛ける。もうちょっと離れた方がやりやすいのになと思ったけどこれはこれで嬉しいので俺も何も言わずにくっついておく事にした。
「じゃあ金入れたらスタートするから」
「私も払うよ? 100円でいいのかな?」
「いや、これくらい払えるから大丈夫だって」
そう言って俺は200円を入れゲームがスタートした。
「私下手くそだったらごめんね」
「俺もあんまりシューティング得意じゃないから気にすんなって」
得意じゃないなんて嘘だけど先に伶奈がやられちゃったら気にしそうだしな。
そしてゲームが始まり恐竜をジェノサイドしていく。 伶奈の分まで。
「凄ーい、面白いねこれ!」
よかった、楽しんでもらえて何よりだ。
伶奈の腕前は正直よくわからない。 俺がやっちゃってるけど本人は気付かず画面に撃ちまくっているのでまぁいいか。
「あぁん、私死んじゃった……」
その内伶奈はやられ、俺もやめ時だと思って適当な所でやられておいた。
「いや〜、結構面白かったなぁ」
「うん、後でまたやりたいね!」
そして次は2人でコインゲームの所へ行って少し遊んだ。
俺はあんまりやらないからよくわからないけど伶奈が楽しそうにしてるからいいやと思った。
そしてUFOキャッチャーへ行くと伶奈がうさぎのクッションを物欲しそうに見つめていた。
あー、こういうでかい系俺苦手なんだよなぁ…… 取ってあげたいけど出来るだろうか。
「これやってみようかなぁ」
とりあえず伶奈がトライする事になった。 俺も最初は見守る事にした。 しかし案の定無情にもアームはクッションを持ち上げもせずに終わった。 いやー、やっぱ無理っぽいけど伶奈のためだ。
「じゃあ今度は俺がやるよ?」
「え? いいの? さっきも払って貰ったし私がお金出すよ」
「大丈夫だって、伶奈はそんな事気にしなくて」
ぶっちゃけいくらで取れるかわかんないしな。 俺は金を入れてプレイしてみるがやっぱりダメだった。 幸いな事に移動させれば取れそうな感じだった。
「あ〜、やっぱりいいよ? なんか難しそう」
俺が失敗したのを見て伶奈は諦めモードになったがここで良い所を見せたい俺は大丈夫と言って更にお金を消費してクッションを穴まで移動させていった。
「あれ? もうちょっとで取れそう?」
その途端伶奈は目を輝かせ頑張ってと言ってくれたので俺もやる気が一段と増した。 そしてやっと穴にクッションが落ちてくれた。
「やったぁ! 瑛太君ありがとう、これ大切にする」
クッションをギュッと抱きしめ伶奈はとても嬉しそうに言った。
頑張った甲斐があったな。 千円も使っちゃったけど……
店員にクッションを袋に入れてもらい伶奈は満足気だ。 ふと他のを見ると某掲示板のキャラクターがあった。
凛これ好きだったよな、これ簡単そうだしやってみるか。俺は金を入れやってみた。 そしたら1発で取れた、さっき大分注ぎ込んだ分助かった。
こいつは後で凛にあげよう。 あいつ喜ぶかな?
「またやってたの? てかすぐ取れたんだね」
「ああ、こいつは凛にプレゼントしてやろうかと思ってさ」
「凛ちゃんに?」
「ああ、あいつちょっと落ち込んでたしいつも世話になってるしな」
「え? お世話?」
「あ、いや、ほら。 あいつ気が効くだろ? そういう事」
「ふぅん、そうなんだ」
あれ? 凛の名前出すと少し伶奈元気なくなったぞ? 学校ではそんな事なかったのに。
「とりあえずそろそろゲーセン出るか?」
「うん! 私ちょっと寄りたい所あってそこに行ってもいい?」
「ああ、いいよ」
伶奈はどうやらTSUTAYAに行きたいようだ、DVDでも借りんのか?
「DVD借りるの?」
「まっさかぁ、こんな離れた所で。 CD買おうかと思ってさ。 CD売ってるとこだといいんだけど……」
「ああ、そういう事か」
TSUTAYAに着くとこのTSUTAYA本屋とカフェが一緒になってるのか。 夕飯ここで済ますかな。 奈々にLINE送っておこう。
そしてTSUTAYAに入り俺は雑誌のコーナーに寄った。 CDも売っていたので伶奈がCD見てる間に週刊漫画を立ち読みしていた。
しばらく立ち読みしていると伶奈が買い物を済ませたようだ。
「瑛太君、私ちょっとトイレ行ってきていいかな?」
「ああ、わかったよ。 じゃあ俺そこのカフェの所に行ってるな。 ここで夕飯食べようかなって思ってたから」
「わかった、じゃあ一緒に食べよう、瑛太君は先に選んでて!」
そう言って伶奈はトイレに向かった。
スマホを取り出してみると奈々から返事が来ていた。
『今日は凛さんとデート?』
なんだそりゃ? 一応返しとくか。
『違うよ、他の友達と飯食ってくるだけだ』
『凛さん以外となんて浮気だー』
『なんで凛以外だと浮気になるんだよ?』
『凛さんショック受けてるはずだから私慰めてあげたいからまた家に連れてきねぇ』
なんか面倒くさい方向になってきたのでとりあえずそこでスルーしとくことにした。
カフェに入ると食欲をそそられる香りがしてきた。 あ、カレーあるじゃん、この前食べてなかったからここで食べようかなと思っていると伶奈が戻ってきた。
あれ? 伶奈の後ろに凛がいるぞ? なんだか凛はバツが悪そうな顔をしている。
「あ、瑛太君、トイレ行ったら凛ちゃんがいてね。 連れて来ちゃった」
「え、瑛太、奇遇だね……」
「なんでお前がここにいるの?」
「あ、あぅ…………」
その場にしばし沈黙が訪れた。




