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その22


凛と一緒に教室に入ると岸本がパッと笑ってこちらに駆け寄った。


「広瀬君、あのね、私も長浜さんみたいに広瀬君の事瑛太君って呼んでいい?」


「え? 別に構わないけど?」


「じゃあ、瑛太君……」


「は、はい」


なぜかそんなにかしこまって呼ばれると恐縮してしまう。 でもなんだか岸本に名前を呼ばれるとドキッとするな…… チラッと凛を見ると死んだ魚のような目になっている。


「瑛太君、私の事も伶奈って呼んでくれて構わないから。 てかそう呼んで欲しいな!」


「わかったよ、伶奈」


伶奈って言ってしまった…… なんか少し壁みたいな物がなくなったような気がする。


「うん、やった! なんかもっと仲良くなれたような気がする!」


「長浜さん!」


「え? 私!?」


急に話を振られた凛は死んだ魚の目からキョトンとした目になった。


「これからは私も凛ちゃんって呼ぶね? 長浜さんだと他人行儀みたいでなんか嫌だったんだ、だから凛ちゃんも私の事伶奈って呼んでね」


「伶奈……ちゃん?」


「あはは、うん! それでいいよ」


そして俺と凛は席に座った。


「伶奈ちゃんかぁ」


凛はボソッと呟いた。 何か思うところがあるのか凛はそのままうわの空でボーッとしていた。


「瑛太君!」


昼休みになり俺と一緒に弁当を食べている伶奈が結構な頻度で名前を呼んでくる。


「どうした伶奈?」


「ううん、呼んでみただけ! なんか呼びたくて」


「そっか、伶奈」


俺も試しにいちいち名前をつけるとなんだか伶奈も嬉しそうだ。


「ねぇ瑛太君、今日一緒に何処か寄り道しない? 瑛太君の寄りたいとこで良いからさ!」


「俺の寄りたいところねぇ、あはは、ゲーセンくらいしか思いつかないや」


「いいよ? 行こう」


「え? いいの? 」


「うん! なんだか瑛太君の行きたいところに行きたい気分なの」


「よし、じゃあ今日の放課後はゲーセンでも寄るか」


なんか自然な感じで伶奈と一緒に帰れるのと遊べる事になった。 今日はついてるかもしれない。


「凛、今日は帰ってていいぞ」


「え? どこか行くの?」


「伶奈とゲーセン行ってくる」


「急に名前で呼んだら一緒にいたくなったのね、どこへなりと行ってらっしゃい!」


凛はツンとした態度でそう言った。

おいおい、怒るところじゃないだろ……


「凛、今日は機嫌が悪いな」


「…… 私が上手くいかないのに瑛太が上手くいってて嫉妬しちゃった、ごめん」


「あ、俺こそ無神経だった、悪い。お前が悩んでたら俺も出来る限り協力するからさ」


「フフッ、いいよ。 そこまでしてくれなくても! 楽しんできなよ」


そして放課後になり俺と伶奈は電車に乗り街の方へ行く。

今日は少し混んでいて席が全部埋まっていたので立って乗るはめになった。

だけど少しするとだんだん空いてきた。


「瑛太君、あそこ空いたよ? 行こう」


伶奈が俺の手を握り空いた席へ引っ張っていく。 前よりも自然に手を触れられる。 前回は手を握っただけで緊張したけど。


「きゃっ!」


席へ向かう途中電車が少し揺れ伶奈が俺にぶつかってきた。ん? なんか柔らかい。むにむにしてる、これは……


咄嗟に伶奈を支えたのだがあろうことか伶奈の胸を掴んでいた。柔らかい物は揉んでしまう性がやばい所で発揮してしまった……


「え、瑛太君……」


「ご、ごめん! わざとじゃないんだ、急だったから押さえるところ間違って」


「わ、私男の人にあんなに胸揉まれたの初めて……」


「本当に悪かった!」


「もう! 瑛太君だから許す……」


伶奈は顔を真っ赤にしてそう言った。 俺伶奈の胸を触ったんだよな、伶奈には悪いけどはっきり言って心の中では喜んでいた。


「あ…… 今空いたところ取られちゃった」


「あー、本当だ」


すると伶奈は今度は逆に俺の後ろ側にピッタリとくっついた。俺の腰の辺りの制服を掴み体を密着させた。


「こ、これなら揺れたって大丈夫だよね……」


「あ、うん。そうかも」


今度は俺の二の腕辺りに胸が当たっている。 これは良いのだろうか? でも伶奈は下を向いているからよくわからない。


また少し電車が揺れ二の腕に胸が押し付けられる。 こうまでされると俺の理性が飛びそうなんだが……


だがなんとか耐え抜き電車が駅に着きホームに降りる。


「け、結構揺れたね…… 寄り掛かっててごめんなさい」


「あ、いや、伶奈って柔らかいんだな」


「え? 」


あ、思わず失言してしまった、胸が柔らかいとずっと思ってたからつい……

慌てて伶奈を見るとまた顔を赤くさせていた。


「ご、ごめん! 変な意味じゃないからさ! いや、変な意味に聞こえたかもしれないけど何もやましい事考えてないからな」


とても言い訳にならない言い訳をしてしまった。


「…………」


伶奈が肩をヒクヒクさせていた……


「伶奈?」


「…… フッ、フフフッ、ご、ごめん。 なんか面白かった」


「え? 面白い?」


「瑛太君言ってる事変な意味にしか聞こえなくなってきて。 フフフッ」


伶奈は何がツボったのか必至に笑いを抑えようとしていた。


「そ、そんなおかしかったかな?」


「うん。 瑛太君って面白いね」


よ、良かった、さっきの一連で嫌われてなくても幻滅されたかと思ったけどそんな事なかった? んだよな?


「いいなぁ」


「え? 何が?」


「凛ちゃんはもっと前から瑛太君と仲良かったもんね」


「あいつも物好きだよな。 でも友達思いのいい奴だよ」


「私もそれくらい瑛太君と仲良くなりたいな…… 」


ドキンとした。 この間凛の瞳に吸い込まれそうな感覚と似たような感じだ。


「俺と伶奈だってもう友達だろ?」


「うん! そうだよね、凛ちゃんに負けないくらい仲良くなるんだから!」


そして俺と伶奈はゲーセンに向かった。

そう、俺達の背後にいた存在に気付かずに……






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