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その18


「この部屋にその内岸本さんも来るのかなぁ?」


「さぁ、どうだろうな?」


「ねぇねぇ! 来たら何するの?」


「そんなもんわかるわけないだろ?」


「えへへ……… ねぇ? だったらさぁ、わ、私とくっついてみない?」


「はぁ? いきなりなんだよ?」


「だから練習だよ? もしそんな雰囲気になって瑛太がキモい事しないように耐性つけとかなきゃ」


「キモい事って…… そんなん岸本に出来るわけないだろ」


「私とくっつくの嫌?」


「嫌っていうかなんていうか…… 凛こそ良いのかよ?」


「私ここまで協力してるんだよ? もうどうにでもなっちゃえだよ」


「なんなんだ? そのよくわかんない理由」


「それで? どうなの? 瑛太はそんな意気地なしなの?」


そこまで言われたら俺ももう引き下がれない。


「わかったよ、やりゃあいいんだろ? ほら、来いよ」


「じ、じゃあ…… 私の隣に来て?」


「お、おう」


凛の隣に座ると凛の顔は紅潮していて少し涙目になっていた。 だけど普段より間近で見る凛の顔はとても可愛らしかった。


「やっぱやめとくか?」


凛は勢いよく首をブンブンと降った。


「し、失礼します」


すると凛は俺の膝の上に乗り抱きついた。 俺は凛の匂いに包まれる。 女の子と抱きつくのは初めてでなんだかとても心地良かった。


ああ、凛の匂いって凄くいい匂いだな、落ち着く。 凛は微かに震えている。


「凛?」


「ううん、なんでもないの。 緊張してるだけ。 瑛太の匂いって凄くいい匂い」


凛もそう思ってたらしく俺は臭いとか言われなくてホッとしていた。

俺の背中に回した手が更にギュッと力強く俺を抱きしめた。


そしてそのまま抱きついた状態で俺達は静寂していた。どれくらい抱きついていただろう。


流石にこれ以上は俺の理性が持ちそうにないので凛の肩をそっと叩くと凛は俺の肩に置いていた顔を俺の正面に向けた。


凛の顔が俺の目の前にあった。 凛の息が俺の顔にかかる。 凛は顔を真っ赤にして何かを迷っているような表情をしていた。


「え、瑛太ッ!」


その瞬間凛は俺にキスをした。 いきなりで俺の思考はストップした、凛の唇が俺の唇に当たりまたそのまま時間が止まったような錯覚に陥った。


ってあれ? 俺なんで凛とこんな事してんだ? 俺が我に返り唇を凛から離した。


「あっ……」


「お前……」


「こ、こ、これは1番肝心な練習なの! が、頑張ったね瑛太!」


「はぁ?! これが練習かよ? お前いくらなんでもやり過ぎだろ」


「だ、だって! 仕方ないじゃん! いつかは通る道なんだから」


「いや、だからって……」


すると下から母さんの声が聞こえた。 どうやら夕飯が出来たらしい。


「ほ、ほら、ご飯出来たってよ? 行こう?」


凛は俺の手を引いて部屋から出た。


「あ、あれ? お兄ちゃん、凛さん?」


ばったり奈々と出くわした。 奈々が俺と凛を見てニタァッと笑った。


「お2人さん大変仲がよろしい事で」


「や、やだ奈々ちゃん、そうかなぁ? えへへ」


「凛、お前さっきからおかしいぞ?」


「凛さんの何がおかしいの? お兄ちゃん」


「な、何がって…… いろいろだよ」


「へぇ、おかしい事したの? 一体何したのかなぁ? 凛さんに」


「俺じゃなくてこいつがッ」


危ない、まんまと口車に乗せられるところだった。


「何してるのー? 早く来なさい!」


下からなかなか降りてこない俺達に母さんが言った。


「ほら、瑛太呼んでるよ?」


「あ、ああ」


そしてリビングに行き夕飯を食べる。 凛を見た。凛が夕飯を食べている口を見ていて思い出す。


俺さっきこいつとキスしたんだよな? 一体凛は何を考えてあんな事したんだ? 練習とか言ってたけど……


「ん? 瑛太どうしたの? 凛ちゃんをジーッと見て。 凛ちゃんが可愛いのはわかるけどそんなに見つめると気持ち悪がられるわよ?」


「べ、別に見つめてねぇし」


「お母さん、凛さん物凄く可愛いからお兄ちゃん好きになっちゃったんじゃない?」


「あら〜、凛ちゃんごめんね、うちの瑛太が。 嫌じゃなかったら仲良くしてあげてね? 凛ちゃんみたいな可愛い子慣れてないのよ瑛太は」


「あ、いえいえ。 私こそ瑛太君に仲良くしてもらってとっても嬉しいです」


「あらあら、2人とも付き合ってくれればお母さん嬉しいわ」


「私もお兄ちゃんと凛さんが付き合えばいいと思うよ! 私凛さん大好きだし」


「何勝手に話進めてんだよ? 凛も困ってるだろ!?」


そして凛を見ると顔を真っ赤にさせて下を向いていた。


「…… そう言って頂けて嬉しいです、そうならったらいいなって私も思います」


「ほら見ろよ、そう答えるしかなくなってるじゃないか」


「あ〜、お兄ちゃんはこれだから……」


そして騒がしい夕飯が終わった。 凛は後片付けを手伝い今日は帰る事となった。


「瑛太、もう夜遅いんだから凛ちゃんを送って行きなさい!」


「お兄ちゃんをよろしくね? 凛さん」


「うん、ありがとう奈々ちゃん」


「何で俺が凛によろしくされるんだよ?」


「凛さんみたいな人なかなかいないよ? お兄ちゃんは幸せ者だねぇ」


「そうだって? 瑛太」


「はいはい、俺は幸せだなぁ、これで満足か?」


「うわぁ、お兄ちゃん棒読み」


「ごめんね、瑛太。 わざわざ送ってもらって」


「まぁいいから行くぞ」


そして俺は凛を家まで送る事となった。

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