その11
私って嫌な女だな…… 瑛太には協力するからと言っておいてどんどん瑛太と岸本さんが仲良くなっているのが許せない自分がいる。
瑛太が岸本さんとの話題を出す度に私の心は壊れそうで必死に無理して自分の心を誤魔化そうとしていた。
どうして私じゃないんだろう? っていつも思う。 理由は簡単、いくら私が可愛いと言われても私には瑛太を夢中にさせる魅力なんてないんだ……
告白はされるがそれは瑛太ではない。
瑛太から告白されたら私は嬉しすぎてどうなってしまうかわからない。
少し前の事……
「ありがとう、どうして私に告白してくれたの?」
「長浜凄く可愛くて前から好きだったんだ」
そんな事を言われた。 これが瑛太の口から出たらどれ程幸せか……
でも私は瑛太からそんな言葉を貰うだけの魅力はないって事か。
「ごめんなさい、私好きな人いるんだ。 だからごめんなさい……」
「そうなんだ…… 凄く残念だよ。 長浜さんはその好きな人に告白しないの?」
「うん、勇気がなくて…… それに私はその人にずっと片思いしてるの。 だからその人の答えを聞くまでは誰とも付き合う気なくて」
「長浜さんでも自信ないの?」
「あるわけないよ、私の負けはほぼ確定してるから。 だけど私少し諦め悪いみたい」
魔が差してそんな事を言ってしまった。
でも私本当に諦め悪いし、バカなんだよね。
瑛太に良い所見せようとして絶対にくっつかせたくない岸本さんとの恋路を協力しようとするなんて……
だけどそうでもしなきゃ瑛太と仲良くなるなんてきっかけも作れないくらい私は不器用だったし。
入学して瑛太を見た瞬間から運命だと思った。 あの瑛太が私の目の前にいた。 しかも隣の席なんて。 その時は私は舞い上がっていた。
こんな偶然ってある!? 私は神様に感謝したい気分になっていた。カバンにつけているお気に入りの花のブローチを見つめ私は微笑んだ。
どのタイミングで話しかけよう? 瑛太の事だから私を見て何も反応しないって事は私は眼中にないのかな?
だけどしばらくして私は気付いた。 瑛太の視線の先にはいつも岸本さんがいた。 もしかして好きなのかな?
私は思い切って聞いてみる事にした、話し掛けるきっかけにもなるしと……
「ねぇ」
「え? 俺?」
「そうだよ、他に誰かいる? 隣の席なんだからせっかくだし仲良くしよう?」
「ん、ああ。 仲良くしてくれるなら……」
「じゃあその印に瑛太って呼ぶね! 私も凛でいいから」
「…… わかった、よろしくな凛」
「えへへ、はい! よくできました」
「俺、女の人とあんまり喋った事ないからさ。 よくわかんないんだけど」
「だったら私と喋ればいいじゃん? 今から私と瑛太は友達だよ! わかった?」
「いきなりだな…… でも友達か。 うん、いいな友達だ」
「ところで聞くけどさ」
「何?」
「瑛太って岸本さんの事好きなの?」
「はぁ!? 一体何で?」
「瑛太の視線が岸本さんに行ってるのわかるよ? だって露骨だもん」
私は嘘をついた。 私が瑛太の事をずっと見てたからわかっただけだ。 でもそんな事は言えない。
「俺そんなに露骨に見てた?」
「うん、友達なんだから相談乗るよ?」
「…… まぁそこまで言うなら。 凛の言う通り俺岸本の事好きだよ」
それを聞いた瞬間私は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。 もしやと思っていたけどやっぱり好きなんだ、いきなり失恋?
私はあまりのショックに数秒言葉を失った。 瑛太の事ずっと好きだった、瑛太が目の前にいるなんて本当に嬉しかった。 なのに瑛太の視線には私はいない。
岸本さんなんだ。 確かに岸本さんは可愛い。 だけど私だって負けてないと思う、 だけど瑛太のタイプは岸本さんのようだ……
頭の中がクラクラして私はなんて言おう、てかどうしよう? と思っていると……
「どうした? 」
瑛太が私を気にしたのかそう尋ねた。
いけない、いけない! でもどうしよう? 無理だよなんて言ったら嫌われそうだし瑛太は岸本さんを好きになっちゃ私は嫌なんても絶対言えない。
私には否定できない。 だって瑛太の好きな人を否定したら私はその瞬間瑛太の友達じゃなくなる。 だったら……
「えーと、私も協力するよ!」
「何を?」
「だから! 瑛太が岸本さんと上手くいけるように!」
「え? そんな事してくれんの?」
「友達でしょ? それに私ってモテるし参考になると思うよ?」
「自分で言うなよ…… まぁ確かに凛って可愛いけど」
え? 私の事可愛いって思ってくれてるんだ?
「じゃあ凛に協力してもらおうかな……」
でも私はバカだ。 ますます自分で自分の首を絞めてるようなものだ。 こんな事を提案したら苦しむだけなのに。
だけど瑛太と約束したんだ、私は覚えてる。 瑛太が困ってたら助けるって。 瑛太が悩んでいたら力になるって。それだけは破りたくない。
それが瑛太の為なんだよね…… だから私は瑛太との約束を守るよ。 泣きたい気持ちを押し殺して私は言った。
「うん、私に任せなさい! きっと上手くいくよ!」




