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二十七 学友の面談

「これで八人ですね」

 

 翌日の夕方、タエとニールは候補者を八人まで絞り込んだ。

 昨日同様ぎこちない二人であったが、時間が経つにつれて、二人はカリダの学友選びという作業に集中し、余計な気を使うことなく、候補者を選びきった。


 素養はもちろんのこと、周りの者への態度、日ごろの言動などから性格を判断して、二人は話し合った。

 優しさが一番と思うタエに対して、二―ルは公平さを大事にしていた。

 お互いの意見を噛み合わせながら、選び、落としていく。

 今日で候補者を選びきるという思いを二人は共有しており、昼食も簡単に済ませて作業を続けた。途中カリダがお茶に加わったりと邪魔も入ったが、夕刻には作業は終了した。

  

「それではこの名簿を明日陛下にお渡しします。」

「よろしくお願いします」


 ニールは席を立ち、タエに向かって退出の礼をとる。

 

(終わってしまったわね)


 寂しく思う自身を詰りながら、彼女はただ彼の背を見送ることしかできなかった。



翌日、タエが王室へ伺い、候補者最終名簿をライベルに渡す。

傍に控えていたクリスナにそれを渡し、彼はざっと八名の名を見て頷く。


「家柄に少し……。王妃様、お選びになった理由を教えていただいてもよろしいですかな」


 タエは緊張しながら、彼女とニールが選んだ八名の選抜理由を述べた。ニールと話し合った結果なので、彼女はこの決定に満足していた。なので、よどみなく自信を持って、説明する。


「なるほど。そういうことなのですね」

「よく調べたな。タエ」

「私ではございません。ニール様が調べてくれたおかげです」

「そうだな。だが、お前もよく情報を吟味して、よい候補者を選んでくれた。感謝する」

「陛下……。私などには勿体ないお言葉でございます」


 タエは自分ひとりの功績ではないし、そのように立派なことでもないと頭を下げる。


「本当に……。まあよい。それがお前という人であったな。さて、クリスナ。この候補者を集めてくれるか?王命であり、候補者同士の諍い、または面談前に候補者が事故を起こすようなことがあれば、厳密な処分を下すとも伝えろ」


 貴族のうちから候補者を選んではいるが、タエとニールが選抜したものは要職についていない貴族の子息も入っており、やっかみで何か策を弄するものがいるかもしれないと、ライベルが危惧したため、このような王命を発することになった。

 

 数日後、面談の日は設定され、小広間で実施する。

 

 子息の年齢は九歳から十二歳であったが、小広間に入ることができたのは子息だけで、付き添いにきた父親たちは広間の前で牽制し合うことになる。

 面談は意外にも早く進み、そんな牽制もむなしく、八名の候補者から二人が選ばれた。二人の学友はどれも要職についていない貴族の子息だった。

 選ばれた子息の親のほうが戸惑うくらいで、お互いに仲良く顔を見合わせていた。


 余計な者が邪魔をしないように、クリスナの仕事は速かった。その日のうちに二名の氏名を公表し、翌日から王宮へ学友として招くことにしたのだ。

 もちろん、学友に選ばれた者が妨害をうけないように、王宮からの送迎馬車をつけることにし、カリダの学友選びは無事に終了した。



「ニール!」


 夕刻に時間を無理やり作ったカリダは、警備担当の近衛兵に無理を言い、近衛兵団長室に訪ねてきていた。

 このような場所に王太子を連れてきた部下を、ニールは注意をしようとしたが、カリダがすぐに庇い、ひと睨みだけで終らせる。

 近衛兵を下がらせ、ニールはカリダに椅子を勧めた。

 

「ニール。僕の学友が二人決まったよ!どれも面白い奴ばっかり。退屈しそうもない」


 面談のことだろうとすでに予想しており、ニールははしゃぐカリダを優しく見つめる。


「ニールとタエが八人まで選んでくれたんでしょ?おかしな奴はいなかったよ。性格がきつい奴はいたけどね。でも、学友になれなくても、将来一緒に働けたら、凄いだろうなって思う奴だった」


 カリダの話を聞きながら、彼は嬉しくなって微笑む。

 タエが選んだ十五人から二人で八人まで絞り込んだ。

 タエの考えを尊重しつつ、自分の考えを述べる。それに対して、彼女が反論し、とても楽しい時間だった。

 

(三年前に戻ったようだった)


「ニール?」


 ふと、カリダの呼び声で、意識を引き戻される。


「すみません」

「いいよ。ニールも参加したかったよね」

「そんなことはありませんよ」

「ちぇ、つまんないの。参加したかったと思ったのに」

「殿下。冗談です。できればその場にいたかったのは本当ですが、私がいなくも陛下、王妃様、殿下できちんと選べれたじゃないですか」

「そうだけど……」

「殿下……。明日からお二方と勉強が始まるのでしょう。うかうかとしていて大丈夫なのですか?ずいぶんサボっていたようですが」

「サボってなんかいないよ。ただ、図書館で本を読んでいただけなんだから」

「やはりサボっていたんですね。教師たちが怒る顔が浮かびます」

「怒ってなんかいないよ」

「それはそうですよね。殿下に怒りなどぶつけられないでしょうし」


 ニールが揚げ足を取るように次々を言い返し、カリダは頬を膨らませる。


「わかったよ。わかった。部屋に戻って明日に向けてちょっと勉強するよ」

「はい。よろしいことで」

「ちぇ。なんかクリスナみたいなこと言うんだから」


 カリダが不承不承ながらも椅子から立ち上がり、ニールが外の近衛兵を野太い声で呼ぶ。

 するとすぐに兵士が入ってきた。


「殿下を部屋まで送ってやれ。寄り道するなよ」

「はい!」

「なんだよ。その寄り道って」

「もう遅いので図書館などに立ち寄りませんように」

「わかってるよ」


 カリダは苛立ちをあらわにそれでもニールに手を振るのを忘れず、近衛兵に伴われ部屋を出て行った。

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