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身代わりの王妃は許しを請う。  作者: ありま氷炎
二章 身代わりの王妃
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十五 暗殺計画

 パルは急いでいた。

 今日実行される暗殺計画をクリスナに告げるため。


 屋根裏をつたい、最後に地面に降り立つ。

 その瞬間、先ほど刺された傷口から血が溢れ出て、痛みで動けなくなった。


「殺せ!その女は我々の計画を知っている。外に出すな」


 ライベルの暗殺計画はキシュン家の使用人だけではなく、貴族もかかわっていた。

 それは、あの騒動でエセル側に加担した貴族だった。家の取り潰しを免れた貴族たちは、それでも領地を減らされるなど影響があり、ライベルを逆恨みするものがいた。

 クリスナも予想していたはずなのだが、騒動から五年もたち動きがなかったため、完全に油断していた。


「死ね!」


 振り下ろされる剣。パルは死を覚悟した。

 けれども剣は打ち返された。


「新手か!」


 パルの前に黒装束を身に着けた背の高い男が立っていた。


「ハイバン……」


 男はパルを抱えると、屋敷から出てきた者たちを蹴散らして、走り出した。

 体が揺れるたびに痛みが走る。

 そのうち全身が痺れるようになって、パルは意識を失いそうになった。


「お、ねがい。クリスナ、様のところへ」

「話すな。連れて行ってやる。それまでは黙っていろ」




 本日はライベルが街へ降りて、孤児院の視察をする日であった。

 常に笑わず不遜な態度にも見えるライベルは、子供を怖がらせることが多い。なので、孤児院の訪問の際は、怖そうに見えて子供受けがいいニールを連れてくるのが普通であった。

 しかし、今日は用事があるということで、姿を見せず、代わりに近衛兵団副団長が来ていた。

 彼は筋肉質ではなく、優男風で、子供受けがよい。

 おかげで、ライベルは子供に遠巻きにされながらも泣かれずにすんでいた。

 園長から説明を受けた後、食事状況なども見ることになっており、ライベルは粗末な食事を子供たちと取った。育ち盛りの子供に与えるにはあまりにも粗末な気がして、援助がもう少し必要だと判断し、孤児院の視察を締めくくる。

 クリスナに相談しようと、思案をしながら馬車に乗り込んだところで異変をおきた。


 車内に男が隠れており、ナイフで切り込んできた。

 反射的に身をそらした後、車外に出ようとして動きを止める。


(このまま、殺されるのはどうだ。カリダももうすぐ五歳だ。後継については心配はない。元からカリダがいなくてもニールが継げばよい話であったのだ)


 ライベルは男が再びナイフを構えるのを見ていたが、抵抗をやめた。


「死ね!エセル様の恨みをしれ!裏切り者が!」

「エセル?裏切り者?」

「てめぇなど生まれてこなきゃよかったのに!エリーゼ様を殺しやがって」


 男の顔に見覚えはない。

 だが、彼の発した言葉がライベルの傷ついた心をさらに傷つける。


「死ね!」


 男がナイフをつきたてようとした。


「陛下!」


 ぐいっと、ライベルの体が車外に引き出される。

 入れ替わりに兵士の一人が中に入り、男の断末魔が響いた。


「間に合ったか!」


 ライベルの無事な姿を見て、安堵の声をあげたのはニールだった。

 全力で走ってきたのか、肩を大きく揺らし、その息は荒い。

 視察警護のため連れてきた近衛兵半数以上が捕縛されたり、地面で血にまみれ倒れていた。

 暗殺計画とは、ニールを警備から外し、その目を掻い潜って当日の警護の兵士の中に、息のかかった者を紛れ込ませることだった。

 パルが命がけで、クリスナに伝え、ニールがそれを知って、彼と面談していた貴族を捕縛。そして、ライベルの元へ駆けつけた。

 暗殺計画はこれで終わり、そう考えていた。



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