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SWザターン 3

他の乗員を見渡すと、制服を着た軍人達は皆直立不動で聞いている。成る程良く訓練された軍人だ。

 だが俺やユージと同じく、他所から集められただろう人達はザワザワとしている。


 このような戦闘艦に俺たちのような一般人が乗り込む事はこの時代ではごくごく当たり前の事であり、冷戦終結後は正規軍人よりも従軍人員の方が多いくらいだ。


「ワタシが説明するよ。Gコンは重力を電力と熱で制御する事が出来る装置よ。電荷を掛ける事で重力が発生する訳だけど、効果範囲はこの船くらいが限界ね。その代わり、収束して指向性を持たせる事も可能よ」


「それから、慣性は熱エネルギーに変換出来るの。例えばこの船を(光速の)10%から相対停止した場合だけど、制動距離は0メートル。発生する熱エネルギーはコーヒー一杯分のお湯を沸かせるくらいかしら?」っておいおいおい!

 相対停止とは、広義では目標との相対速度が停止している状態なのだが、この説明の場合は地球原点での相対停止なのだろう。地球から見てほぼ止まって見えるという事だ。

 10%からの減速で制動距離0メートル。つまり、その場でピタリと止まる訳だ。ありえない。

しかも、そんな非常識な制動で得られるエネルギーがコーヒー一杯分のお湯。はっきり言って笑えてくる。


 周りも騒然となる。ありえないとか、そんな馬鹿なとか、みな信じられない様子だ。


「トモ君ありがとう。Gコンは分かって頂けたと思う。詳細はホロウォッチで確認してくれたまえ。」

「では次に、もう一つの小箱だが、こちらは現在も研究が行われている。現時点で使用可能なものは、SpaceTimeTransitionEngine。時空転移動力炉。つまり、ワープ装置である。」

 更に騒然となる。ワープなんて、SF小説やアニメの世界の話だ。


「ワタシが説明するよ。司令はワープ装置って言ってるけど、少し違うの。皆んなは相対性理論って知ってるよね?光速度不変の原理から、光速を超える為のワープ航法を紙で例えられる事があるんだけど、紙の両端にA地点とB地点の点を書いて、紙をくるっと曲げてAとBをくっ付ける。この時に宇宙船をAからBに移動して、最後に紙を広げるとワープの完了。って言った所かしら。この空間の歪曲はGコンで行えるわ。」

 良くあるワープの説明だ。空間を捻じ曲げて距離を縮め、近づいたAからBに移動して、空間を元に伸ばすといった方法だ。


「方法としては間違って無いんだけど、一つ矛盾があるのよ。距離と速度と時間の和は乱せないって事。三角形を思い浮かべてみて?それぞれの頂点は距離、速度、時間。その総和が絶対時間であり、三角形を乱す事は出来ないの。ワタシはこの三角形を絶対三角形って呼んでるんだけどね。」

「そこでSTTエンジンの出番なんだけど、STTエンジンは時空に干渉して過去へと飛ばすの。これによって絶対三角形の形を崩す事なく小さくする事が出来るのよ。見かけ上で点になるまでね。」

 なるほど、距離を移動するには、速度と時間が必要で、それは三角形なのか。その三角形を小さくする為に時間を過去に飛ばす。つまり縮める。

それによって距離と速度が近づき三角形が小さくなると。


「つまる所、STTエンジンはタイムスリップを行うタイムマシンとも言えるわね。でも、残念ながらタイムマシンにはなり得ないわ。時間を変えても絶対三角形は崩されないからね。」

 残念ながら、タイムスリップは出来ないようだ。絶対三角形は崩されない訳だから、最小の状態でも点にしかならず、所謂瞬間移動しか出来ない。未来に行けば、速度と距離も伸びてしまう訳だから、ウラシマ効果と変わらないわけだな。


「詳しく説明すると本が何冊も書けちゃうから、どうしても知りたければ聞きに来てね。説明するわ。」

と、ドヤ顔で胸を張る。


「トモ君ありがとう。STTエンジンについては、研究が進み次第皆に報告したいと思う。」

「最後に、本艦の目的及び目的地だ。発掘された遺跡の壁画には、ある星と惑星の位置が描かれていた。おうし座星群GSC653:1366『Space World』417光年先の恒星だ。」

「地球連合と火星連邦は、合同でこの星周辺を調査する事となった。我々はこの星域に向かい、遺跡を残した文明との接触を試みる為、調査に向かうのだ。」

 周りは一段と騒がしくなる。未知の文明との接触。それは宇宙人との接触なのかも知れないからだ。


「出航は2日後、慣熟航行を行いながら地球方面へと向かい、冥王星付近への短距離跳躍試験を行う。各自、万全を期すように。」

ビシッと敬礼を行うアツシ司令。その横ではジュンが珍しく敬礼を行い、向こう隣ではトモがドヤ顔で胸を張っていた。


「ユタカさん、なんだか凄い話になっちゃてますねー。私、降りても良いですか?お腹痛くなって来ましたよ…」とユージ。もちろん強制連行だ。

「もしかしたら、異星人に会えるかも知れないんだぜ?この機会逃してたまるかよ!お金もガッポリ稼いで、うちの名前も売りまくれば、俺も行く行くは工場持てるかもな!」


「それにしても、船内って1Gなんですよね?私、月生まれなんで1G苦手なんですよ。」

「ま〜た始まった。人類の基準は1Gなの!慣れろよな。」


 417光年先の文明か、一体どんな奴らなんだろうな…

誤字脱字や表現の指摘が御座いましたらコメントお願い致します。

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