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SWザターン 1

「おーデカイな!木星宙域は初めてだ。」

「私、やっぱりあの台風の目は苦手ですよ。思った以上に大きいし、怖いですよ」


 木星第3衛星ガニメデ、水星よりも大きな衛星に建設された備蓄基地へとやってきた。木星から採取された資源は、一旦ここで備蓄され、地球や火星へと運ばれる。


 木星から採取される資源は、主に水素とヘリウムで、水素は水や水素エンジンの燃料、熱核ロケットのプロペラントとして、ヘリウムは核融合炉の燃料として利用される。



 ジュンに連れられて、俺とユージは基地総司令部へと向かう。ガニメデは0.14Gほどの重力しか無いのだが、無重力に慣れきってしまっている俺とユージは、ヨタヨタと歩く。

「ユタカもユージも、トレーニングサボってるだろ?ガニメデのGでそれじゃあ、この先キツイかも知れないぜ?」と、ジュンは笑う。

キツイって事は、どこかの惑星に行くのか?重力下溶接は最近ほとんどやっていない。

 やがて、重厚なドアの前に到着した。ドアには『総司令官室』と書かれている。


コンコン。「SWザターン艦長ジュン一等宙佐。入ります。」連合職員なのは知ってたが、宙佐ってコイツ佐官かよ?その前に、艦長てなんだよ艦長って、SWザターンなんて船、聞いたこと無いぞ。

疑問ばかりが出て来るが、俺たち3人は室内へと通された。

 高級そうな調度品が立ち並ぶ部屋の奥にある大きな執務机に、白髪混じりの男性が座っていた。


「長旅ご苦労。宙佐、そちらの二人が君の眼鏡に掛かった職人さんかね?私は本司令部の総司令官を務めている、『アツシ』だ。宜しく頼む。」

 俺とユージは簡単な自己紹介を行い、雇用契約書の作成を行う。本来なら担当部署官との打ち合わせのハズなのにと思いつつも、契約書に目を通す。


 仕事内容としては、調査船「SWザターン」の専属修理工で、形態は完全請負。つまり、一件の工事で幾らの単価と言った具合での支払いである。

俺たちの場合、破損箇所が多ければ多いほど、その利益は大きくなる。通常航行での従事では業務委託が多く、この場合は1日幾らと言った契約なので、大きな儲けは期待出来ない。


 その他特記事項として、生涯守秘義務と書かれている。これは連合法で定められた法律で、収益性、秘匿性の高い情報について、その秘匿を強制する法律だ。違反者には無期懲役、または死刑と定められている。その名の通り、生涯有効な契約であり、契約の際は連合発行のDNA鑑定書(印鑑証明の様なもの)と血判が必要である。


 契約書は数ページに渡り、細かく書かれている。読み飛ばして契約し、後々泣きを見る事も多い為、納得するまで読んでいた。


「アツシ司令、本契約書にトレーニング時間の指定が見当たらないのですが、どうなってるのですか?」宇宙での勤務は、例外無くトレーニング時間が指定される。無重力下では筋肉が衰えてしまう為だ。


「ああ、ザターンは出航後、段階的に重力制御を行うので心配はいらんよ。最終的には1Gに設定される。」ふむ、シリンダー型かスタンフォードトーラス型のコロニータイプなのかな?乗船人数は5千人だから、超キロメートル級か?

「ザターンは超キロメートル級なのですか?」

「ふむ、ジュン一等宙佐からは何も説明を受けて居ないのかね?ザターンはキロメートル級バトルシップが原型だよ。」ジュンからは聞いて居ない。

バトルシップが原型なのか、重力制御はどう行うんだ?

「ま、乗ったら分かるさ。司令、彼等の腕は保証出来ますし、ユタカは細かい所は気にしないタチなんで大丈夫でしょう。」と、軽く言う。

「私、軍艦苦手なんですよ。隔壁通る時にいっつも頭打ちますからね。」もちろん聞き流す。

「ユタカさん、ユージさん。他に質問はあるかね?」

「期間は未定とされて居ますが、どれ位が目安ですか?」やはり、終わりの見えない仕事はキツイ。

「期間は、船内時間で一年を予定している。勿論、調査船である為調査の結果如何では、伸びる事も短縮される事も踏まえた上で、検討して頂きたい。福利厚生や娯楽は充実しているよ。船内では自由恋愛となっているが、規律は守ってもらうよ。」自由恋愛可は嬉しい。流石は調査船と言った所か。

「分かりました。この条件で契約させて頂きます。」契約書にサインし、続いて生涯守秘義務協定書にもサインをし、血判を押す。

「これで君もザターンの乗組員だ。出航前に全乗員を集めたオリエンテーションがあるので、参加する様に。宜しく頼むよ。」アツシ司令に敬礼し、3人は部屋を後にした。


「所でジュン、お前艦長なのか?」

「まあな。走り屋時代から乗り物好きだったけど、気付けば船乗りになって艦長さ。それより、船の図面はデータで送るから、二人で目を通しておいてくれよな。オリエンテーションは4日後、遅れるなよ!俺はまだまだ用事あるから、じゃあなっ。」と、ジュンはピョンピョン跳ねながら去って行った。


 4日後のオリエンテーションはザターン船内で行われ、その3日後に出航予定だ。


「あ、ザターンの行き先聞いてなかったな。ジュンに聞いとくか。」スマホを取り出し、ジュンにメールを送る。数分後、「ポン」となったスマホに、ジュンからの返信が書かれていた。


「言ってなかったっけ?行き先はおうし座星群GSC653:1366『Space World』だよ。距離は417光年だな。」


 は?417光年??コールドスリープでもするつもりか???

高速船と言えども、最速でも光速の15%だ、そんな遠くまで行けるはずはない。何を言ってるんだとメールを送るも、ジュンから返事が届く事は無かった。

誤字脱字や表現の指摘が御座いましたらコメントお願い致します。

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