イザナミ
これは、天の川銀河とは違う、他の銀河の話である。
ある星は『イザナミ』と呼ばれ、またある星は『イザナギ』と呼ばれていた。
遥か昔、2つの星の種族は1つの星で生まれた。
やがて違う星へと袂を分かち、違う星で育った人々は、星間戦争へと突入した。
ただ意見の相違があったに過ぎなかった。しかし、科学の進んだ戦争により、1つの星は、永久に消滅してしまったのだ。
惑星イザナミの元首、トモの父親は言った。
「トモよ、お前は人工衛星『イザナミ』へと乗り込み、脱出するのだ。やがてこの星は滅びる。これもまた運命だったのだ、悲しむ事は無い。お前は賢い子だ、復讐や報復には何も意味は無い。我々は同じ星で生まれた民だ、またお互いに手を取り合い、暮らして行く事が出来るはず。イザナミとイザナギの運命はお前に託す。強く生きろ!」
「わかりました、お父様。ワタシが新たな指導者としてイザナミの民を連れ、イザナギとの架け橋となりましょう。女子供ばかりではありますが、きっと新たな地で繁栄してみせましょう!」
イザナミの政治、科学研究の中枢を担っていた人工衛星『イザナミ』は、避難民凡そ100万人を載せ、フロンティアを目指して銀河を後にした。
超長距離跳躍を実施し、新たなる大地を求め、天の川銀河に辿り着いたイザナミに、不運が訪れる。
人工衛星『イザナミ』管制室は、危機に瀕して居た。
「トモ様、超長距離跳躍の影響でSTTエンジンに異常が発生しました!今の状態ではこれ以上ジャンプ出来ません!」
銀河間の跳躍を行った結果、イザナミのSTTエンジンは壊れてしまった。イザナミに乗った難民達は女子供ばかりであり、復旧の目処は立たない。
「この宙域には居住可能惑星は確認出来ませんでした。ですが、500光年以内には生命反応のある居住可能惑星の存在が1つだけ確認出来ます。そこまで辿り着ければ良いのですが、現状ではどうしようもありません…我々はここまでなのでしょうか…」
STTエンジンが壊れてしまっていては、光速を超える事は出来ない。彼女達が発見した惑星とは地球の事ではあるが、辿り着くまでに食料が尽きてしまうだろう事は誰の目にも明らかであった。
「大丈夫だよ!元首用の緊急脱出ポッドがあるからね!」と、トモはドヤ顔で言った。
短距離跳躍しか出来ないが、緊急脱出ポッドは一機だけある。しかし、そのポッドは一人乗りであり、全員を救う事は不可能なのだ。
「説明するね!あのポッドにはマイクロSTTエンジンとGコンが搭載されてるの。短距離しか飛べないけど、その惑星まで行って救助を呼んでくれば良いのよ!簡単でしょ?」ふんっと胸を張る。
「しかしトモ様、その星の文明レベルは不明ですし、そもそもポッドは一人乗りです。誰を向かわせるのですか?」
「何言ってるのよ?元首専用なのよ?ワタシしか行く人は居ないでしょ!!」またしてもドヤ顔。
「文明レベルは不明だけど、生命反応はあるんでしょ?なら、文明が育つまで待つわよ。」
困惑する人々に、トモは続けて説明する。
「縮退星が見えるわよね?イザナミはあの周りを光速で飛んでてちょうだい。見かけの時間は止まるから、ワタシが帰るまではすぐよ!それに、ポッドはコールドスリープが出来るの。文明が育つまで、何年でも何千年でも何万年でも待つわよ。皆んなの為にね!」
100万人のイザナミアンの運命を背負い、トモは一人ポッドに乗り込んだ。
「イザナミ時間では直ぐに戻ってくるから、皆んな待っててね!」
そう言い残し、トモは短距離跳躍を行った。
何度も何度も…地球を目指して…。
人工衛星『イザナミ』は、SWの周りを周回する。どんどんと速度を上げ、やがて光速へと近付き、光の輪になった。
ポッドに乗ったトモは、ガニメデに流れ着いた。
「参ったわ…これは想定外だったわ…。」
コンソールの推進剤残量とGコン用バッテリー残量を示す目盛りは、0を指して居た。緊急脱出ポッドゆえ、推進剤とGコン用バッテリーは最低限しか積まれていなかったのだ。
「生命維持装置のバッテリーはまだ残ってるからコールドスリープには影響無いけど…ここで待つしか無いか…。」
トモが辛うじて不時着出来た場所。それこそがガニメデであった。
ポッドの中で過ごすのに寂しさを感じたトモは、ガニメデ内部にあった空洞へ入り込みコールドスリーパーを設置した。自身の身に何かが起きた場合でも、異星人に発見された時に簡潔に分かるよう壁画を残し、トモは眠りについた…
そして、凡そ一万年後、人類に発見されるのであった。
トモが人工衛星『イザナミ』を経ったのは、凡そ10万年前。そして、ガニメデに漂着したのは凡そ一万年前。
この間に何があったのか…トモ自身も説明出来ないのであった…
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