三連星を回る光
おうし座星群GSC653:1366『Space World』は実在する恒星ではありますが、本作では実在する星とは異なります。
ザターンのジャンプは200回を超え、目標であるおうし座星群GSC653:1366『SpaceWorld』(以下SWに省略)まで数光年の距離まで近付いた。
この宙域にて1週間の模擬戦闘訓練が実施される為、現在は通常航行中だ。
「あれが目的地か。三連星って言うからどんな感じなのかと気になってたけど、まさかこんな形とはな…」
「私、あれは苦手とかそんな感じじゃなくて、気味悪いですよ…」
目的地手前という事もあり、外板のチェックの為に船外活動しているのだが、遠くに見えるSWの不気味な姿に恐怖した。
「あれ、どうなってるんだ??トモさん説明してくれ!」ホロウォッチに話し掛ける。
疑問があればトモさん。いつの頃からか、全員の共通認識になっていた。
「ワタシが説明するね!って言っても、あまり詳しく話すとアツシ提督とジュン艦長に怒られちゃうから、話せる所だけだよ?」
度重なる機密情報漏洩未遂で厳重注意を受け、2G環境の反省室に入れられたトモさんは、若干大人しくなった。
ちなみに、分からない事を聞く時にトモさんを呼ぶ事は、『トモる』と呼ばれているらしい。
「SWは縮退星の周りを回る3つの恒星の総称なのよ。ブラックホールに落ちる3つの星とも言えるわね。」
そう、SWの中心部は、暗黒の塊が見えるのだ。
正確には、遠くに見える星々が『見えない空間』に遮られているような感じであり、更にはその空間の周りは歪んで見える。
「じゃあ、その周りの尾を引いてる恒星がSWの三連星って事か?」
「そういう事。一つはブラックホールの裏に周ってるから、見えてるのはその内の二つだよ。」
何故かドヤ顔のトモ。
「それじゃあ、その更に外側の光の輪?みたいなのはなんだ??」
尾を引く星の更に外側に、小さな光の輪が見えるのだ。
「説明するね!あれは…」フォンッとホログラムが消える。
「こちら、ジュン艦長。トモはホント危ないなぁ。ユタカ、ここから先は機密なんだよ。スマンな!」
トモさんとの通信は、強制切断されてしまった。どうやらここから先は機密情報のようだ。
目的地に近付き、ジュンも少しピリピリしているように感じた。
一方その頃、ザターン格納庫内。
ザターンには、戦闘用航宙機が42機搭載されている。その他に内火艇が4機あるが、その内の一機は研究班が改装中だ。修理工ブリーフィングルームはすぐ隣なので、何度か治具を作ったり部材の取り付けを行った。
SWに近付くにつれ、航宙訓練も盛んになって来ている。
ザターンの格納庫は船体後部の中央付近にある。船体を左右に貫く形でリニアカタパルトがあり、出撃の際は船首方向を向いたまま真横に撃ち出される。
また、内火艇は船体下部から撃ち出されるが、内火艇の機首方向のまま撃ち出される。
戦闘機同士の模擬戦闘訓練や、ザターンを模擬目標とした対艦戦闘訓練、ザターンからの対宙戦闘訓練等が行われる。
職人達はと言うと、緊急対応の訓練だ。
被弾時の応急処置やその際の人員振り分けなど、実戦に沿った形で訓練をしている。
ザターンは訓練を終え、再びSWを目指しジャンプする。SWまで残り10日程に迫っていた。
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