君という女の子は
「あの、昨日のテレビ番組見た?」
「○○○○のこと?」
意外とすんなりと会話に入れた。
ただ、気まずさはお互いあるようで。
「あー、あの場面面白かったなー」
「う、うん。そうだね…」
会話が続かない。
想定内のことだ。プランBに入る。
「そう言えば△△の新刊買った?」
「いや、まだ…」
「そうか、いやーあのシーンは…」
「言わないで!」
「ご、ごめん…」
くそ、埒が開かない。
戦いは常に二手三手先を読むべきだ、
とは誰かの言葉だったか。
まさかこんなハードな事とは思いもよらなかった。
どうしようか、ネタはあと一つしかない。
「あの、課題を見せていただけないでしょうか…」
既に終わっている課題のノートを
一旦借りることで返す時にまた会話
することが出来るという算段だ。
「あんたね」
そこで突然君の口調が変わる
「考えすぎだよ」
僕はこのとき察した。
君は僕の算段など容易に見透かしていたのだと。
「課題なんて終わってるくせに。」
告白する前に見ていた笑顔がそこにあった。
君は凄いな。僕より数段大人だ。
「またいつも通りに会話しよ?」
「はは、参った。全部お見通しだったんだね。」
「昨日1日ずっと考え事してるみたいだったからね。」
僕を見ていてくれたという事実に
嬉しさがこみ上げる。
もっとも、振られたあとに感じる
嬉しさに、それ以上を何も期待出来ないのだが。
大人めいた考えを凝らしていた昨日の
自分が馬鹿らしくなるほどに、
君は、「良い」女の子だった。
君を好きになって良かった。
君を彼女に出来たわけでもない。
見据えすぎた将来設計は全て反故にされた。
それでも、僕の心に残るのは充足感なのだ。
不思議なものだ。
こうして、元の関係に近い形へと
僕たちは収束していった。