SS.拝啓、10年後の君へ
久しぶりに帰省した故郷で、子供の頃よく一緒に遊んだ従妹と10年ぶりぐらいに会った。
僕のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ、その口調こそ昔のままだったが、今の彼女は記憶にある女の子ではなく、軽く化粧までしてすっかり大人の女性になっていた。
彼女を異性と意識してしまってうまく距離感を掴めないでいる僕に彼女が屈託のない笑顔で言う。
「ねえお兄ちゃん、最近納屋を掃除してたらこんなのが出てきたんだぁ。お兄ちゃんが来たら見せようと思ってたの」
ぼろぼろの古い画用紙。それは手描きの地図だった。
『せみの木』『めだかのいけ』『おじぞうさん』『ひみつ基地』といったやけにひらがなの多い地名とイラストが描き込まれた近所の絵地図。
そういえば、子供の頃にこんな物を彼女と一緒に作ったっけとおぼろげな記憶を掘り起こす。
「こんなのまだ残ってたんだな」
「うん。それでさ、この×印ってなんだったか覚えてる?」
『ひみつ基地』と『せみの木』を結ぶ線と、『おじ ぞうさん』と『めだかのいけ』を結ぶ線の交差した場所にマジックで×印 が書き込まれている。
「……んん~? いや、ぜんっぜん記憶にない。覚えてる?」
「あたしも全然覚えてない。じゃあさ、今からここに行ってみない? 宝物が埋まってるかもよ」
正直、子供の宝物なんか大したものじゃないだろうけど、ちょっと面白そうなのでスコップを担いでその場所に行ってみた。
この辺りだろうと目星をつけた場所を掘ってみると、土の中からタイムカプセルと書かれた缶が出てきた。
中には昔のおもちゃ、そして、僕と彼女が10年後の互いに宛てた手紙。
僕宛ての彼女の手紙には 『おおきくなったらおにいちゃんのおよめさんにしてください』と書かれていて、それを見せると彼女はすごい勢いで僕の手からそれを ひったくってびりびりに破いてしまった。
「いやあぁ! もうっ あたしってばなんてこと書いてんのよぉ!」
「まあ、子供のしたことなんだし気にすんなよ」
「ううう……」
真っ赤になってしばらく目を泳がせていた彼女だったが、やがて「うん」と小さく頷き、僕を上目遣いに見ながらおずおずと訊いてきた。
「あ、あのっ、お兄ちゃんってその……。今、付きあってるヒトっているのかなっ?」
Fin.