38話 閑話ぽい 空気を読むパイロット。 悪
彼らの話はいたって簡単だった。
休憩中に斥候を出していたらしく、その斥候が情報を持って帰ってきた。
何でも、威力偵察の為に大隊(600人)がココの地より、10km後方にいるらしく30分隊(分隊=3~8人)が斥候に出ているとの事。
私が聞く限り、それは大分不味いんじゃないだろうか? 現在戦闘可能な人数は1小隊(30名前後)ほどしかいない。
もし、こんなボロボロの状態の部隊に、疲労が無く、装備が充実している敵兵に攻勢をかけられたら一溜まりも無い。
私はぞっとする中、彼らの話は思ったより簡単に終わった。
思わず、「えっ!?」と声に出していた。
そして、私はもう一度驚く事になる。
あの若い部隊指揮官が部隊の皆に現状を話し始める。
回りの兵士たちの表情は・・・・・あれ? 緊張感はあるが、不安感というか恐慌状態になっていると言う事がまるで無い。
それ所か、何か気のせいか、ギラギラした目で全員が戦う姿勢を見せる。
ワオ! 何でぇ? 私は心の中でそう思ってしまった。
というのも、尉官以上になるとき幹部教育というのを受ける。
その中に、古代中国で活躍した孫子の兵法書を教材(といっても簡略したものだが)として、こういうのがある。
【部下を戦場に連れて行くとき、部下には明確に何処に行くかを知らせず、敵のど真ん中に連れて行く。
すると、如何だろうか? 何処に行くか知らされていない兵士は突如現れた敵兵に殺されない為に命を書け、必死に生き残る為に全力で戦う】とある。
つまりだ、下手に教えれば、戦いたくない兵士は戦う前に逃げてしまうか、士気の著しく下がった兵士を仲間に戦わなければならない。
だが、この少年はそれを逸脱して、それを行なっている。行なっているがそれ以上にこんなボロボロなのに士気が以上に高い。
下がる以上に高まっている。一体この少年は何なのだろう。
そう思っている間に準備が始まったのだ。
まず始めに少年は私の元に着て、こう言った。
「先ほど言った通り、敵がこちらに向って来ています。
僕らは、ココで一部隊の敵の殲滅と大部隊の足止めをしようと思います。
その際策がありまして、三尉さんもその作戦に協力していただけますか?」
私はきょとんとして、一瞬見たが直ぐに気を取り直して彼に言った。
「・・・策があるって・・、それ所か部下にあんな事言って大丈夫なのか!?」
私のその言葉に、彼は複雑そうな表情を見せて、言い返す。
「前に・・・というかですね・・・・・今回で4回目なんです」
「・・・・4回目?」
「ええ、今回と同じパターンで敵兵遭遇をしたことが有りまして、奇襲成功率が高くて、被害が少ないんで皆ヤル気が違うんです。
それに、これから斥候を出し、ワザと追わせて、1小隊~最大で3小隊くらいまで倒せる上に、減ってきた装具や水を手に入れられるので、存外皆やるきなんですよ」
彼の話を最後まで聞くと、どうも、確実に殲滅できる裏づけがあることに、私は驚き、それをこのボロボロ部隊がやってきたのだという言葉が節々にある自信と敵の食糧・弾薬調達にヤル気を見せる、兵士達に何だか心強い気持ちになって着てしまっている。
しかし、私は急激に不安になってしまう。
危険とは油断した時ほどやって来るものだ。彼(少年)と兵士たちにいうべきか迷ってしまう。
言う事によって士気に影響するし、言葉には言霊という力が発生するともいう本当にそうなったら、正直嫌だし、だが、言わなかった事により、部隊が指揮官不在や思ってもなかったことにより混乱し壊滅してしまう危機もある。
私はどうしたら・・・・。そう思っていると、少年が、声を出す。
「皆、聞けっ!」
私は顔を上げる。
回りの兵士たちも少年を見た。
「今回で4度目の同様の作戦だ!」
少年の言葉に兵士たちが頷く。
「だが、3度も同じ策をとっている・・・・・。」
ゴクリと唾を飲む音が聞こえる。
「相手に気付かれ、裏を掛かれるかも知れない。
だがっ! 決して恐れるなっ! 生きる為に動けっ! 新手に出た敵は殺せっ! 故郷に残した家族に会うために恐れず、 戦えっ !!」
兵士たちは彼のネガティブな発言に不安を露わにする。しかし、その不安は直ぐに腐食される事になる。
少年は堂々と100人の年上の兵士たちを生きて家族に会うために戦えと鼓舞する。
その瞳が、我々の心に火をつけることを知っているかのように。
我々れ兵士たちは、戦場のど真ん中というのも忘れ、声を出して返事をしていた。
「「「おう!」」」
生き残るぞ! そう聞こえる声だった。
そして、私は思った。私の考えていた事は、
あっ、杞憂みたいだった。
それから30分ほどして、何かが弾ける音が空に木霊した。
少年は、近くに居た部下数名に作戦の指示をしている。
それを頷き部下たちはそれぞれに動きだしていくのだった。




