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交通事故
夜、友人と車に乗っていた。
田畑に挟まれた一本道。
月明かりもなく、ヘッドライトだけが未舗装の荒い道を照らす。
運転手の友人はお調子者で、車のスピードを上げた。
よそ見しながらふざける友人、飛ぶように走る車。
ブレーキはかからなかったのかと思う。
丁字路を飛び出し、水のない田に突っ込む。
それでも止まらない車。
田を抜け、向こう側の民家へ。
一瞬目に映る電柱の黄色いカバーと灰色のブロック塀。
衝突。
死にはしなかった。車から出る。
パイプ椅子を持って出る。しばらく外で待つだろうと思ったから。
タクシーが止まった。事故を目撃したのだろうか。
「そこの電柱に掛かってましたよ。あなたの鍵ですよね?」
タクシーの運転手が繋がった2つの鍵を差し出してきたが、全く見覚えはなかった。
青白い街灯。
車から離れパイプ椅子に腰かける。
傍らに亀が夜なのに甲羅干しをしていて、近寄っても逃げはしなかった。