8/10
混線
街の至るところに取り付けられたTVアンテナ。
屋上、屋根、目に見える範囲に無数に。
錆び付き、汚れたアンテナたちは、今もどこからか、電波を受信している。
放送された番組を拾っている。
それを観賞する者がいようといまいと。
アンテナからアンテナへ、電波は伝わっていく。
そしてアンテナ同士が干渉しあい、混線し、奇怪な映像を作り出す。
朝のニュース番組。
「昨日○時から行方不明となっていた○○ ○ちゃん(5)の遺体が○○県○○市の○○池で発見されました。」
池周辺の操作の様子と、故人の生前の写真が映し出される。
「司法解剖の結果、死因は水を飲み込んだことによる水死。死後1週間ほど経過しているようです。」
司法解剖の様子が映し出される。
「それではさっそくいただいてみましょう。」
一口大に切り取られた紫色の肉塊にリポーターがフォークを突き刺す。
「口の中でとろけて、とてもおいしいです。」
画面に映る人々には、この行動が異常であると感じていない様子で、皆笑顔である。
この放送はアンテナの混線によるものだろうか。