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異界融合団地
この団地は変わってしまった。
生暖かい風と、赤い砂嵐が団地を包むところを、屋上から見た。
遠く山の影が目を開く。見つからないうちに逃げる。
どこかの世界と繋がってしまった団地。直線だった内廊下は曲がりくねりどこまでも続く。
蛍光灯は赤く変色して、非常口の緑色の光と混ざる。
たどり着いた広間に、人が集まっている。
生気のない目で、治療と称したテレビ画面を眺めている。
「人と蟹とバイクの融合」のビデオ。
顔に緑色のモザイクがかかった白衣の老人が演説を始める。
自分の部屋に戻らなければいけない気がする。
階段をいつまでも登る。