学長はもふもふ(と書いて楓と読む)に興味を示した。
「セントラーザ学長、見たことのない魔物を見つけたのですが、見ていただけますか?」
翔琉がそう言うと、学長は意外にもくるりと振り返った。
そして翔琉が抱き抱えている楓を見るや否や、早足で近づいてきた。
学長が楓をじろじろと見回し始めると、不快に思ったのか、楓は翔琉の腕の中でもぞもぞと動いた。
一通り眺め終わったようで満足げに楓から目を離した学長は、翔琉と明日香にこう問いかけてきた。
「この魔物を何処で見付けたの?なにかおかしな点はなかった?抱き抱えているということは、比較的おとなしいし、体に毒はなさそうね。魔物は重い?手触りは?そもそも、どうやって歩いていた?」
マシンガンのごとく尋ねる学長の目は、キラキラと輝いていた。
その目から読み取れるのは、純粋な好奇心。
普段は気難しく近寄りがたい雰囲気のある学長だったが、新しいことに遭遇したとなれば、話は別である。
学長でありながらかつては冒険者でもあった彼女が、新種の生き物かもしれない楓に興味を示すのは、極めて自然なことだった。
翔琉と明日香はそんな学長の姿を見て、ほんの少しではあるがくすりと笑った。
本来なら失礼きわまりないことなのだが、今回ばかりは我慢できなかった。
「見付けたのは、この学園近くのヴァルバ草原です。明日香が最初に見付けました。こいつは魔物にしては軽い方だと思われます。手触りは綿とシルクを合わせたような感じで、すごく柔らかいですね。あと、おかしなことは・・・」
「あ、あの。私が始めに見つけたときに、言葉を話していたような気がするんです。寝惚けてなければ、なんですけど……」
明日香がそう言うと学長は彼女の言葉に興味を示したようで、楓に話しかけ始めた。
「あなたは話ができるのかしら?もし私の言葉が理解できていて、話ができるのであれば話して頂戴。聞きたいことが山ほどあるし、教えたいこともあるのよ」
「ふみゅ~?」
興味津々と言うように話しかけてきた学長に、楓は不思議な鳴き声を発する。
ほら、やっぱ喋らねえじゃん。という目を明日香に向ける翔琉。
う~、喋ってた筈なんだけど。。と言いたげに明日香もまた目で訴える。
二人が目で会話しあっている間も、学長は辛抱強く楓が話すのを待っている。
一分ほど過ぎた後、声を発したのは……
「・・・ああ、会話は可能だ。だが、同性とはいえじろじろと見られるのには抵抗があるのだが」
「喋った!?」「ほら!やっぱり話した!!」
「!!話ができるのね?すごい発見だわ」
無言の圧力に耐えられなかった楓の方だった。
このあと、楓は学長達に色々と聞かれまくり、調べ回されて疲れはてるのだが、それはまた別の話。。