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序章という名の一人ごち。

・・・ども。天野楓あまのかえで)だ。

突然だが、私は死んだ。

それはもう、美しいほどきれいに死んだ。

・・・まあ、その話はそのうちにしよう。

とにかく、私は死んだ。

普通、人間というものは死ねば問答無用で存在が抹消される。

記憶に残り続けるとも言うが、そんなものはテレビに出ている俳優だとか、有名人程度。

実際には、記憶に残るなんてこともあり得ない。

人間だけではなく、この世に生きるものは一部を除けば、皆同様に死ねばその存在は抹消され、記憶にも何にも残りはしないのだ。

だからこそ人というものは、必死に意味のない努力をし、滑稽にも無駄な人生を送っていくのだ。

少しでも有名になり、覚えていてもらいたい。

そんな、浅はかな願いを叶えるために。

ああ、それはなんとおぞましいことか。

なんとも不格好で、無様で、見るに耐えない所業なのだろうか。

馬鹿らしく、愚かな人間達が無様な姿を曝すのを、私は幼少の頃より幾度となく見てきた。

だからこそ、私は記憶から抹消される生き方を選んだ。

特になにか特別なことをするというわけではなく、むしろ普通のことをし続けたのみ。

そんな生活を十六年間続けた結果が、この状況というわけである。

かくして、私は自分が望んだとおり、浅はかな行動をとるわけでもなくきれいさっぱりこの世から抹消されたというわけ。

・・・なのに、だ。

私は今、生前には考えたこともなかった、ある現象に頭を抱えている状況に陥っている。

否、少し語弊がある。

一度は考えてみたことはあった。

小学校低学年の頃。

何の気なしに立ち寄った本屋で見つけた、一冊の本。

内容は、この世で命を絶った青年が異世界に転生し、チートとなって悪を倒すといった、ありきたりなもの。

このとき、普通の子どもであれば、自分もチートになりたいと思うだろう。

しかし、私はこう思った。

『もし転生するとすれば、チートにだけはなりたくない』

・・・そして、その結果として。

私は晴れて異世界転生という不可思議現象に遭遇したのであった。

今私があるのは、現世と異世界の狭間の空間だ。

ここは、異世界において神と呼ばれる生命体と、私のような現世から引き出されてきた転生者が出会う場所である。

そこで出会った神と転生者は、質問と返答を繰り返し、その後に神から何者になりたいのかを聞かれる。

その時の答え次第で、転生先が決まるという寸法だ。

まあ、現世における、『お決まり』というものだろう。

・・・今私が行っている行為はただひとつ。

それは、この世界における神が現れるのを、ただひたすらに待つというものだ。

偉そうに語ったわけではあるが、私は今だ神にはあっていない。

つまり、ここまでの現世云々と言う話は、全て私の憶測ということとなる。

だが、この憶測も間違ってはいない筈だ。

全てがあっていないにせよ、どこか一部くらいなら適合する言葉があってもおかしくはないかも知れない。

私の人生とは、そういうものだった。

さて、この世界の神と呼ばれる生物が現れるまで、私は今しばらくここで浮いているとしよう。

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