第六話〔死人に口無し...?〕
降り下ろされる斧を目の前に、僕の頭の中ではたくさんの思い出が巡りめぐった。
ああ、これが走馬灯というものらしい。
幼稚園。あんま覚えてないけど、初恋は先生だった気がする。
小学校。仲良し遠足。鬼ごっこで転けて泣いたんだっけ...。
あっという間に6年経って、卒業式で涙堪えるのに必死だったなぁ。
中学校に上がって、部活入って、先輩厳しかったけど、でも楽しくて。
修学旅行は遊園地で、迷子になって。
合流できたときのあの喜びはハンパなかったな。
夜遅くまで騒いで怒られたっけ。
またすぐに卒業式。今回は堪えれずに涙流したんだ。
そして、数日後。僕に癌が見つかって。
絶望に押し潰されそうなとき、あいつに出会った。
枢木美那。
あいつのお陰で、俺は生きる希望ができたんだ。
あーあ、ここで負けちまうのか。
あっけなかったなぁ。
まだ斧は僕へ届かない。全てがとてもスローモーションに見えた。
ふと、観客席を見ると。
偶然美那の姿を見つけることができた。
こんなに離れているのに、なぜだかわからないが、僕には確かに見えた。
彼女が涙を流して叫んでいる姿を。
―――嫌だ。
こんなところで負けるなんて。
生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい
―――僕はまだ、生きたい!!!!
その瞬間、僕の目がとてつもなく熱くなった。
焼けるような熱さが目の中に凝縮していくようだった。
そしてそれは、すぐに外へ溢れ出た。
一気に僕の体から周りへと何かが飛び出す。
それは衝撃波のようになって男へと当たった。
「あ″...」
スローモーションの世界が、またいつもと同じ世界へと戻った。
斧を降り下ろしていた男の行動が止まり、男の手から斧が滑り落ちる。
間一髪のところで僕は顔を動かし、落ちてくる斧を避ける。
あと数ミリ近ければ、僕の顔はもう真っ二つになっているところだった。
斧をすれすれで避けることに成功した僕は、安堵の息を漏らす。
僕の目の前で硬直していた男は、体から力が抜けたように、崩れ落ちた。
呼吸はしている、しかし、体が何もいうことを聞かない。そんな様な顔をしていた。
僕は腹を押さえながら立ち上がる。
あれ?おかしいぞ...。
僕の体もいうことを聞かない。
体が勝手に動くとはまさにこのことなのだろう。
僕の意思とは関係なく勝手に動く僕の体は、斧を両手で持ちあげる。
そして僕の体は、男の首に向かって斧を降り下ろした。
肉を切る感触。骨を断つ感触。その全てが僕の体へと入ってくる。
男の首から、大量の寿命が流れ出した。
《WINNER 神埼迅》
そのアナウンスが会場に流れる。
あれほど煩かった歓声は今、ぴったりと止んでいる。
すると、どこからか拍手が「パチパチパチ」と聞こえてきた。
その拍手が連鎖を呼び、会場が瞬く間に拍手に包まれる。
僕は勝ったのか。
そう思った瞬間、僕の手から斧が落ちる。
僕は目の前が真っ暗になった。
気がつくと、そこは休憩室か何かのベッドの上だった。
頭がジンジンとする。
「おはよう、迅」
「ああ、美那。おはよう。僕は、勝ったんだよね?」
「ええ、あなたは勝った」
そう言う彼女の顔は、なぜか曇っていた。
僕は体を起こす。
「あなたは初戦で、目覚めてしまった。こんなに早くに目覚めるなんて...。私のミスだわ。あなたを危険に晒さなければいけない」
美那の目の周りがほんのり赤い。さっき泣いていたからだろうか。
それにしても、目覚めた?一体何の話だ。
「とりあえず、ここではだめだわ。もう動けるかしら?」
大丈夫だよと、僕は立ち上がる。
やはり頭痛が酷い。延々と何かで殴られているようだ。
僕たちはそこから、誰もいない広場のようなところに出た。
「もう言うべきことを全て話すわね。回り道をしても、どうせ同じことを言うのだから」
「うん、構わないよ」
「あなたは〝言技〟を発動してしまったの。言技というのは、誰でも使えるわけではないわ。本当に死にたくない、生きることに全ての思考が向くことで、それに同調して脳のリミッターが外れる」
聞いたことがある、人間の脳はそのほとんどが眠っていると。
言技はその眠った部分が目覚めてしまうことだという。
「あなたの言技は死人口無。死人に口無しよ」
「死人に口無し...?」
ここで起承転結の起が終わりました。
次からいよいよ承の始まりです!
まだまだ下手くそな表現ですが
楽しんでもらえるようにがんばります!