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ナンバルゲニア・シャムラードの日常 14

「来たよ……やっぱ」 

 そう言うと要は二本目のマガジンの給弾を止めて立ち上がると銃口をボロボロのターゲットへと向ける。シャムがさっきまで要が見ていた視線のあたりに目を向けるとアイシャがガンケースを抱えて近づいてきていた。

「やってるわね」 

 にっこりとシャムに微笑むと彼女の後ろを回り要の隣のレンジにアイシャはケースを置いた。

「なんでそこにいる?」 

「要ちゃんと私の仲じゃないの」 

 そう言うと紺色の長い髪を掻きあげてそのまま手を置いたケースに伸ばす。箱の中にはごつごつしたスライドが特徴的なアイシャの愛銃H&KUSPピストルが横たわっている。

「まだ月の半ばだろ?必須射撃訓練の弾数の帳尻を合わせるにはまだ早いんじゃないのか?」 

 要はぶっきらぼうにそう言って引き金を絞る。薬室に弾を入れていない以上、引き金を引いても弾は出ない。

「何慌ててるの?……ははーん、私の噂話でもしてたわね」 

 アイシャはいかにも言い当てて満足だというような笑みを浮かべると静かにマガジンを銃に叩き込みスライドを引いて手元のスイッチを操作する。

 目の前に新品のターゲットが立ち上がる。そしてその動きが止まった瞬間、アイシャの銃が火を噴いた。正確に頭部に二発の弾丸が命中したのがわかる。続いて心臓、そして再び頭部に一発。アイシャはそこまで撃ったところで満足げに銃を降ろした。

「別に何を話そうと私は良いけど。シャムちゃんには変なこと吹き込まないでよね」 

「なんだよ、アタシがいつもろくでもないことをシャムに言っているみてえじゃねえか」

「あら?違うの?」 

「それはテメエだろ?いつも下らない漫画の話ばっかりしや……」 

 突然要の言葉が途切れたのでシャムは不思議そうに要の顔を覗き込んだ。何か思いついた途端に悲しくなった。そんなことを考えているような泳ぎがちな瞳がそこには浮かんでいた。

「仕事の話題だけじゃ飽きられるわよー」 

 そう言うとアイシャは再び銃口をターゲットへと向けた。

「うるせえ」

 搾り出すような要の声の後に銃声が連続して続く。的確に頭部に着弾する弾丸。そのまま全弾撃ち切ってスライドストップがかかりアイシャは銃を置いた。

「そう言えばシャムちゃん」 

「なに?」 

 突然話題を向けられてシャムは素っ頓狂に答えた。紺色の髪の下の調った目元からいたずらっ子のような目がじっとシャムを見つめている。

「要を呼びに来たんじゃないの?」 

「あ!」 

 アイシャの声に驚いてシャムは時計を見た。あと数分で12時。

「そうだ、要ちゃん。お昼だよ」 

「あのなあ、餓鬼か?アタシは」 

 そう言うと要はそのままテーブルの上に並んだマガジンを乱雑にアルミケースに放り込み始めた。アイシャは満足げに銃から空のマガジンを抜くと静かにガンケースにそれを収める。

「そう言えばカウラも出てきていたわよ……」 

 アイシャの何気ない一言が一瞬だけサイボーグに寂しげな笑みを浮かべさせたが、要はそのまま銃をガンケースにしまうと何事も無かったように立ち上がった。

「じゃあ行くから」 

 そう言ってそのまま要は黙って射場から立ち去ろうとする。そんな要に思わずアイシャは肩をすくめていた。

「素直じゃないのね」 

 シャムはそんなアイシャの言葉に冷やりとした。売り言葉に鉄拳制裁。要ならそのまま荷物を捨てて殴りかかる。そう思って間に飛び出そうとしたシャムだが、要はまるで無視してそのまま射場の脇の荷物置き場にあるゴミ箱を軽く殴っただけでそのままシャム達の視界から消えていた。

「本当に大人気ないんだから」 

 アイシャはそう言うとガンケースをレンジのテーブルに置いたまま要が殴った分厚い鉄板で出来たゴミ箱のところまで走り寄るとその表面を撫でた。シャムのところから見ても明らかにへこんでいるのが見て取れた。

「でも進歩したんじゃないかな……」 

「まあうちでは問題児扱いされない程度にはなったわね。他の部隊じゃどうか知らないけど」 

 そう言うとアイシャはゴミ箱の隣で大きく伸びをした。




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