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誤作動の異世界召喚 ~エルフの司書にセミの物真似~

作者: 柳原康弘
掲載日:2026/08/07

「読みかけの本は現れましたか?」

「残念だが、まだ入っていない。

知りたいんだがな、召喚されるまでキミが読んでいた本」


そうですか、と言い、僕は息を吐く。

『司書さん』も残念そうにしながら、息を吐く。


『エルフ』の少女が管理している図書館。

この図書館には色々な世界から本が現れる。それは、この子の力らしい。ポケ×ンで言うと『特性』つまり、エルフは皆生まれつき、その力を持っているということ。


エルフの司書は1つの国につき、1人。


『誤作動』で召喚された、僕。

もう少しで読み終わる所だったのに。

別に元の世界に未練がある訳じゃないから、戻りたいとは思わない。


だけど、あのライトノベルだけは、読み終わりたい。


「悪いね、暑いなか来てもらったのに」

「いいですよ。

読書以外にすることはありませんし。

この世界は平和だから」


13歳で初めて体験する異世界の夏。

セミの声はなく、ひたすら暑い。


「ところで、気になることがあるんだけど」

「何ですか?」

そわそわとしながら、エルフの司書、ミイナさんは聞いてくる。


「暑いといるらしいな」

何がだろう?

「ミーンミーンって鳴いて」

あ、分かった。

「セミについて教えてくれないか?」

だろうね。


「この世界にはいないんだよ。キミがいた世界の本には、セミが合唱しているとかあるんだけど、私には分からない、全く分からないんだ。教えてくれないか?」

興奮しながら聞いてくる。


多分、エルフの特性だろう。

長寿で魔法にも長けているエルフは何でも知りたがり、知れないと死ぬ。


「物真似をしてくれないか?」

「えぇ…」

「その世界から来たんだろう? この世界でセミを体験したものはキミしかいない、頼む!」

なんか格好いいこと言われた気がしたけどセミの話だから恐らく格好よくはない。


大きな声を出す司書。

迷惑になっていないかと周りを確認する。

なんか周りも期待してた。


読書家というやつは…。

てか、日本語分かるんだね、読めるだけじゃなくて。日本語の存在はあったんだろうけど、僕より前の異世界人が理由で。

バイリンガル…。


「1回、1回だけでいいから、セミの物真似をしてくれ」

必死なミイナさん。


した方がいいんだろうな。

だけど、物真似か。

物真似なのか。

よく「ぼくドラえもんです(大山のぶ代版)」とか「ピッカチュウ!(電気ネズミ)」とか、前の世界に、する人いたけど。


ぶっちゃけ、物真似って勇気がものすごくいるよね?

する人を目にするたびに「勇気あるなー」て思ってたけど。


まさか、異世界でセミの物真似をすることになるとは。

人生って、分かんないなあ。


「つくつくぼうしか、ミーンミーンか。他にもいたか? ひぐらしというのもいるらしいな。全部してもらうか?」

「ミーンミーンをします!」

要約:全部してたまるか!


「ミーンミーンミン」


少し、静寂。

だけど、すぐに拍手が起こる。「セミだ! セミがここにいる!」と立ち上がって興奮する人もいる。隣の人と「セミの奇跡だ!」と泣きながら抱き合う人もいる。


終わらない拍手。


何なん、コレ?




長い拍手も終わり、皆は再び読書をする。


「セミが鳴いたから今日はセミ記念日だな」

ウキウキとしながらエルフさん。

「違います、やめて下さい」

首を横に振って否定する。

顔が赤いのは当分戻らないだらう。


「で、セミなんだが」

まだあるらしい。

「実際の大きさは? 図鑑の通りなのか? あと、触ったときの感じも教えてほしい」

「それは僕には分かりません」

「いたんだよな? 合唱してたんだよな? 夏に」


異世界で、セミが分からないことを、エルフに責められる。

どうなってんの? 僕の人生。



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