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採掘

 昔、この地域からは石炭が採れた。地域に莫大な富をもたらした石炭。だが当時を生きた人にとってはそれだけの存在ではなかった。いくら町を潤すと言ってもそれが地中にあれば無いと同義。つまり石炭の採掘を行う人間が多く必要だった。


 こういう人間を鉱夫と呼ぶんだがね、その仕事内容は危険極まりないものだった。粉塵よる肺病、一酸化炭素中毒に熱中症、崩落による生き埋め、醜悪な労働条件。ざっと考えられるだけで彼等の仕事がどういうものか、察するに余りある。僕ならどれだけ金を積まれてもやらないな。

 中でも生き埋めは特に酷かった。即死ならまだいい方。殆どは酸素が少なくなる中、ゆっくりと死が近づくのを待つしかない。その苦しみと恐怖はどれほどのものだっただろうか。僕には想像もできないよ。


 そうして彼等の命の上に成り立った石炭の産業は町どころか国をも豊かにしていった。今でこそ閉山され、当時の記録を残す教育施設が建っているが、僕やキミが生きている現代にはこのような犠牲者がいた事は忘れてはならないよ。


 うんうん、授業みたいでつまらないかね?話が長くてすまないね、僕は話が長くていけない。でもここまでは聞いてもらわないと、これからの説明が難しくなるのでね。諦めてくれ給え。見たところキミはそこそこ名のある大学の所属なのだろう?ちょっとした立ち話みたいなものだ。これくらいできて当然だと思うがね。


 まぁ、結論が気になるのは若さ故としておこうか。なによりキミは今、非常に困難な状況であるのだからより仕方のない事だね。はは、そう怖い顔をするな。説明しないといけないものもできなくなってしまう。

 鉱夫の話は聞いていたね?つまり、彼等は様々な負の念を持っていたのだよ。特に、生き埋めになったような者はね。そこでこれだ。なんと生き埋めで死んだ人間の骨粉を使った薬だ。中々無い、素晴らしいものだよ。


 あぁ、使い方ね。これはお香のように煙に効果があるものだから、使う時は火を灯すといい。そうだな……キミが嫌っている相手とか、不快に思っている相手に渡せばいいのではないかな?最近の流行りとでも言って。

 そう、僕が渡す薬は全て客が服用するものじゃない。客が誰かに使うものだ。なぁに悪い事じゃないさ、ドラッグストアに売ってる薬を友人に分ける事、あるだろう?それと一緒だよ。キミは僕からコレを買って、別の人に渡しただけ。それだけで、きっとキミが求める結果になると思うよ。


 はは……そう怖がらなくていい。よくよく考えてもごらんよ。僕の話が全て嘘っぱちな可能性だってあるだろう?キミはちょっとした与太話に付き合って、なんとなく買い物をした。でも必要なかったからプレゼントと称して知り合いに押し付けた……。

 そう言えば気分も軽くなるんじゃないかい?無駄話を聞いてくれたお礼に少し安くしてあげよう。ん?どんな効果があるのかって?使わないキミは知る必要のないことだよ。


 ほら、こちらがお求めの薬。いいように使ってくれ給え。

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